ミンスキーはフレーム理論は動的でないとして『心の社会』(産業図書)ではエージェント理論へと修正しました。そこでは、ミンスキーは、心とは「一つひとつは心を持たない小さなエージェントたちが集まってできた社会」と提示しています。その「心の社会」は、「エージェント」と呼ぶ思考の最小機能単位による複雑なインタラクションがエージェントの「社会」を構成し、それが心を生み出すという内容となっています。ミンスキーによれば、数百数千の異なるコンピュータから脳が構成されており、要素一つ一つは簡単なプロセスを実行し、それらがグループを作って活性化したり、他を抑制する、それが脳の働きの基本だという。「エージェント」は「思考素(esource/resources)」と呼ばれ、また問題に対処する為の思考の経路を意味する「思考路(Way(s) of think)」という言葉がキーワードとして登場するが、問題に応じてさまざまな「思考路(Way(s) of think」をセレクター(「選択家」)で切り替えることで心は機能しているのだと述べています。その基本は「if→do」ルールと言えますが、思考路による処理の階層を上がるとより複雑になって、さまざまな状況に応じて、さまざまな思考素をセレクターが選択するとされています。そして、知識には、「何が事実として成立しているかということの知識」の他に、「どの様に行うかということの知識」としてのある種の技術・能力を持つということに依存した知識も必要とされます。なを、「心の社会」に於けるフレームは、他の構造と接続出来るようなターミナルの集まりに基づく表現とされ、普通各ターミナルは暗黙の仮定に結びついており、この暗黙の仮定はより特定化された情報に簡単に置き換えられるとされています。同じターミナルを共有するその集まりである「フレームアレイ」のどこかのターミナルに接続された情報は、そのフレームアレイに含まれたフレーム全部から、自動的に利用できるようになり、これによって物理的な見方を変えるだけでなく、心の別の領域からの見方も変えることが容易になるとされています。
ミンスキーの「K-ライン」は、エージェントたちの集まりが活性化され、さらにそれによって以前の心の部分状態が再活性化されるプロセスに基づいた記憶をK-ラインと呼び、そして記憶についての「心の社会」の層として、元々の記憶S-エージェントの、その記憶について考えるにはそれぞれのK-ラインを直接にそれらのS-エージェントに結びつけなければならないとされ、そして新しいK-ラインを古いK-ラインに結びつけるもっと効率の良い方法が使えるようになるとされる。また、K-社会が対応するS-社会に近い《層》の形に成長するならば、(K-社会とS-社会とは、S-社会の方が始めに来るというだけで何ら本質的な違いはなく、その果てしない連鎖の先に新しく現れてくる社会は鎖の最後にあり、直前の社会を利用するようになるが、新しい層はそれぞれK-ラインの集まりとして作られ始め、それは一つ前の層によって獲得された技能なら何でも利用しようとすることから始まり、新しい層はどれも古い層がすでに出来ることを使うための新しい方法を学習することとしての)両者の間に簡単に新しい結合を作り続けることが出来るとされます。
付け加えるならば、どの様な問題でも、それらを処理したりして学習するには、それら問題を解くために様々な種類の記憶を使わなくてはならないということと、将来類似した問題が起こったときに以前のの解決法を使うために、それら問題をどうやって解決したかを思い出す必要があります。また、何かを理解する場合、何らかの類推によってそれら新しい問題をすでにもっともよく知っていることに似せて表現して、当てはめなければなりません。