また元日の遭難話だ。
遭難について取材した読売新聞の新聞記者が別れ際に言った。
「最後に一つお聞きしたいんですが、あなたはどうして命の危険があるのに山に登るんですか?」
山に登らない人が発するいつもの疑問だ。
山に登る人にとっては難問だ。
その時は適当に「冒険心と好奇心と征服感です。」と言っておいたが、本当はどれもいまひとつしっくり来る回答ではない。
たとえば、こんな質問をされたらどうだろう。
「あなたはどうして毎日眠るのですか?徹夜して本でも読んでいればもっと利口になるでしょう?」
「そんなこと言ったって、眠くなるもん!」
エベレストで死んだイギリスの登山家マロリーは、こんなふうに答えた。
"Because it is there."
「そこに山があるからさ」というのが定訳だ。
だけど、この言葉は直訳したほうがよい。
「だって、それがあるんだもん!」
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