「通り魔」とは、妖怪の一種である。
夏の夜、縁側で涼んでいると、どこからともなく甲高い声が聞こえる。
「はーい、ちょっと通りますよ。ごめんなさいね。どいて下さいねー。」
庭先の暗闇の中から、蝋燭の光のような物が連なって近づいてくる。
目の前をスーッと通り過ぎたかと思うと、光はどこかへ消えている。
岐阜県飛騨地方では「お通りさま」と呼ばれていて、家に妊娠中の女性がいたら安産で子を産むと言われている。
九州地方では「通り鬼」と呼ばれている。
その土地で死んだ地縛霊の仕業で、死者の顔をしているという。
いやあ、子どもの頃は本当に「通り魔」というのはこういう物だと思っていた。
のんきな少年だったんだなあ。
ログインしてコメントを確認・投稿する