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2026年11月03日13:17

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災害は、停電した瞬間で終わらない

西 きほこ

【災害は、停電した瞬間で終わらない】
紙の通帳を手元に残している、という話を書いたら、
「電気が止まった銀行でお金を下ろすのか?」
「銀行員がろうそくをつけて、手書きで記帳するのか?」
「馬鹿だ。読んで損した」
というコメントが来た。
なるほど。
停電した銀行で、ろうそくの明かりを頼りに記帳する光景を想像されたらしい。

けれど、私が考えていたのは、その場でお金を下ろすことではない。
混乱が落ち着いたあと、自分の口座や預金について確認するときの手がかりとして、紙の記録も手元に残しておきたい、という話だ。
もちろん、通帳は最後に記帳した時点の記録である。
その後の取引は載っていないし、一冊あれば何でも解決するわけでもない。
それでも、自分がどの銀行の、どの口座を使っているのか。
確認できるものを、スマホの外にも持っておく。
私は、そのために残している。

阪神・淡路大震災を経験した私にとって、災害への備えは、揺れている間や停電している間をしのぐことだけではない。
避難したあとも、生活は続く。
食べて、眠って、連絡を取り、仕事を再開し、暮らしを立て直していかなければならない。
だから備えを考えるときは、時間を少し先へ進めてみる。
「スマホの充電が切れたら?」
「家族の電話番号を、何も見ずに言える?」
「家に戻れなくなったら、必要な情報はどこで確認できる?」
「落ち着いて手続きを始めるとき、何が手元にあれば助かる?」
普段なら指一本で済むことが、急にできなくなる。
そのとき、自分はどうするのか。
そこまで考えて、今できることをしておく。

紙にも、紛失したり、水にぬれたりする弱点はある。
デジタルにも便利さと弱点がある。
大切な情報をどこに、どんな形で残すかを考えておきたい。
人によって、必要な備えは違う。
住まいも、家族構成も、経験してきたことも違うのだから。
誰かの備えが不思議に見えたら、
「それは、どんな場面を想定しているのだろう?」と一度考えてみる。
そこに、自分がまだ気づいていない困りごとがあるかもしれない。

災害は、起きた瞬間で終わらない。
そのあとも続く自分の生活を、少し先まで想像しておく。
それも、大切な備えなのだ。
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