「三里塚・辺田部落」1973・小川プロダクション・白黒16�弌�DCP)。監解:小川紳介。撮:田村正毅。録:久保田幸雄。撮編:福田克彦、湯本希生、岩崎清次、白石洋子、中野千尋。。小川監督による【三里塚・芝山連合(成田)空港反対同盟】を追ったドキュメンタリー『三里塚シリーズ7部作』の6作目。
5作目までは成田空港建設に反対する抗議闘争の記録だったのに対し、本作では『彼らは何を守ろうとしているのか?』という視点から地域の歴史と文化、産業(農業)と生活ついて紐解きます。なので日本国の内政を混乱させ妨害する事を目的として、その活動口実に反対運動を利用し寄生する『正しい人達』は登場しません。
冒頭で爺さんが語る村落史がイキナリ凄い。背景を指しながら「あそこが元々の街道で・・」とか書籍では表せない記録映画ならではの展開が圧巻。村は元々秀吉と戦い負けて落ちて来た『龍崎』氏七軒から始まり、現在は四軒が残る(劇中にも撮影時の龍崎さんが登場)。家屋の構造が龍崎家だけ右構え
(日本家屋は通常入口に向かって左に住居、右に土間や厩なのに対して龍崎家は正反対の造り)など話しの内容が日本史のレベルで強烈過ぎ。国家と国民は郷土史や文化を丸ごと『そんなものは存在し無かった』と抹殺消去しようとしていたのだ。結構長い語りが終わってようやくタイトルへ。既にお腹一杯ですよ。
また老婆の語る強烈人生も凄過ぎ。映画化すれば「犬神家の一族(1976)」「八つ墓村(1977)」に充分拮抗出来る作品に成りえる話です。祀り用に大根で男根を作ってるオバチャンは他でも大活躍という解説が監督から為され一見穏やかな村の毎日ですが、ある朝突如機動隊が家を敷地ごと占拠している光景が。
現代人の目から見ると恐怖というよりシュールで笑いが出てしまう程の余りの非日常的光景で驚きます。そこに住んでいると理由だけで突如として犯罪者に認定され日本中から反社会的極悪人と糾弾されるという不条理。第二次代執行で機動隊員に殉職者が出た事を逆手に取った警察側の戦術ですが、
私の私見では住民の犯行ではなく先に挙げた騒動の口実を求め暴力に訴える『正しい人達』の仕業だと推定しています。その一方でクールで情け容赦無い私服刑事達に対し、機動隊員の中に『自分もこんな仕事はしたくない、でも任務だから仕方が無い』といった表情を浮かべている隊員が観察出来るのも映像ならでは。
青年行動隊員は逮捕連行されては釈放を繰り返され肉体的精神的に疲弊し、特に農業繁忙期が狙われて地域の労働力を根こそぎ奪い生活基盤に打撃を与える戦術をとっている(経済的に困窮させ追い詰め、国から保証金を受け取り土地も譲渡、書類上は合法的に追い出すのが目的)のが分かります。写真中心が辺田部落(跡)。
青年行動隊の中心人物が獄中の隣がヤクザで「実家が漁業権保障で大金持ちだから高級外車を乗り回すヤクザを続けられる、だけどお前は頑張れ」と励まされた話がまた凄過ぎる。真実は小説より奇なりなエピソードが次々と出て長丁場のドキュメンタリーですが極端なメリハリで飽きません。風景だけは長閑な農村。
こうした作品内容から自分の体験で想い浮かべるのは2007年の『溝の口西口商店街放火事件(川崎市)』。戦後闇市に始まるトタン商店街だったのですが暴力団員が放火して大半を焼失。被害者の店舗に対し市は暗渠の存在を口実に『不法占拠』だと再建許可を出さず。住所もあり税金も納めてたのに、被害者を犯罪者扱いですよ。
それだけでなく当時近隣に林立し始めたマンションで急増した新住民達も『汚らしいものが無くなって嬉しい』と市の判断を支持。その後空地のままえではなく新参不動産屋のビルが建ち(不法占拠認定すれば市に地権があり土地を売却という天才的仕組み)チェーン店が並んでます。つまり行政と反社会団体と企業が
グルに成っての犯行だと私は見立ててます。焼け残った田園都市線側も大規模地域再開発で消滅。南武線沿いのみが僅かに残り映画のロケに使われるなど現在では観光的に昭和レトロ人気スポット化してるのが皮肉な話です。もう一つは福島中通りを旅した時に見た田園風景の真ん中にある場違い的にオシャレなカフェBAR。
駐車場には『ベントレー』や『メルセデス・マイバッハS』など超々高級車が並び、お客の若い夫婦達はブランドで身を固めベビーカーも百万円くらいの品。田んぼの中に孤立してるのでBAR時間帯には自家用車で来店、帰りは代行だそうです。来客達から全く生活感が感じられず、どうして億万長者に成ったかはご想像の通り。
トークはまずPFFディレクターの荒木啓子さんから「NFAJ以外にもアーカイブ活動をしている組織はいくつもあります、今回はそれらの所蔵作品特集も組んでみました」と。行間から安易にクラウドファンデングに走ったNFAJへの批判がうかがえます。
目先の事しか目に入らないのはNFAJばかりでなく「【日本で唯一】のアーカイブ組織を守ろう!」と拡散希望投稿する世間の自称『映画の専門家』達への批判も感じます。
さて、「三里塚・辺田部落」は『アテネ・フランセ文化センター』からの出展。トークゲストは制作室室長の堀三郎氏です。1977年の『ぴあ展』のポスターに熱気球型飛行船が描かれてますが、計画では会場で飛ぶ予定で、飛行船では航空法的に通らない為に熱気球の名目で製作、郊外で極秘飛行実験も行ったものの
結局実現しなかったと。34時間連続オールナイト上映とか昭和の熱気は狂ってます。当時はまだ冷戦中であり、ポーランドの上映作品は換えが無く次のNYへ巡回する為に日本語訳字幕が付けられず(文字はフィルムに直接穴を開ける)、円盤型スライドに字幕を入れて同時映写したそうです。
こうした字幕技術は結果的に日本が進んで世界中に移転されました。映画の標準的なフレーム速度は24fps(1秒に24コマ)ですが欧州規格では25コマのものが多く、これは欧州のテレビ映像の走査サイクルが映写フィルムの25コマ相当で同期させ易い為。こうしたフィルム⇒VTRが同期しない苦労話も。
「鴛鴦歌合戰」1939・日活京都・白黒35mm。監:マキノ正博(脚本は江戸川浩二名義)。撮:宮川一夫。美:長谷川繁吉。音:大久保��二郎。オペレッタ作詞:島田磬也。出:片岡千惠藏・香川良介・志村喬・市川春代・深水藤子・服部富子・ディックミネ・遠山満・石川秀道・嵐壽之助・福井松之助。
こちらはNFAJ自身の所蔵作品上映で私の大好きな作品。コメディーの時代劇ミュージカルでひたすら明るく楽しいです。が、一方で片岡千惠藏のラスボス感が強過ぎて浮いてしまってる(疾患が原因かも)のが弱点でしょうか。とにかく『しむちゃん(志村喬の愛称)』の愉快爽快さが作品をより引き立たせてます。
そしてオトミさんこと豪商の娘役『服部富子』と、バカ殿さま役『ディック・ミネ』のテイチク専属歌手が出演し脇を固め良い意味で華で可笑し過ぎる。特に服部富子は昭和末期アイドルとして通用するルックスと飴喉で魅了してくれます。でも現在でも買えるマルベル堂のプロマイドは残念ながら戦後の妖艶な姿。
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