ひとつ、いま “あえてやめようとしていること” があります。
まだ起きてもいない未来を想像して、不安の色を重ねてしまうことです。
長くエンジニアとして働いてきたせいか、
どんな事象も先回りして想定し、綻びのないものを作ろうとする癖が
いつの間にか暮らしの中にまで染み込んでいました。
その癖が、不安を育てて心が沈む日を増やしていたのだと思います。
還暦を過ぎたころ、ふと気づきました。
不安とは、実際の出来事よりも、心の中で静かに膨らむ影のようなものだと。
ならばもう、その影を追いかけるのはやめよう。
最近は、朝のひんやりした空気や、
夜のグラスの中でほどけていく静かな時間、
そんな “今日の心地よさ” を丁寧に味わうようになりました。
妻との何気ない言葉の温度、
夕飯の鍋から立ちのぼる湯気の白さ
“今ここ”の景色のほうが、ずっと確かで、ずっと優しい。
未来は未来の風に乗ってやって来る。
来たときには、そのときの自分で静かに向き合えばいい。
不安を先取りするより、
今日の穏やかさを積み重ねるほうが、心は澄んでいくのだと感じています。
ときどき、心の奥でふっと揺れようとする気配が立ち上がることがあります。
そんなときには、その小さな揺れをそっと抱きしめ、
静かにほどけていく様子を見守るようにしています。
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