母が私に文句や不安を口にすることが増えたのは、2年ほど前のことだった。
当時も今も母は一人暮らしで、あの頃は84歳だった。
病気をしてから、急に不安が大きくなったのだと思う。
「私が死んだら、誰が気づいてくれるんやろな。孤独死になるな。」
そんな言葉をぽつりとこぼすようになった。
それでいて、私たちとは同居したくないと言う。
その言葉の揺れが、当時の私には少し胸に刺さった。
歳を重ねると、心の余裕が少しずつ削られていくのかもしれない。
思うように体が動かない日が増え、
小さな不安が積み重なり、
行き場のない気持ちが、
一番近い“子ども”に向かってしまうのだろう。
文句を聞くたびに、つい言い返しそうになる。
でも、母の言葉の奥には、
「ひとりで暮らす不安や寂しさ」が静かに潜んでいるように思えたのだ。
それからは、毎日少しだけ電話をするようにした。
他愛のない話をするだけの日もある。
そのおかげか、母は少しずつ落ち着きを取り戻し、
今ではあの頃のような文句を言わなくなった。
文句の裏には、きっと不安がある。
その不安ごと、そっと受け止められる自分でいたい。
親の変化に気づけるようになった今、
そんなふうに心の目を育ててくれた母に、静かな感謝が芽生えている。
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