「ラストファーマー 最後の農夫」原題:கடைசி விவசாயி(Kadaisi Vivasayi)・英題:THE LAST FARMER。2021・トライバルアーツ・DCPタミル語。監脚撮:M・マニカンダン。音:サントシュ・ナラヤナン(挿入歌唄)、リチャード・ハーヴェイ。
出:ナランディ、ヴィジャイ・セードゥパティ、ライチャル・ラベッカ、ムニーシュワラン、カリ・ムトゥ、ヨーギ・バーブ、チャップリン・サンダー、RRフィリップ、クッティ。。主演のナランディは俳優ではなく本職の農民で本作撮影後に他界し、映画の冒頭は彼への追悼画面が表示されます。
インド大映画祭では毎年定番で上映され、また観てしまうという。インド映画は唐突に歌って踊るミュージカルシーンが無い作品にこそ極意があると私は思いますが、本作はその最右翼に位置する超名作です。宗教や文化は日本と違っても、人間の本質とは何か?という点では世界共通なのだと考えさせられますね。
ただ内容的にシリアスで地味だからか本国では興行的には失敗だったそうです。傑作だからといって客が入るとは限らない典型例です。一方で脳内麻薬発生映像の箇条書きで内容が全く無く、映画である事は方便に過ぎない合法ドラックに我も我もと客が押しかけて大盛況だったり、商売とは難しいですね。
本作はインドの土地の広大さと社会の矮小さが同時に味わえて、古典的農耕などの様子を含めて大変勉強にもなります。普通の映画では悪役が多いある役職の役人も、本作では登場人物で一番の人格者であり観た者全員が共感するんじゃないでしょうか。テーマは重いけどコメディ調と粋な風刺で深刻さはありません。
主人公を始め登場人物は素人の村人で、セードゥパティとヨーギ・バーブのみ俳優です。そのバーブといえば「マンデラ(2021)」ですよ。こちらも歌踊りも無いコメディタッチの社会風刺&民主政治啓蒙作品で、喜劇役者が故に逆説的に社会派作品で輝く俳優ですね。演出の冴えが凄いのでまた観たいです。
本作は舞台が地方村落で生活用品から食事まで、陶芸シーンにも興味深々。日本の現地法人製が多数な車とオートバイのみ都会と同じなのが何ともミスマッチで味わい深い。『JUDGE』と書かれた判事の公用車はヒンダスタン『アンバサダー』で、モーリス『オックスフォード』を80年間ライセンス生産。
「ボンブ -神の音」Bomb。2025・ジェンブリオピクチャー・DCPタミル語【日本初公開】。監:ヴィシャール・ヴェンカット。脚:マニカンダン・マスタヴァン、アビシェク・サバリギリソン。撮:PMラジクマール。編:GKプラサンナ。音:Dイマン。
出:アルジュン・ダース、ナーサル、シヴァトミカ・ラジャシェカール、カーリ・ヴェンカット、アビラミ、シンガンプリ、マハデブ・パイヤッカル、バラ・サラヴァナン、プーヴァイヤール、プリヤ・ヴェンカット、Sラジャパンディ、シルヴェンステン、ラガヴェンドラ・ジャガディッシュ。
インド映画によくある対立する2つのグループを如何に和解させるか?といった内容。批判や重苦しい空気を避ける為に喜劇のスタイルを採り直接表現を用いず、カーストを中心に様々な差別の克服無くてはインドは一流の大国へと躍進出来ないという比喩的テーマを感じます。凄く面白い反面、
同種テーマの名作が多いだけに相対的に普通に感じてしまうのが惜しい。逆に言えばインド(タミル)映画の層の厚さが分かります。作中、日本とは行政システムが大きく異なる国なので翻訳家が苦労している台詞が多くあります。『行政官』と訳されたのは県長官(District Collector)で、
元々はコレクターの名の通り徴税官ですが、現在の県長官は日本でいえば江戸町奉行に相当、三権全てを掌握し絶大な権限を有します。本作ではラストファーマー同様に大岡越前的役所で、演じるアビラミ女史は先に挙げた「イレブン」やインド映画祭で何度か上映されてる「スルタン(2021)」にも出演。
https://www.ks-cinema.com/movie/ide2026/
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