「恋愛三昧」Liebelei。1932・独エリートトンフィルム・白黒35�弌�BD)。監:マックス・オフュルス。原:アーサー・シュニッツラー。脚:カート・アレクサンダー、ハンス・ヴィルヘルム。撮:フランツ・プラナー。 編:フリーデル・バッコウ。録:ハンス・グリム。美:ガブリエル・ペロン。音:テオ・マッケベン。
出:マグダ・シュナイデル、ヴィルフガング・リーベネイネル、ルイーゼ・ウルリッヒ、カール・エズモンド、ウィリ・エイヒベルガー、オルガ・チェーホワ、グスタフ・グリュントゲンス、パウル・ヘルビガー、パウル・オットー。。原作の戯曲を無声版に続きトーキーによる二度目の映画化で、ロケはウィーンですね。
オフュルス監督は、美術や音楽演劇などの文化や、戦艦や戦闘機を開発できる程の科学技術先進国でありながら、人類史上唯一消滅してしまった『オーストリア・ハンガリー帝国』(日独露など政体が替わっても国そのものは存続)への限りない愛情を込めた作品を多数撮っていて本作もその一つ。
また撮影編集技術として、アングルの変化だけでなく長廻しで自在に動き周るカメラとそれを計算したセット、窓やドアの向こうからなど奥行を演出する間接的映像、とりわけ実際の劇場内での劇中劇撮影などが特徴で、本作でも既にそれが如何なく発揮されてると思います。本作はシュニッツラーの悲恋もの戯曲が原作だけに
基本的な面白さは勿論、『観て聴く文学』と表現したい芸術性も高い名作に思えます。同様な結末の映画は後々多々あれど『パイオニアの完成度が余りに高過ぎて、続く同ジャンル作品がそれを超えられない』事の典型例にも感じます。作品のキモである『紳士貴族による決闘』のルールも日本人には興味深い要素です。
冒頭の劇場シーンで『フランツ・ヨーゼフ1世』皇帝陛下の御成りと共にオーケストラが国歌(現ドイツ国歌)を演奏するするシーンでは墺洪帝国マニア的に出演者共々脳内で直立不動の姿勢を取ってしまいます。主人公達の青年将校の軍服姿も余りに恰好良過ぎて鼻血が出そうに。カギとなる軍帽は『シャコー』と呼ばれるもの。
男性側主人公は『竜騎兵(Dragoner:ドラグナー)』所属ですが、日本で流行ってる異世界物で命名されてる竜騎兵とは語源からして全く別のものです。関連してまたいつもの字幕翻訳に対する疑問で、ヒロイン達が軍の階級章の見分け方で「星一つは二等中尉(Leutnant)」との台詞があるのですが、何で素直に『少尉』と
訳さないのか。おそらく原因はネット上に墺洪帝国陸軍階級についてそう書いてあるものがあって、訳者はそれを教科書にしたんじゃないかと思います。因みに主人公は一等中尉(Oberleutnant)とされてます。余談ながら日本軍には無い階級が将校、下士官共にあって混乱を招きます。
主人公の上官は『騎兵大尉(Rittmeister)』ですが一般兵科ではHauptmannで、同じ大尉なのに名称が所属で異なっていたり。日本では馴染みのない墺洪帝国軍ですが、知られてる軍人としては新潟のゆるキャラ『レルヒさん』こと、日本にスキーを伝えたテオドール・エードラー・フォン・レルヒ少佐と、
「サウンド・オブ・ミュージック(1965)」の『男爵トラップ大佐』のモデルとなったゲオルク・ルートヴィヒ・フォン・トラップ海軍少佐ではないでしょうか。竜騎兵以外のオタク的見所は、カフェに設置された『硬貨投入式オルゴール(後のジュークボックス)』や送受話器一体型の電話機など墺洪帝国の科学技術先進国ぶり。
「風雲児(風雲兒)」The Exile。1947・米フェアバンクスカンパニー・白黒35�弌�BD)。監:マックス・オフュルス。原:コスモ・ハミルトン『His Majesty, the King: Being the Chronicle of Certain Hours』。製作脚本主演:ダグラス・フェアバンクスJr。
撮:フランク・プラナー。編:テッドJケント。音:フランク・スキナー。出:マリア・モンテス、ポーレ・クロゼット(リタ・コーディ)、ヘンリー・ダニエル、ナイジェル・ブルース、ロバート・クート、オットー・ヴァルディス、エルドン・ゴースト、コリン・キース・ジョンストン、ベンHライト、トーベン・マイヤー。
フェアバンクスJrが父の『スワッシュバックラー』もの(西洋剣術活劇)をトーキー化したオマージュ(総天然色は予算の関係で断念)。しかも剣劇は奥の手で、まずは凄い身体能力での肉弾戦。それをハリウッド初仕事とするオフュルス監督がグルグル回り自在に移動し長回しのカメラワークで魅せるという映像が凄い。
しかも単なる活劇ではなく、メロドラマや喜劇の要素もバランス良く盛り込まれ、それをオフュルスの撮影技術により、まるで絵本が動いてるような美しい映画です。その上、クロムウェル護国卿の腹心であるイングラム大佐が悪役なのに冷静沈着かつ非道は行わない紳士であり、黒系の衣装も相まって滅茶強そうで恰好良く、
能天気なチャールズ二世とキャラも外観も対照的とする演出がまた素晴らしい。作品そのものには大満足ですが、例によってBD版字幕翻訳に気になる点が。”Captain”を『大尉(陸軍)』としてますが、この場合は勅任艦長か私掠船長(後の海軍大佐)で『艦長』と訳すのが適切かと思います。
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