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今日の午後、ショッピングモールで、たまたま母娘の会話が耳に入ったんです。
聞き終わったあと、しばらく本気で動けませんでした。
女の子はまだ小学生くらい。
たぶん、母娘でランチを食べ終えた帰りだったんだと思います。
話の流れからすると、さっき食べたのは 1人あたり2,300円くらい の昼食。
今の時代、モールで食事をしたらそれくらいは珍しくない。
安いとも言えないけど、大人からしたら「まあそんなものかな」で流してしまう金額です。
でも、その子はぽつりと言ったんです。
「ママ、さっきのごはん、高かったね……」
ああ、こういう一言って、妙に刺さるんですよね。
背伸びしてるわけでもない。
大人の真似をしてるわけでもない。
ただ、子どもなりに“お金”というものが少しずつ見え始めて、「食事って、こんなにお金がかかるんだ」と実感した、そのままの言葉だった。
ここで多くの大人は、たぶんすぐ打ち消します。
「そんなの高くないよ」
「これくらい普通でしょ」
「子どもは気にしなくていいの」
でもそれって、教育じゃないんですよ。
子どもの感覚を、その場で押しつぶしてるだけ。
せっかく自分の頭で感じたことを口にしたのに、大人の都合でふたをする。
そういう場面、正直よく見ます。
でも、そのお母さんは違いました。
まず落ち着いた声で、「さっきのごはん、高いって思ったの?」と聞いたんです。
女の子はうなずいて、「うん。2,300円って高いと思う」と答えた。
するとお母さんは、否定も説教もせずに、こう返しました。
「そっか。前よりお金のことが分かるようになってきたから、高いって感じたのかな?」
これ、すごくないですか。
子どもの“感じたこと”を、まずそのまま受け止めてる。
「違う」とも言わない。
「気にしすぎ」とも言わない。
まず、子どもの中に生まれた金銭感覚そのものを認めている。
この時点で、もう十分すごい。
でも、本当に驚いたのはこのあとでした。
お母さんは続けて、「この前食べたごはんは、もっと高かったんだよ。1人 16,000円くらい したの」と言ったんです。
女の子は目を丸くして、「それは高すぎるよ!」と、びっくりしていた。
普通なら、ここから始まるのは“ありがたみを教えるための圧”です。
「だから無駄遣いしちゃだめ」
「お金を稼ぐのは大変なんだよ」
「感謝しなさい」
もちろん間違いではない。
間違いではないんだけど、言い方を間違えると、子どもに残るのは感謝じゃなくて、罪悪感なんです。
お金の話が、いつの間にか“重たい話”になってしまう。
でも、そのお母さんは、そこでさらにやわらかく言いました。
「じゃあ、言い方を変えてみようか。“お金さん、こんなに豊かで素敵なごはんを食べさせてくれてありがとう”って言ってみようか」
もう、私はそこで完全にやられました。
同じ“お金の話”をしているのに、ある人は子どもに不安を植えつける。
ある人は子どもに負い目を背負わせる。
でもこのお母さんは違った。
高い、安いで終わらせず、金額の話を“価値”の話へ、しかも押しつけではなく、感謝へと静かに運んでいたんです。
「高い」と思う気持ちを否定しない。
でも、「高い」で終わらせない。
お金は大事。
だからこそ、ただ怖がるものでも、責めるためのものでもない。
暮らしを支え、時間を豊かにし、誰かといい食事を囲めるようにしてくれるものなんだと、子どもにちゃんと伝えていた。
こういう教え方ができる大人、どれだけいるんだろうと思いました。
口では“しつけ”と言いながら、実際は子どもの心を急いでねじ伏せる大人のほうが、ずっと多い気がします。
感情で押さえつけて、従わせて、それを教育だと思っている。
でも本当に上手な親って、声を荒げないんですよ。
理屈を振りかざさないんですよ。
子どもがちゃんと自分で理解できるところまで、そっと橋をかける。
最後、その母娘は笑いながら、その言葉を繰り返して歩いていきました。
私はその場に座ったまま、しばらく呆然としていました。
いや、本当に。
こういうのを「教え方がうまい」って言うんだと思います。
強く言わないのに、ちゃんと伝わる。
責めないのに、ちゃんと残る。
あまりに見事で、逆に胸がざわつくくらいでした。
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