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2025年12月09日21:08

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緑に輝く「レモン彗星」が告げる、過去の恐怖と未来への警告

12月9日(火)

年末に際し、今年最も注目された天文現象を振り返る。

<緑に輝く「レモン彗星」が告げる、過去の恐怖と未来への警告>

 目次
第1章 太陽系外縁部カイパーベルト領域について
第2章 ハレー彗星接近に伴う地球滅亡説 シアン化合物について
まとめ ロマンある彗星探し

10月には、きわめてまれな天体現象が観察された。日本全国夜空に、ひときわ緑の光沢を帯びた星が出現する。その名も「レモン彗星」という。2025年1月3日に米アリゾナ州レモン山天文台で新発見された彗星は、当初小惑星に分類されていた。小惑星と彗星の分類は実のところあいまいである。小惑星といえば、火星と木星の間に由来する。いわゆる小惑星帯(メインベルト)に収まっているものの、突如軌道を変えて、地球に接近する可能性を秘める。衝突の危険性のある天体を「地球近傍天体(NEO)」という。彗星の起源や逸話を紹介する。

 写真=レモン彗星 2025年10月1日スペインのマラガ県バジェホスで撮影 提供元 詳細記事 Forbes 2025年10月6日13時 記事{まもなく地球最接近、「一生に一度」のレモン彗星を見よう 観測のポイントは}より
https://forbesjapan.com/articles/detail/83009
フォト

 
       第1章 太陽系外縁部カイパーベルト領域について

 彗星の起源は、太陽系外縁部エッジ−ス・カイパーベルト領域、またはさらに外のオールトの雲にある。エッジース・カイパーベルトの名の由来は、2人の天文学者に由来する。

 写真=太陽系外縁部エッジ−ス・カイパーベルト領域の解説図 JAXA 宇宙航空科学研究機構 ディープインパクト探査が明らかにする彗星と太陽系の謎 より 2006年3月
https://www.isas.jaxa.jp/j/forefront/2006/sugita/03.shtml
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一人は、アイルランドのウェストミース県で産まれたケネス・エッジワースである。1943年に著した『The Evolution of Our Planetary System』において、海王星の軌道の外側に彗星の起源となる天体があると説いた。もう一人は、アメリカ国籍のジェラルド・カイパーである。航空機から赤外線観測を行った先駆者としても知られる。1948年に天王星最大の衛星ミランダを、翌1949年に海王星の衛星ネレイドを発見した。遡ること、大戦末期の1944年に、土星の最大衛星タイタンにメタンの大気があるとの見解を明らかにしている。太陽系の外側を観察するうち、ケネス・エッジワースと同じく、海王星の外側に小天体が集った領域を示唆した。海王星の外側を回る天体は、1930年にクライド・トンボーによって、冥王星が発見されている。当時冥王星の大きさや軌道について不確実性が高かった。解明が進んだのは1990年以降である。1992年に、太陽系外縁部で、直径が 100 km を超えるカイパーベルト天体は10万個以上存在するとの見通しが立てられた。当初、軌道周期が200年未満の短周期彗星の主要な起源であると考えられた。長周期彗星は、400年に上る。その起原は、太陽から1光年または1,6光年離れたオールトの雲との説が有力視される。1950年にオランダの天文学者ヤン・オールトが提唱して以降、75年に渡って天文学者から支持された。

 彗星の特徴といえば、氷や固体微粒子で形成される。太陽へ近づくたびに、熱で溶けて、蒸発していく。通り道には、溶けた氷による尾が刻まれる。対して小惑星は、固い岩の塊で形成され、太陽熱で溶けるには、3AU天文単位程の接近時になる。

必 AUは天文単位。1天文単位は、地球から太陽の距離となる1億5000万キロを差す

 彗星の場合、小惑星よりも軌道周期が長く、不規則な楕円を描く。その周期性は3年から数百万年まで大きな幅がある。

 有名なハレー彗星は75,32年周期と判明している。名前の由来は、軌道周期を計算したイギリスの科学者エドモンド・ハレー(ユリウス暦表記 生誕:1656年10月29日ー1742年1月14日 85歳没)にある。数学や地球物理学、人口統計学の分野でも名を上げた。功績の一つが、彗星の周期性である。1705年に出版した著書「彗星天文学概論」において画期的な説を発表した。

写真=エドモンド・ハレーの肖像画(1722年以前に作成したとみられる) 出展:天文学辞典より https://astro-dic.jp/halley-edmond/
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1682年に自身が観測した彗星の軌道が正しいことを確証する。その理由は、16世紀ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーが観測した大彗星の軌道と一致したことにある。1456年、1531年、1607年、1682年に出現した彗星は同一の天体であり、次回の回帰は1758年であると記された。エドモンド・ハレーは、1742年に85歳で没して、確認する術はなかった。後世の天文学者が、ハレーの予言どおり、1758年に夜空を横切る彗星を確認した。当時惑星以外の天体において、初めて発見されたのである。軌道を割り出した人物にちなみ、ハレー彗星と呼ばれた。次に日本で明治時代に起こったハレー彗星接近騒動について紹介する。

     第2章 ハレー彗星接近に伴う地球滅亡説 シアン化合物について

 以下 詳細記事 写真掲載元 ハレー彗星のデマについて 2025年7月5日(土)11時付け スペースチャンネルより
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/72901a249410b0f44b558d82940758a6ebddc308

 写真=ハレー彗星 出典:Kuiper Airborne Observator
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短周期のハレー彗星は、不吉な予兆と知られていた。直近の最接近時は1986年になる。その前は1910年、明治時代だった。当時一大騒動を巻き起こしていた。そのきっかけは、有毒ガスが撒き散らされ、大量死の不安がよぎったからである。当時の科学者は、危険性を説いていた。太陽光によって、蒸発した成分を含む尻尾の部分が、地球に降りかかると警告する。とりわけ強力に裏付けたのは、フランスの天文学者カミーユ・フラマリオンの一説である。「尾にはシアン化合物などの有毒ガスが含まれており、地球の生命は絶滅するかもしれない」と深刻な面持ちで訴えた。シアン化合物とは、化学式「CN-」Cは炭素の英語Carbonのことを、Nは窒素の英語Nitrogenを指す。ーはイオンを意味する。つまりシアン化とは、炭素と窒素と金属が結合している化合物のことである。配位子名ではシアニドという。配位子とは、非共有電子対を与えて配位結合する分子や陰イオンのことである。アンモニアNH3はアンミン、水酸化物イオンOH-は、ヒドロキシドという。

 詳細 配位結合について Try IT 高校化学 5分で解ける!様々な配位子に関する問題
https://www.try-it.jp/chapters-9578/sections-9699/lessons-9704/practice-3/

 また金属イオンに非共有電子対を持つ分子や陰イオンが、配位結合することを「錯イオン」という。たとえば亜鉛(Zn)を過剰に水酸化ナトリウム水溶液を加えると、イオン化に伴い、沈殿の再溶解が起こる。生じた物質は、テトラアンミン亜鉛(��)イオン〔Zn(NH3)4〕2+ }である。
構造的には、亜鉛イオンの周囲を4個のアンモニア分子が取り囲む。金属の亜鉛の周囲を非共有電子対をもつ分子や陰イオンが配位結合するのである。いわゆる「錯イオン化」しているのである。

 詳細 Try IT 高校化学 5分でわかる!錯イオンとは
https://www.try-it.jp/chapters-9578/sections-9699/lessons-9704/

 写真=錯イオンについての解説図 詳細記事 掲載元 スマナビング!2020年5月6日付 錯イオンとは?命名法や構造、配位子などの意味/覚え方まで詳しく解説
https://linky-juku.com/complex-ion/
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 日本では、明治期にあたる1910年、シアン化物を含んだハレー彗星の接近に伴い、終末論が唱えられ始めた。日本では『大阪朝日新聞』が報じた。「地球の酸素と尾の水素が化合して人類は窒息する」と強烈なインパクトを残す記事を掲載したのである。テレビやインターネットがなかった時代、人々は新聞を情報源にしていた。危機意識を共有し、生き残りをかけたまさにサバイバルが始まった。ガスマスクや酸素吸入器の受容は大きく高まった。最接近時に備え、自転車のチューブを余分に用意し、非常時の酸素タンク代わりに使用する。タンクの代用品としてはほかにビンも含まれている。

写真=1910(明治43)年5月22日付東京朝日新聞朝刊5面 ハレー彗星の接近を知らせる記事 掲載元 ことばマガジン 2013年3月26日付記事
http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/mukashino/2013032100001.html
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 科学的に彗星に含まれるシアン化水素は、可燃性の気体であり、沸点は常温付近だった。気温が低いと液状、逆に高いと気体になる。注意しなければならないのは、液体でも揮発性が非常に高い。一部が気体として揮発してくるため、 低温時でも中毒の原因となる。

 実際小さな彗星から気体として放出されるシアン化合物は、地球に対する影響は皆無だった。騒動を乗り越えた後、1914年から1918年まで4年に渡る第一次世界大戦へと突き進んでいった。戦場となったヨーロッパを中心に、死者は推定1000万人近くにのぼり、負傷者も推定2000万人に達した。ハレー彗星の接近に伴う終末論は杞憂だったとはいえ、われわれ人類による領土争いを発端にした戦争により、大きな犠牲を蒙った。2020年代、人類滅亡の有力なシナリオでは、人工知能を搭載した化学兵器使用説が、検証されるようになった。人類の運命は、我々自信にゆだねられている。

   まとめ ロマンある彗星探し

 星が地球に衝突する確率は極めて低いことが解明され、今や天体愛好家たちの間では、夜空を彩る尾を引く姿から「ほうき星」と呼ぶ。尽きることのない宇宙のロマンを抱かせてくれた。2025年10月21日に地球へ最接近するレモン彗星は、次に観測されるのが1400年後、まさに「一生に一度」の出会いだった。その鮮やかな緑色の輝きの正体は、太陽熱で蒸発した際に放出される二原子炭素($C_2$)の輝線である。人類は、この炭素を主成分とする宇宙の神秘を解き明かす優れた知能を持ちながら、地球上では、大量排出による温暖化を引き起こしていた。彗星を追い、宇宙の謎を探求する一方で、資源の枯渇や環境問題、そして戦争の危機といった、足元の不透明な未来に直面している。このレモン彗星の来訪は、私たちに「宇宙のロマン」を再認識させると同時に、過去のデマ騒動から教訓を学び、「私たち人類の運命は、我々自身にゆだねられている」という最も重要な問いを突きつけている。次にこの彗星が帰ってくる1400年後、人類が胸を張れる未来を歩めているかどうかは、「今」の我々の行動にかかっている。


過去の天文関連日記

・2025年11月4日付 天文学 18光年先でスーパーアースを発見
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1991009048&owner_id=32437106

・ 電磁気学(1)
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990931387&owner_id=32437106

・ 電磁気学(2)と国立天文台2024年10月19日(土)一般公開レポート 第1章 JASMIN計画
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990938272&owner_id=32437106

・ 国立天文台2024年10月19日(土)一般公開レポート 重力波天文学 LIGO(ライゴ)について 私と第一線で活躍する本間希樹教授との会話
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1990942809&owner_id=32437106

・2021年12月4日(土)天文関連ニュース 天体イベントと生命誕生(前編)11月19日の部分日食 夜空を横切る火球 スノーボールアースについて
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1981014766&owner_id=32437106

・2022年4/8(金)天体イベントと生命誕生(後編)135億光年先で銀河発見 地球内で生物誕生に迫る実験 最新ニュース 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982021534&owner_id=32437106




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