老人ホームの内偵のため入居者として潜入した83歳の男性セルヒオの調査活動を通して、ホームの入居者たちのさまざまな人生模様が浮かび上がる様子を描いたドキュメンタリー。妻を亡くして新たな生きがいを探していた83歳の男性セルヒオは、80〜90歳の男性が条件という探偵事務所の求人に応募する。その業務内容はある老人ホームの内偵調査で、依頼人はホームに入居している母が虐待されているのではないかという疑念を抱いていた。セルヒオはスパイとして老人ホームに入居し、ホームでの生活の様子を毎日ひそかに報告することなるが、誰からも好まれる心優しい彼は、調査を行うかたわら、いつしか悩み多き入居者たちの良き相談相手となっていく。舞台となった老人ホームの許可を得て、スパイとは明かさずに3カ月間撮影された。第17回ラテンビート映画祭や第33回東京国際映画祭では「老人スパイ」のタイトルで上映。第93回アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞にノミネート。(映画.comより)
<2024年12月8日 劇場鑑賞>
映画に詳しい方なら「え?劇場鑑賞のわけないでしょ?録画鑑賞の間違いでは?」とお思いでしょう。しかし、この名作が今、過疎県和歌山のミニシアターで上映されたのです。ミニシアターのオーナーさんは、和歌山出身とは言え長らく東京で配給のお仕事をされていた方で、故郷に戻ってミニシアターを開設されてからは、あらゆる名作を新旧取り混ぜ上映してくれています。当時和歌山で上映されなかった本作も、縁あってやって来たわけです。
月並みな表現ですが、いい映画でした。少し心が傷みながらも、そこはかとなく優しくてあったかく、やっぱり人間っていいな、って思わせてくれる映画でした。主人公のセルヒオは、83歳とはいえ、本当にしっかりしていて頭も冴えていました。こんな風に歳を取らなきゃいけないな、やっぱり心がけがいいんだろうなと思った私でした。
<ここからネタバレ>
「母親が虐待されているかもしれないから、こっそり調査して欲しい」という家族からの依頼をうけ、雇われたセルヒオ。娘夫婦に付き添われて件の老人ホームを見学し、何食わぬ顔で入所します。そして見聞きしたことを簡潔にまとめて毎日報告。経験があるのかと思うほどスムーズに調査しています。
とある日の報告。「見守り対象の女性の家族は、本当にそんな疑念を持っているのか。私はここに来て1か月になるが、彼女の家族が訪ねて来るのをついぞ見たことはないが」・・・個人的には、ここが一番の衝撃だったかもしれません。そ、そうなのかと。
ホームでは、当たり前ですがいろんな個性の入所者さんがいて、でもみんなそれぞれに優しくて、そしてスタッフもみんな一生懸命で、お誕生日会の開催や各種イベントなど、趣向を凝らした催しを精一杯やってくれていて。そしてセルヒオは気づきます。一番の問題は、みんな家族がほとんど来ないなど、孤独なことなんだと。虐待などないのです。そう報告したセルヒオは、予定よりも早く退所していくのでした。
<ネタバレ終わり>
とっても温かいお話だったのですが、一つ難を言えば、セルヒオが恵まれ過ぎていたこと。娘たちは優しく、他の入所者さんたちやスタッフにも優しく接しています。孤独な老人が多い中、仕事としてその事実を報告してくれたのはいいけれど、自分は明るく退所してゆく・・・他の方々はスパイと知らないからいいのだろうけれど、切なく見送る仲間もいたんじゃないかな。それは仕方のないことなんだろうけれど、私はちょっとせつなかったかな。
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