主題<コロナ後、人口減少時代の鉄道のあり方について 廃止された夜行列車ムーンライトシリーズ 大井川鉄道が100万円切符発売>
物価高に人手不足が拍車をかける日本社会において、地域住民の足を担う公共交通インフラも、サービス維持のために苦労している。今回JR各社と地方路線の取り組みを紹介する。
目次
第1章 大井川鉄道が100万円切符を販売
第2章 JR各線 往復・連続乗車券廃止 青春18切符のルール改定
第3章 冬のデスクワーカー向けの新商品「あったかヒーター」
第4章JR東日本がワンマン運転の導入拡大へ踏み切る
第1章 大井川鉄道が100万円切符を販売
人口減少が叫ばれる地方都市、公共交通機関のあり方が問われている。静岡県の大井川鉄道は、今観光列車として、「てっちゃん」を初め人気を集めている。このたび開業100周年を記念して、大胆な企画を明らかにした。2025年1月14日、記念企画商品、純金製の「100万円切符」を発売する。購入者は、2つの特権がつく。一つは、2025年3月10日〜2026年3月31日の期間中、大井川本線の電車・SLが乗り放題(SLは自由席)である。受注生産品で同日より受付開始された。
写真左=大井川鉄道100万円切符 掲載元 鉄道新聞
https://tetsudo-shimbun.com/goods-events/entry-4156.html
写真右=大井川鉄道3つの車両(左側21000系、真ん中16000系、右側7200系)
掲載元 大井川鉄道株式会社
https://daitetsu.jp/train_unyo

もう一つ目は、ユーザーの名前とシリアルナンバーが刻印される。大井川鐵道史上初の高額切符は、同社の公式ECショップ限定で販売する。注文を受け付けてから、製作に入り、商品の配達まで4〜5週間掛かる見込みだという。なお注意点として、切符購入者は、食堂車や夜行列車を含め、特別企画列車に乗車する際には別途料金が必要になる。
大井川鉄道を初め、地方路線は、話題性を作ることで、観光客を呼び込み、収益確保に奔走している。
第2章 JR各線 往復・連続乗車券廃止 青春18切符のルール改定
参考リンク AERAdot 2024年11月10日付
https://dot.asahi.com/articles/-/239812?page=2
JRグループは12月2日に、2026年度末を持って、往復・連続乗車券廃止を決定した。利用者向けに、ネットでの購入が一般化し、窓口の業務を減らすためと説明している。往復乗車券は片道601km以上を超える距離の運賃に関して、行きと帰りの2枚分、同時購入により、それぞれ1割引が適応された。連続乗車券に関しては、一部区間跨る長距離切符の購入に際して、割引価格にて販売されていた。JR側として、普通運賃の改定に向けて、国に申請書を出す意向を示している以上、経営の効率化を求められている。
鉄旅を楽しむユーザーの域を超えて、世間一般で話題になったのは、「青春18切符」の使用ルールの改定だった。青春と名がつくものの、利用者の年齢、性別、国籍を問わない。1982年の国鉄時代、「青春のびのび切符」として発売され、お金のない学生の節約旅として使用されてきた。当時は1日券3枚と2日券1枚綴り、計5回分1セットで売りに出されていた。販売価格は8000円、試用期間は3月1日から5月31日まで一季分に及んだ。梅のシーズンから、桜の開花、新緑のゴールデンウィークまで、気候が良い春の旅を味わえる切符として、歓迎されてきた。利用者から名前を短縮した方が良いと声があがり、翌1983年から「青春18切符」に変更した。
試用期間
春:3月1日から4月10日
夏:7月20日から9月10日
冬:12月10日から1月10日
写真 掲載元 TRAVELZOO 2024年10月24日付
https://www.travelzoo.com/jp/blog/as20241024/
かつては、夜間走るムーンライトシリーズの快速列車においても、普通乗車券の代わりとして青春18切符を利用できた。コロナ禍によって役目を終えた最後のムーンライトながら(国鉄時代は大垣夜行)の場合、別途指定料金520円払うことにより、座席を確保できたのである。2021年1月に、JR東日本から東海の区間に跨り、東京駅と岐阜県の大垣駅を直接結ぶ「ムーンライトながら号」は、車両の老朽化により、廃止が決まった。最後の運行は、コロナ禍前の2019年から2020年に跨る年末年始だった。ムーンライトシリーズは、朝方目的地に着くことから、宿泊費を浮かせる手段にもなる。国鉄時代からの昭和レトロな列車の外観に惹かれ、鉄道好き、いわゆる「テッチャン」の撮影対象になった。ムーンライトながら号において、途中30分停車する浜松駅では、一旦プラットホームに出て、撮影する習慣があった。コロナ禍後、JRグループは、臨時の夜間特急列車を出しているものの、季節運行をとりやめている。
快速ムーンライトシリーズについて、バブル崩壊からコロナ前までは、格安の夜行バスとの顧客獲得競争にさらされた。少なくとも青春18切符の利用期間外は、ニーズがなかった。JRグループの働き方改革により、夜間に停車する駅の人員配置、運転手や車掌の深夜業務の負担を踏まえて、運行をとりやめたのである。
東京駅と長野県白馬駅間を走った「ムーンライト信州」は2018年12月30日で廃止、東京駅と新潟駅を結んだ「ムーンライトえちご」は2014年3月31日で運行を終了していた。
写真=ムーンライト信州号 終点白馬駅にて 2014年8月24日の早朝 筆者撮影
写真=廃止されたムーンライトながらのかつての時刻表 掲載元 愛知県共済
https://www.aichi-kyosai.or.jp/service/culture/internet/hobby/railway/railway_1/29.html
夜行列車の廃止、ローカル線の第3セクター化により、青春18切符の利用範囲は、年々狭まっていた。ユーザーの中には、いつか切符そのものまで無くなるのではないか、と不安の声が上がっていた。
1982年に登場以来、JR線一日乗り放題の切符として、学生から社会人、退職した年配の方まで、幅広い世代に親しまれてきた。販売された切符は、スタンプ1回で1日分、計5回1セットである。JR線各駅の窓口で提示すると、利用日の日付が入ったスタンプを押してもらう。春、夏、冬、それぞれの季節ごとの利用期間内であれば、都合の良い日に利用することも可能だった。
2024年冬販売から、使用条件を厳格化した。過去期限内であれば、使用日は切符保持者の自由だった。2024年冬以降、使用期限は縮小しないものの、連続利用に限るのである。値段は5回分1万2050円、消費増税分を除き、基本変わっていない。2024年冬販売以降、1回目に利用すると、有効期限は連続5日までに設定される。これまでは、1枚の切符を、複数人でシェアも可能だった。窓口に通せば、駅員から人数分のスタンプを押してもらう。原則普通列車のみ利用でき、目的地の駅の改札で、人数分のスタンプを確認してもらうことにより、外へと出られる。もちろん、原則同一行動により、縛られる面がある。いざというとき、特急列車や新幹線も利用できない。途中特急列車を利用すれば、別途乗車区間内の普通運賃と共に特急料金が発生する。
このたび、ルール改定に当たって、JR側はより柔軟に対応し、1日分と3日分の販売も受け付けた。料金は1日分4500円、3日分1万円である。1997年4月から2014年3月末日まで消費税5%の時代、11500円で売り出されていた。スタンプ一つ分当たりの値段は概ね2300円だった。5回も使用用途がなく、残りのスタンプ分の切符は、金券ショップに買取依頼するか、フリマサイトに転売することにより、有効活用できた。
写真=2024年夏販売までの旧式の青春18切符 掲載元 TRAVEL.jp 2024年11月25日付
https://www.travel.co.jp/guide/howto/59/
JR側の改定の狙いは複数ある。一つは、駅員の業務負担を削減する観点で、自動改札機に対応するためである。券のサイズも変え、磁気を導入した。これまでは、自動販売機で購入すると、5回分のスタンプの台紙となる切符と共に同じサイズの利用規約を書いた長方形の紙が出された。2024年冬販売以降、磁気切符に変わり、日付記録方式になる。5回分の場合、初めの一回を通すと、切符内に日付が書き込まれる。その1回目の使用日から5日連続有効となり、6日目は弾かれる仕組みに変わった。
もう一つは、他人への譲り渡しを避けることにある。年末年始を挟む冬と春の利用期間は40日、夏は50日余り、過去の切符では利用日が自由だったことにより、5回分の切符の未使用スタンプ分を転売できていた。Yahooオークションでは、利用期間内、未使用のスタンプ回数分の青春18切符が出回っていた。JR側は、より利益を確保するべく、第三者への転売を防ぎたかったのである。
期間内にJR線一日乗り放題の旅を楽しみにしていたユーザーから、嘆きの声が上がる。円安物価高により、日本人は海外旅行が遠のいた。国内宿泊旅行も、外国人観光客の増加により、ホテル需要が逼迫し、宿泊費の高騰に悩まされている。青春18切符の使用ルールの厳格化により、行動範囲がますます狭まっていく。
コロナ禍で流行った身近な場所を楽しむマイクロツーリズムが、主流の時代へ変わりつつある。人口に比例して、利用者が減少する交通インフラについて考える契機にもなった。
以下 マイクロツーリズム関連
2024年10月16日(水)付け 社会情勢について 衆議院選挙戦の事前の調査結果 Amazonプライムが有料化へ コロナ禍からマイクロツーリズムが流行る
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1988608976&owner_id=32437106
第3章.冬のデスクワーカー向けの新商品「あったかヒーター」
商品説明 詳細 bounch 2024年12月26日付
https://moov.ooo/article/6756ae18b635af2b45d6515a
長い夏が過ぎて、涼しい秋を迎えた。気象庁によると、今冬は例年よりも寒さが厳しい見通しだという。平年よりも冬の気温が低下するとの発表を受けて、企業側は防寒対策グッズの販売に力を入れる。サンコー株式会社は、ドアの開閉により、温まりにくい列車内用のヒーターの開発を手がけた。ブランド名「THANKO」、今回デスクワークを中心とする労働者向けの商品を発売するうえで、列車内のヒーターの開発の応用が利いた。10月29日に新発売する商品「まるで電車の座席ヒーター」は、デスクワーカーの購入を見込む。サイズは幅47×奥行54×高さ10cm、重さは約850g。カラーはグレーとレッドの2色展開で、販売価格は各色ともに6980円 (税込)、
オフィス内といえば、密閉された空間で暖房が利いている。それでも、冬の寒さが厳しい東北地方や北海道では、足元が冷え込むことにより、貴重なアイテムになる。企業側の視点に立つと、円安や物価高により、商品開発コストは嵩む一方である。利益を確実に伸ばすためには、綿密な市場調査は欠かせない。サンコー株式会社が手がけたヒーターは、当たり商品になるのか、今冬の気候が左右する。
第4章JR東日本がワンマン運転の導入拡大へ踏み切る
首都圏を中心に都市部の鉄道を運営するJR東日本は、元国鉄時代の系列グループ会社の中で最も収支決算が良いとされている。ただしコロナ禍後にも一定程度テレワークが普及したことによる、定期券の収入源、地方都市の過疎化により、赤字を出す路線も確実に増加した。2024年10月29日付、JR東日本は、昨2023年度の利用客が少ない36路線72区間において、750億円の赤字を出していると公表した。
最も採算性が悪かったのは、千葉県の久留里線の久留里駅と上総亀山駅の区間である。100円の運輸収入を得るためにかかった費用を示す「営業係数」は、1万3580円に達した。
写真=2022年度の営業係数を示した図 掲載元 トラベルWATCH 2023年11月21日
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1548838.html
同社は、千葉県の久留里線や、青森県の津軽線など4路線の一部区間については、地元自治体などとの間で路線の在り方について協議を行っている。
詳細記事 NHK NEWS WEB 2024年10月29日付
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241029/k10014623071000.html
昨2023年11月21日のこと、JR東日本は、利用者の減少で採算が悪化しているローカル線34路線62区間の2022年度収支状況を公表した。前年度と同じく全区間が赤字であることが明らかになった。その金額は680億円、約650億円だった前2021年度から横ばいである。コロナによる制限がなく、人の往来が激しくなっても、ローカル線の利用者数は回復していない。地方の過疎・高齢化とも無縁ではない。JR東日本は、2023年3月18日より、運賃を改定し、バリアフリー化に伴い、普通乗車運賃を初乗り140円から150円に上げた。混雑緩和の防止に向けても取り込み、オフピーク定期券を発行する。Suica Mobaile Suicaのみ利用でき、現行運賃から約10%値下げする。都市の利用客による売上により、地方の赤字路線を支えた。人口減少と共に、電気料金や人件費を含むコスト増により、鉄道業界の収益を圧迫した。
詳細 JR東日本より
https://www.jreast.co.jp/unchin-kaitei/
JR東日本は、将来の人口減に備え、重要な交通インフラを支えるべく、さらなる値上げの妥当性を訴えた。2025年3月の運賃改定に向けて、国土交通省に申請書を提出したことを明かした。認可の条件として、企業努力が求められる。限りなく、無駄を削減し、運営の効率化を図る。2024年12月4日付け、JR東日本は、2026年春以降、運賃を改定し、初乗り運賃を現行の150円から160円へ引き上げる意向を示した。企業努力によりコスト削減に踏み切り、値上げ幅を10%未満にとどめることが出来たと説明する。東京駅から新宿駅間の運賃は、210円から260円になる。値上げ幅は平均7,1%となった。
JR東日本に先立ち、他のJRグループは、乗客数の減少や設備の老朽化により、コスト増を背景に、値上げ申請に入っている。2025年4月1日以降、JR九州は初乗り運賃を170円から200円に引き上げた。改定率は普通運賃で15%、通勤定期は30%、消費増税を除くと、値上げは1996年以来、29年ぶりとなった。
国土交通省が審査する鉄道の運賃水準の算定には、「総括原価方式」を採用する。従って、運行会社には、一定程度の利益を出すことを前提に、経営を支える運賃を設定できる。経営には一定程度、国から指導を受けて、時に改善を迫られる。運行会社は、かかった営業費(燃料費、設備費、、人件費など)に適正な利潤を加え、運賃以外の収入を差し引いた経常利益を、国土交通省に提出する義務を負う。自有化された電気・ガス料金も同じく総括原価方式により算定されていた。利用者減により、運賃収入に比例して、利益率が下がると、経営コスト削減に踏み切る。値上げの申請は、最後の手段だった。2024年11月6日付、JR東日本は、経営の重荷になる人件費を抑制するうえで、首都圏の利用客が多い路線でも、ワンマン運転を増やす方針を示した。既に、神奈川県相模原市緑区橋本駅と同県茅ヶ崎市茅ヶ崎駅を結ぶ「相模線」、東京都八王子駅と群馬県高崎駅に跨る「八高線」は、原則ワンマン運転に踏み切っている。人件費や運営コスト削減方法としては、減便の対応も選択肢に入る。分刻みのスケジュルーで移動をするビジネスマンの視点に立つと、都市部で列車の本数が少なくなれば、大きな支障を及ぼす。
そこで、運行本数を可能な限り維持する代わりに、車掌が不在のワンマン運転の導入に踏み切ったのである。切符購入を受け付ける「緑の窓口」も大幅に減らした。人件費をカットしても、燃料費の増加が経営を圧迫する。将来の人口減少を見据えれば、利用者一人当たりの取り分を多くすることにより、収支決算を改善できる。可能な限り、努力した末に、値上げ申請が許可された。引き続きJR東日本は、営業努力を続ける。
立川駅と奥多摩間を結ぶ「青梅線」に関しては、通勤・通学客のみでは採算が合わず、より観光客を取り込むべく、工夫を凝らした。列車の本数が原則1時間に2本に留まる青梅から奥多摩駅間は、車掌不在のワンマン運転である。愛称は「東京アドベンチャーライン」、名前に見合ったかのように、青梅駅より西側は、山々が間近に迫り、蛇行する多摩川に沿って進む。乗客の大半は、観光客で占める。四季折々装いを変える緑豊かな景色に、心を弾ませていた。
写真=JR相模線の各駅を示した図 掲載元 ジョルダン
利用客の多い都市部の路線に関すると、車掌が不在であれば、安全面で支障を及ぼす。駆け込み乗車が後をたたない状況だと、事故も起きかねない。もっとも機械の高性能化により、ドア自体、人と接触すると、自然と開く仕組みになっている。JR東日本は、防犯カメラの設置数の増加を含め、機械化で対応していくという。
労働人口が減少する日本、今後は重要な交通インフラの存続さえあやぶまれる。地方都市を中心に、鉄道路線の維持には、自治体の資金協力が欠かせなかった。
コロナ禍を経て、日本の鉄道各社は、厳しい運営を迫られている。
直近の鉄道関連の日記
2024年2月10日 りんかい線について
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1986944850&owner_id=32437106
2020年12月21日 第2章 コロナ関連と話題のニュース 必2021年3月の終電繰上げについて
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977873998&owner_id=32437106
以下 ムーンライトながら廃止関連の日記
・2021年1月23日付 2016年1月2日(土)ムーンライトながらを利用した東京から滋賀県長浜市への旅を振り返る。オオハクチョウ オオワシ
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1978196285&owner_id=32437106
以下 総括原価方式を解説した日記
・2023年7月10日付け ZARDの坂井泉水とバブル経済 第8回目 4thアルバム「揺れる想い」リリース30周年、新自由主義政策 官から民へ、フリードマン理論 k%ルール、アダム・スミス
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1985458793&owner_id=32437106
■関西圏では当たり前の「区間快速」が東の首都圏には存在しない? 東西の気づきにくい違いは列車種別からも見えてくる
(まいどなニュース - 01月18日 12:00)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=262&from=diary&id=8171688
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