現代の日本語は明治に出来た人工語で、西洋文化の用語にくまなく訳語を作りました。「文化」も「文明」も、漢語ではありますが概念としては訳語です。普通に「文化」をキュルチュール、「文明」をシヴィリザシオンの訳語といいます。
ヨーロッパでも日本でも様々な立場の論者がそれぞれにこの2つの単語を使い分けています。フランス語のキュルチュールは英語にも入っています。同じ綴りを訛ってカルチャーです。第1の意味は「耕作」「栽培」。「トマトのカルチャー」は「トマトの栽培」です。
次に「教養」「文化」の意味があります。フランス語ではこの意味では「個人の関与」のニュアンスが入ります。自分が積む教養、作家が向上させる文化、という具合です。その点、シヴィリザシオンはもっと幅が広いです。
制度、社会習慣、伝統、文化遺産まで含みます。これは18世紀の半ばの新語で、「シヴィル」「市民の」「丁寧な」の派生語「シヴィルにする」という動詞「シヴィリゼ」の名詞形として現れました。今の言葉で言えば「文明化」というニュアンスです。
19世紀に入る頃から、ゲルマン人の「文化」が盛んになります(まだドイツという統一国家はない)。ゲーテらの文芸、カントらの哲学です。そこへ細菌学や医学などゲルマン人の発明発見が相次ぎ、新興のプロシア王国はナポレオンにやっつけられました。
その後、近代化に努力して軍事力を発揮、オーストリー帝国軍を野戦で破り、ついに19世紀後半にフランス帝国との全面戦争に勝利して、ゲルマン人諸国を統一、ドイツ帝国を結成したのです。
それが1871(明治4)年で、日本の新政府は手本をフランスからドイツに切り替えるのです。そのドイツが「文化」「文明」のことに絡むと、議論が錯雑化するのです。日本ではカントのあとはマルクスが官学の権威となっていたから、さらに難しくなるのです。文化は生きてそこにあり個人の参加と努力によって持続すると思います。
フランスにおいてはまさに「いいフランス語」が最重要の文化です。文明は無意識の過去から社会に存続する要素であり、その社会の文化と一緒に生きていく風土でもあります。多くの難しい話し方があり、くだけた話し方があり、それが「いいフランス語」と関係を保って存在している姿が、フランスの文明なのです。
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