紀元後の人類史といえば、イエス・キリストです。イエスは何をした人かというと、ユダヤ教の改革者でした。イエスについてはクリスチャンギリシャ語聖書のほとんどはパウロが伝えたものです。
パウロはもともとユダヤ教の熱心な信者で、キリスト教徒を迫害していました。それがあるとき、奇跡のような体験をしてイエスの衣鉢を継ぐまでに変わったというのです。有名な「パウロの回心」です。でも実際には、何かのきっかけで人生が劇的に変わる人なんてほとんどいないもので、うらやましいです。パウロはエルサレムに入れませんでした。
イエスの弟がエルサレムで小さい教団を持っていて、かつてキリスト教を迫害していたパウロを受け入れなかったのです。そこでパウロは、エーゲ海周辺の都市を布教して歩きました。パウロはユダヤ人ですから、都会が大好きなユダヤ人に説教していったのです。
都市にはもともと、ギリシャ人が多くいます。パウロは、ギリシャ人にも教えを説きました。イエスはアラム語で説教をしましたが、パウロは、コイネーと呼ばれるギリシャ語で説教していました。共通語を使っていたので、ユダヤ人でない人でもみんな、わかるわけです。キリスト教が広がった理由は、ここにあります。
パウロが語り継いでいったイエスの教えですが、イエスが死んでから半世紀後ぐらい、紀元1世紀の終わりごろに、新約聖書が書かれるようになります。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる4つの「福音書」です。紙に書かないものは消えてしまうということです。
キリスト教がギリシャに広がったころ、インドでは、大乗仏教運動が起こりました。バラモン教は仏教によって都市を追われました。それで農村に逃げていったのですが、農村では誰も字が読めないし、高尚な理屈を説いてもわかりません。
そこで泥で人形をつくり、「これはシヴァ神で、シヴァ神万歳といったら救われる」と教えました。わかりやすくしたのです。こうして生まれたのがヒンドゥー教です。わかりやすいので、農村から都市に出稼ぎにきた人々によって、都市に逆流します。
宗教は、わかりやすい方が勝つのです。すると今度は、仏教徒が焦ります。一部の人たちは、勝手にお経を書き始めました。「お釈迦様 (ゴータマ・シッダールタ)は、本当はこういっている」と。こうして様々なお経ができました。宇宙と人間の一体を説く華厳系や、西方極楽世界の存在をうたう浄土系などのお経です。
仏教徒はさらに、ヒンドゥー教のまねをしました。ヒンドゥー教で人気の神様といえば、変幻自在のヴィシュヌ神です。このアイデアを借用してつくられたのが、馬頭観音や千手観音など、さまざまな姿に変身する観音菩薩だといわれています。こうしてヒンドゥー教に刺激されて、よりわかりやすくシンプルな大乗仏教がつくられ、広まっていったのです。
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