・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 作品58
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 作品73「皇帝」
ピアノ独奏:ニコラ・アンゲリッシュ(使用楽器:1892年製プレイエル)
ロランス・エキルベイ指揮、インスラ・オーケストラ
録音:2018年
ERATO 0190295634179
2022年に亡くなったアンゲリッシュのベートーヴェン録音。エキルベイ率いるインスラ・オーケストラはピリオド楽器で編成されたオケで、アンゲリッシュは19世紀末のプレイエルを弾いています。これはピリオドとモダンの中間的存在といっていいのかな。リーフレットに記載されたエキルベイのコメントではフォルテピアノとされていますが、年代的にはピアノと呼んで差し支えなさそうで、というか、ショパンが弾いてたころからプレイエルはピアノだったんじゃないの?
指揮者の場合はピリオドとモダンの「二刀流」な人がいますが、指揮者は自ら音出しませんからねf^^;。奏者の場合、ヴァイオリンではイザベル・ファウストが両方弾くし、チェロだとペーテル・ウィスペルウェイがそうだったように思います。実際にはもっといそう。ただしフォルテピアノは、個人的には過渡期の産物で、繊細さではチェンバロに敵わないし音量や表現力ではモダンピアノに敵わない、どっちつかずの中途半端な楽器という認識です。しかし、アンゲリッシュのこの演奏、いいんですよ。従来のフォルテピアノのイメージを払拭するような、繊細さと音量・表現力を兼ね備えたウェルバランスな演奏になっています。こういうのもあるのか!
アンゲリッシュが操るプレイエルは、一言で言えばファンタジック! 4番は曲自体が幻想的ですから、まさにお誂え向き。昔、この曲に初めて接したとき、ベートーヴェンにはこんな素敵な音楽もあるのかと感動したことを思い出しました。そして5番ですが、とかくマッチョに盛りすぎて、大スケールが空回りしているようなイメージがあったのですが、アンゲリッシュだと4番の延長線上という適正なサイズ感で、ある意味この曲の「正解」ではなかろうかと。いずれもモダンオケとのブラームスの協奏曲を上回る成果だと思います。録音も、プレイエルの魅力を十分に捉えた見事なものです。
一方、エキルベイとインスラ・オーケストラですが、積極性がもう一歩かなと。全体にあっさりした淡彩な響きは、ジャケットのベートーヴェン画像のようです。ソリストを引き立てるという点では申し分ありませんが、オケとしての音色の魅力という点では物足りません。とくに管楽器はもっと目立っていいと思うし、ピアノがいない部分など、ぐっと前に出ていいんじゃないかな。以前、彼らの演奏でルイーズ・ファランクの交響曲を聴いたときも同様な不満があったので、あるいはそういう路線なのかもしれませんが。ピリオドオケというと「クセ強」系のあれやこれやを思いつくもので、もしかしたら「主張しないのが主張」みたいなアンチテーゼがあるのかとも。さすがに考えすぎか?
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