吉田恵輔は目が離せない。石原さとみが本当に壊れている。
これも公開初日、少し間をおいてグランドシネマサンシャイン池袋の午後の回。驚くほど観客が少なくて、20人いませんでした。「観たい!」と思う映画ではないのか。私は思いましたけどなあ。
この監督の映画の感想を書くたび「気まずさ」「いたたまれなさ」と書くのだが、今回はそれに「見ていられない」が加わるんですよ。観たくなくなったでしょう。絶対観た方がいいです。
娘が行方不明になる。街で情報提供願いのビラを配る。それを取材するローカルテレビ局。もちろんホームページも立ち上げる。予想されることではあるが、誹謗中傷の嵐。
で、観ててわかるんだけど、この映画は「娘はどこに行ったのか」「犯人は誰か」という映画ではない。
娘がいなくなったことに対して親はどうするのかどうなるのか、それに対して社会はどうするのか、という映画です。
なにしろ石原さとみがとんでもない。普通の主婦に見える。さらにブスに見えるもん。態度も最悪。美保純演ずる母親とのやりとりなんて「ああー」と頭抱えました。他にもたくさん「ああー」はあるけど。
劇中のセリフにもあるように「気持ちはわかる」、しかし感情移入はできない。
「彼女がその名を知らない鳥たち」(白石和彌監督)の蒼井優を想起しましたが、イヤさ加減であれを超えてるかもしれない。
でも終盤近く、警察署に駆けつけるシーン、その後の錯乱、さらにその後のあるシーンでは石原さとみの覚悟が刺さって来ましたよ。
夫である橘、じゃなかった青木崇高の微妙な冷静さ。これもなんだか感情移入できるんだかできないんだか。この辺の匙加減がさすがは吉田監督。
唯一感情移入できそうなのがテレビ局の中村倫也ですが、「そうそうそうだよね」まではいたらない。自らを律する報道の理念と、そうは言っても滲み出てしまうものとの表現。
まあ、こんな感想では観る気にならないと思いますが(私もリピートはためらう)、観て。
吉田恵輔監督の映画には、いつでも最後にごくごく小さな希望というか光明がある。「空白」でもそうだった。これがこっちの救いになるんです。それが観たくて行ってるようなもんだ。
これも今年のベストに入ると思う。
ログインしてコメントを確認・投稿する