おいらは湘南新宿ラインで新宿に出るときは、浦和駅のホームの一番端に立つ。
そうすると、最後尾の車両に乗れる。
そうすると、新宿駅で降りるときにね、1番近い出口からさくっと東口に向かうことができる。
おいらは先週の金曜日もそうやって新宿駅に出た。
駅の電飾ポスターには相変わらず今期の新作が映し出されていた。
そりゃまあね、こないだこの駅に来たのはメモリアル花見のときだから、まだ1週間たってない。 そうそう簡単にポスターを取り変えたりはしないだろう。
で、お馴染みのアルタを眺めながら
紀伊国屋書店に立ち寄った。今はどんな本が売れてるのか見ておこうと思ってね。
そしたら、こんなノウハウ本が目についた。
パラパラッとめくったら、居酒屋の人らへの指南書みたいだった。
なので、おいらには用がない。
で、書店の横を突っ切って靖国通りに出た。
まだ11時半。映画の上映時刻は13時。いくらなんでも早すぎる。
足がけっこう疲れてる。家から駅まで歩いて、電車の中は立ちっぱなし。そこからまた歩いてきたんでね。
なので、久しぶりで行くお目当ての映画館が通りの向こうの方に見えるのを確認した後、その通り沿いにある喫茶店で一休みしようと思った。
どうせなら、かねてから目についていた店に入ろうと思った。
イタトマじゃないよ。隣の店だ。DUG。
ジャズ喫茶にしてはちとチャラチャラしてるけど、まあいい。
ブレンドコーヒーが一杯700円か。ちとお高いけど、まあいい。
で、地下に続く如何にもな階段を何歩か降りたところで、お店のおねえさんに言われた。
すみません、12時に開店なんです。
おいらは手を振って階段を戻った。
しかし、身体は珈琲を欲していた。珈琲舌というやつだ。
そしたら、向かい側にルノワールの看板が見えた。
いいじゃん、いいじゃん。
でも、外に貼ってあった値段表を見て萎えた。
ブレンド1杯がDUGより高い。
ジャズ喫茶ならいい。エヴァンスやらコルトレーンやらバードやらの奏でるメロディに身を委ねられるんだから。
でも、たかだかフカフカしたソファがあるだけの空間、魅力的な空間ではあるが、、しかし、そうは言ってもブレンドコーヒー1杯にこの値段は。。
そのとき思い出した。
ここは新宿、靖国通り、歌舞伎町まであと一歩の境界線だ。
そしたら、あの店があったはずだ。
おいらがコメダにこだわった理由は2つある。
一つは愛知大好きマイミクさんが推す愛知発の喫茶店チェーンだから。
そして、もうひとつはうちとこのカミさんだ。
彼女は珈琲が好きだ。
紅茶の方がもっと好きで、夫婦でむさしの森珈琲店に行って食後のお茶はどうするか聞かれると、おいらがカッフィーを頼む傍らでティーを所望するけど。
そうはいっても珈琲も好きで、カルディがブルマンを安売りしてると買ってきたりする。
その彼女がなにかで読んで、たしかにそうだと頷いたことがある。
アールのことだ。
なにかというと、唇が触れるコーヒーカップの縁はもっこりして分厚くなくてはならないという理屈。
ところが、今どきのコーヒーカップは薄いのが流行り。
皆さんも食器棚の中の食器類を見てみたらいいと思う。薄いのばっかりなんだよ。
うちとこもそうだった。これはおいらのコーヒーカップ。
で、彼女が懸命にネットサーフィンしたら、一つだけ分厚い系を見つけた。
それがコメダのコーヒーカップだったんだよ。
おいらはコメダの表札のある扉を開けた。
そしたら、らせん状の階段が目の前にあってのぼるようになっている。
お店はその階段の先にあった。
で、ウェイトレスさんに案内を乞うたら、お店の中にある階段を上がるように言われた。
なんだか変わった作りだなと思いながら階段を上がって2階のフロアに行ったら、そこにいたもう一人のお店の人に1番奥の席に案内された。
なんだか隔離されたようなアンバイだけど、奥まっていてほっとする空間でもあった。
おいらはテーブルの横に設置されたパネルを操作して、ブレンドをオーダーした。
ほどなくして珈琲が運ばれてきた。おお、これこれ。
美味い。やっぱり珈琲は分厚い縁のカップに限る。もちろん、中身のブレンドもコーヒーカップに相応しい上物だったよ。
付け合わせのお豆もグー。
おいらはそれらを味わいながら、のんびりと疲れた足を休めた。
そうやって癒されたおいらは、コメダを後にしてその日の本番の映画館に向かった。
これこれ、このなんだかよくわからないアニメ2本が今日のターゲットなのだ。
そして、また階段だ。
その階段の底にあるロビーの椅子においらのヲタク仲間がひとり座っていた。 通称、総帥。 そのアニメに関する知識はおいらのヲタ仲間の中で群を抜いている。 作戦計画立案と遂行力にも優れている。 だから、総帥なのだ。
「クラユカバ」と「クラメルカガリ」という意味不明のタイトルの2本の鑑賞およびその後の反省会もすべて総帥が仕切ってくれた。
タイトルだけでなく中身もおいらは何にも予備知識がなかった。
ただ、東京の上映館がここテアトル新宿と丸の内TOEIというだけでもタダ者ではない予感はあった。
テアトル・グループは他ではかからない通な作品を選んで上映する。
例えばこういう作品だ。
おいらはこいつを見に2010年6月にテアトル新宿に初めて行った。
で、「面白いよ、プランゼット」という日記をアップした。
なんでおいらがそんなに肩入れしたかというと、寺沢新吾が音楽を担当したからだ。
彼はおいらのマイミクの歌姫YACCOさんのオリジナル曲を何曲も作曲しているんだよ。
今後上映予定の映画も他ではあまり見られない作品だ。
そのテアトル新宿が只今上映中の「クラユカバ」と「クラメルカガリ」とはどのような作品なのか。
おいらは事前知識ゼロだった。
で、いろいろ知っていそうな総帥に何も教えないようお願いした。
で、最初の「クラユカバ」を見た。
いやあ、面白かったね。 あれで上映時間が61分しかないとは信じられない。
とんとん拍子に話が進むんだよ。
合言葉は「クラガリに曳かれるな」。
時代は大東亜戦争前っぽくて、場所は大日本帝国っぽいけど違うどこか。
クラガリと呼ばれる地下に潜ったのんべんだらりんな私立探偵を待つものは。
おいらは興奮状態でシアターをいったん出た。
ロビーで総帥に教えてもらったところでは原作・脚本・監督を一手にこなした塚原重義はこの「クラユカバ」が長編アニメ第1作めなんだって。
クラウドファンディングで集めた資金を元手に何年も何年もかけて作ったのがこの作品なんだそうだ。
まさにこのセリフそのもの。
「新しいものは、業界の端っこから生まれる」。
これはテアトル新宿のお隣の新宿ピカデリーで上映中のフランス映画の監督の言。
総帥はこれも一緒に見ようと目論んだけれど、上映時間の関係で出来なかったんだって。
それにしても、なんでこうもとんとん拍子に話が進むアニメが作れたのか。
それは主役の私立探偵の中の人の力にもよるようだ。
神田伯山?聞いたことねえな。新人の声優を抜擢したのかな。
あにはからんや、まったく違ってた。
総帥によると伯山の本業は講談師なんだって。
講談。。そりゃまた畑違いのところから引っ張ってきたもんだ。
おいらが知らねえのも無理ねえや。
自慢じゃないが、講談はいっぺんも聞いたことがねえ。
ちっとだけ縁があったのは湯島にある太郎って居酒屋だ。
前の会社のとあるグループがしょっちゅう使ってた店でね。
おいらも見知った顔が何人かいたもんだから、何回かその席に呼ばれたんだよ。
で、その店の階段のとこに講談のポスターが貼ってあったもんだからさ。
へえ、さすが湯島だ、粋な出し物のポスターを貼るもんだななんて思ってた。
で、さっき、ネットを検索してみたら驚いた。
酒席太郎の女将さんは故・一龍斎貞水師匠の奥様だってんだからね。
一龍斎貞水って言われても知らんけど、なんでも講談界の人間国宝だったそうだ。
得意の演目は「四谷怪談」。そりゃあもう真に迫る語り口だったんだと。
そんな人と同業の神田伯山が中の人ってんだから、「クラユカバ」が並みとは一味違う作品に仕上がったのもわかるってもんだ。
共演は本筋の声優だよ。エンドロールの中にひときわ輝く名前があった。
おいら「黒沢ともよってユーフォの彼女だよな」
総帥「うむ、黄前部長だ」
今期は第3期ものがやけに多い。
転スラ、このすば、無職転生にゆるきゃん△と来たもんだ。 いずれも見逃せない。
そういう中でも、黄前久美子が部長になった北宇治高校の吹部の行方はぜってえ見逃せない一作ってもんだ。 その黄前部長の中の人の黒沢ともよが出演してるんだよ。
神田伯山によると、黒沢ともよは本人も美人さんだそうだ。 それと伯山は舞台あいさつで一緒したこの人も推していた。 最近、水着の写真集を出したらしい。
芹澤優って言われても、おいらは知らない人だけど、探偵の助手の中の人だったようだ。
テアトル新宿のロビーに貼ってあったキャスト一覧に載ってた。
それよりも、なんで神田伯山が推してたことがわかるかというとだね。
彼はTBSラジオのディスクジョッキーもやってるんだよ。
問わず語りの神田伯山. 金曜日. 21:30 - 22:00. 講談界の風雲児・松之丞改メ、神田伯山のレギュラーラジオ番組!
後日、総帥に教えてもらって聞いてみたんだけどさ。
面白かったねえ。 ギャハハ!ってなもんだったよ。
ということで1曲いってみようか。
「クラユカバ」の挿入歌に使われていた歌。実にマッチしてたよ。
煌めく星座 灰田勝彦
https://www.youtube.com/watch?v=sexDO9XLswA&pp=ygUc54WM44KB44GP5pif5bqnIOeBsOeUsOWLneW9pg%3D%3D
そんなんで、おいらはすっかり調子づいちまってね。
「クラユカバ」と同じ世界観の「クラメルカガリ」も楽しく見れた。
これまた、とんとん拍子で話が進む。
主役の中の人は知らない声優さんだったけど。
これまた、エンドロールにでっかいネームを見つけた。
ターニャ・デグレチャフ少佐だ。
いやあ、満足の2時間だったよ。
いるもんだねえ、これまで世間に知られてなかった才能ってのが。
ちょうどあれだ、 2002年に新海誠が「ほしのこえ」を発表したときだ。
おいらはそれには立ち会えなかったんだけど、3作目の「秒速5センチメートル」を見る機会があってぶっとんだ。 次に遡って2作目の「雲の向こう、約束の場所」を見るに及んで、この才能はパねえと思った。
いずれは塚原重義の名前も世間一般で認知される日が来ると思うよ。
それはそれとして講談だ。 なにか探して見に行ってみよう。
俺らは深く満足してテアトル新宿を後にした。
目指すは西武PEPEの向こうに見えるビル。
そこにあるネコ型ロボットが活躍する中華料理屋で
飲んで
食って
ダベッた。
どんなことをダベッたかというと、さっき見てきた作品のほか、今期の注目作などなど。
あと、おいらがこのデザートの一品はスペイン料理に違いないと声高に言ったりした。
浦和の名店シェフ・デ・ブッチョでも同じものを食したことがあったもんだからさ。
で、店を出たら、お空はまだ青かった。
浦和駅に着いたら、そこの電飾ポスターにも今期の新作が映っていた。
そんなことで〆る。
〆の歌は春日八郎。
なんかね、このいなせな感じがね、レトロだけどそれだけじゃない塚原アニメに似合う気がするんだよ。
お富さん
https://www.youtube.com/watch?v=zVpdiCVzIJI&pp=ygUM44GK5a-M44GV44KT
そして次の曲が始まるのです。
ログインしてコメントを確認・投稿する