カッターを探すために机の引き出しをゴソゴソとやってたら、隅の方から昔のアドレス帳が出て来た。中を見るとどうやら1995年あたりまで使ってたもののようだ。「ア行」の最初が大学時代の友達の名前だったので大学時代から使い始めたものらしい。結構ぎっしりと名前と住所と電話番号が並んでいる。なにせ30年くらい見てないものだから、懐かしい名前ばかりでめまいがする。このアドレス帳によって思い出した人も多い。今はここに載ってる人達全員と全く縁が無い。だから彼らが今何をしてるのかも全く知らない。住所も電話番号もみんなそれぞれ変わっているだろう。
今どきはネット検索などを駆使すればたいていの人と連絡がつくようになるだろうが、かつてはアドレス帳に載ってる電話番号と住所がすべてだったので、これが無いと居所がつかめなかった。だもんで、引っ越したらそれで関係が終わりっていうことも何度もあった。人間関係がどんどん変わっていく時期にはそれも普通のことだ。
この昔のアドレス帳に載ってる人の名前をネットで検索すれば、それぞれみんな今何をしてるか分かるかもしれないが、検索しようとは思わない。このまま行方不明としておいたほうがなんとなくいい気がする。なんか「その後」というのを知らない方がいい気がするのだ。小説を読んでて、最後に主人公たちの「その後」が書かれているものがあったりするけど、僕はそういうのがとにかく嫌いで、そこで一気に白けてしまい、つまらない思いをする。それと似たようなことだ。いや違うか。とりあえず、あの時代の彼らはあの時代にだけ生きているってことにしておこう。
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