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2023年09月28日19:16

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ミシェル・ペイヴァー『聖なるワニの棺』

・『神々と戦士たち』シリーズ IV 『聖なるワニの棺』

ミシェル・ペイヴァー著、中谷友紀子訳
あすなろ書房

『神々と戦士たち』シリーズ第4作で、舞台はエジプトへ。前回、テラモンも来ると予想していましたが、当然来てました。それも物語冒頭から(爆)。

ミケーネの命運を握る青銅の短剣が、ピラのお付きのエジプト人奴隷ユセレフによって彼の故郷に持ち込まれたことを知り、叔母さんのアレクトとともに追跡してきたのです。前回テラモンは叔父クレオンと同行していましたから、この時点である程度展開は読めるのですが、それがどのように実現するかが問題。

ヒュラスとピラは、テラモンとアレクトたちカラス族だけでなく、カバ、ワニ、サソリなど自然の脅威が待ち構えるナイル川河口に入っていくことになります。大変じゃあf^^;。二人の助けになるのは、おなじみ雌ライオンのハボックとハヤブサのエコーに、ワワト人の逃亡奴隷の少年ケム。彼らのお陰で、ピンチの数々をなんとか切り抜けますが、テラモンも馬鹿ではなく、次第に網は絞られていきます。

そして、ヒュラスはユセレフの魂を救い、短剣を手に入れるために、ワニの棺に入って墓の中を探ることになります。これって、神話でいう「冥界下り」でしょう。このあたり、職人たちによるミイラ作りや死者の埋葬、死生観などがリアリティーを持って描かれています。この物語の時代つまり紀元前1500年ごろは、エジプトの第18王朝期とのことで、有名なツタンカーメンたちが生きていた時代と重なっています(ファラオの登場はないけど)。ライオンとハヤブサは、エジプトでは神を象徴する生き物だし。いろいろ勉強になるなあf^^;。

ヒュラスは、第1巻で女神にこめかみを突かれ(たような気がした?)て以来、幽霊や神の姿など超自然的な幻視が兆すようになり、今回は彼の生死を分ける場面でそれが現れます。ヒュラスは肝心なときに幻を見て無防備に突っ立ってしまうことに恐れを抱きますが、おそらくはこの能力が最後に物を言いそう。物語は「戦いの兆し」の章で締めくくられており、最終第5巻でのクライマックスを予感させます。逆に、もう終わり?という寂しさも。ヒュラスとピラが、お互いを意識してぎこちない会話になったりして「くっそー!」って感じで、やきもきできるのもあと少しだよ(爆)。

ではでは、この辺で名前考察コーナーf^^;。といっても今回はエジプト編だったから、ギリシア神話との絡みは少ない。テラモンの叔母アレクト、長母音表記ではアレクトーは、ギリシア神話の復讐の三女神エリーニュスの一人です。あとの二人はテイシポネーとメガイラ。エリーニュスたちは、ウーラノスの男根がクロノスによって断ち切られたとき、その血の滴りから生まれたとされます。すなわちゼウスよりも古く、テーバイ神話では母殺しのオレステースを追い回して狂わせる、恐ろしい存在です。物語のアレクトもそれを反映してか、サイコパス的人物として描かれています。
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