福島第一原発事故の収束作業は、東電・政府の発表とは裏腹に、実際は、遅々として進んでいないと断言していいと思っています。にもかかわらず、東電・政府は、「工程表」の「ステップ1」の目標が達成されたと言い、「新工程表」なるものを発表しました。
こうした欺瞞、情報の改ざんは、東電にとってはお手のものやり方も洗練されています。その理由は、ずっとやってきたからです。原子力発電に関する情報、データは、形式上、東電から国 (管轄省庁である経済産業省)への報告義務があります。
たとえば、定期検査の作業報告も、報告書を提出しますが、この作業報告書には、報告用の表バージョンと、自分たちが実際の状況を把握しておくための裏バージョンが存在します。いわば、二重帳簿です。
これは、現場で働いている人間も含め、原発では"常識だといいます。 現場の人間が作成した裏バージョンの報告書が、そのまま国へ報告されるなんて、あり得ません。東電にとって、国への報告書は、あくまで方便です。
事実は、自分たちだけわかっていればいい。正確に報告したとしても、誰がわかるのです。こうして原発は、一種の「ブラックボックス」状態になっていきました。巨大ブラックボックスの中に小さなブラックボックスがさらに言えば、下請けメーカーが東電に出す報告書にも裏と表が存在します。
現場の方も報告書の作成がわずらわしくなった時、「どうせ、上が改ざん、作文するのだから、適当でもいいじゃないか」とすら思ったことがあるといいます。情報改ざんは、原発の隅々にまで浸透しているのです。
東電とメーカーが共有している「本当のこと」もあれば、メーカーだけが把握している「本当のこと」もあるのです。東電は、「原発のことは、自分たちがわかっていればいい」、メーカーは、「この作業については、自分たちだけがわかっていればいい」のです。
大きなブラックボックスの中に、小さなブラックボックスがいくつも存在する状態と言ってもいいでしょう。そして、東電は、この小さなブラックボックスの存在を知っています。「そこは、任せるから、しっかり管理してくれよ」というわけです。
新規参入者が入ってこない産業構造にありがちな、もたれ合い、なれ合いの構図だとも言えます。こうした構図の中では、大きく評価されるべきリスクが小さく評価されていきます。それが、事故の背景として横たわっていることは言うまでもありません。
さらには、進化も生まれづらくなります。福島第一原発事故の収束作業についての「工程表」は民に対しての「表の報告書」。すなわち、方便です。そして、そのことが示すのは、東電は、「福島第一」もブラックボックス状態にしようとしているということです。
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