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2023年08月05日23:55

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7月の。

7月に観たのは『タイフーン・シェルター』。

●『タイフーン・シェルター』
 1997年6月末の香港。根無し草のバックパッカー。写真を撮りまくる旅人。水上生活の姉妹。香港脱出を夢見る飯屋のおっさん。などなど市井の人々の何も変わらぬ凪いだ日常が流れてゆく中、静かに中国返還へのカウントダウンは進んでゆく……。
 明確でドラマチックなストーリィはなく、香港て云う『ひとつの世界』に漂うヒトビトの呼吸をそっと掬い取った感じかな。『何かの役を演技して居る』て云うより『香港の街に放した役者たちを勝手に撮影して、モノローグを被せました』的な手触り。まぁ緒川たまきだけはちょとPVぽかったけど。
 シェルターの凪いだ海上にゆらゆら揺れる船に住まう、若い姉妹のゆらゆら揺れる不安定な足場。返還で何が変わるのか、そして変わらないのか。この生活はどうなるのか。変化を無邪気に夢見る妹。変化を嫌がり「変わるな」と祈る姉。彼女らが、当時の香港を象徴するこの映画の『芯』なのかもね。
 紫、セピア、モノクロとゆるゆる切り替わる色彩もその不安定さを表して居るように思えたのだけどでもアレ、古いVHSテープだったから色彩が劣化してるだけだったらどうしよう。違うと思うけど。
 そしてこの街での人生が存在する住民の間をふらふらと歩く根無し草の浅野忠信。一瞬『壊れた心』の彼なんかを彷彿とさせるけどでも此処の彼はただただ無邪気で自由。普通の映画なら『彼の目を通した香港』的になると思うけどこの映画では彼は其処に居るだけ。何の装置も担わない、生きた人間として。
 時代の転換期には、不安や浮遊感と共に変化を都合よく考え願い、『変わって欲しいコトは変わる』『変わって欲しくないコトは変わらない』そう思いがちよね。現実はそんな都合よく行かないけど。コレはそんな願いと期待の交錯する1997年6月末の香港の『今、此処』だけを切り取った映画かな。
 僕らは香港返還後の26年間を知って仕舞って居るから。この映画も当時観るのと今観るのとじゃ全く印象が違うよね多分。映画の前説的な、実在の香港住人へのインタビュー映像も収録されて居てね。「返還されても何も変わらない」「ここが好き」と笑う人々。香港の未来を信じる眼差しが……胸に来る。
 あ。一番好きだったシィンは「炒飯旨いか?」「マズかったら看板やるよ」とか現地語でまくし立てる店のおっちゃんに、炒飯をかっ込みつつ適当な笑顔で頷きながら「……何云ってっか判んねー」て呟き、おっちゃんが満足して立ち去ったアトも喰い続けてむせる、飄々とその場に存在する浅野忠信でした。

●●●
 これも古いVHSから掘り出した映画でした。
 今となっては割と貴重かも知れないのかも知れない。
 知らんけどディスクとかなさげな気がするし。
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