企業の上層部が変わらないかぎり、真のデジタル化は難しいと思います。といっても、役員たちが今すぐフェイスブックやツイッターを始めたり、YouTubeチャンネルを開設したりすべきとか、そういうことを言っているのではありません。
もちろん、そういうことをやってみたいという意欲があるのなら、どんどん挑戦してみたほうがいいと思います。ただ、デジタル化以前の常識がからだに染みついている60代以上の役員たちが、いきなり若者と同じようなことをいわれても対応できないだろうし、快適さを享受するどころか、逆にストレスになりかねません。
傍からも痛々しく見えてしまいます。自分にはデジタルのことはわからないという人は、無理にわかろうとせず、それを理解し使いこなしている若者の言葉に耳を傾けるようにするのが、正解だと思います。
20代の社員を集めて、「SNSで自社のファンを増やすいい方法を考えてほしい」と課題を与えれば、すぐにいくつも挙がってくるでしょう。そこで、「LINE公式アカウントを開設して、クーポンを配信する」という提案があったとします。
それがどんなもので、本当に効果があるのかよくわからなくても、デジタルのことはデジタルネイティブの彼らのほうが詳しいのだからと腹を決めて、任せてみるのです。あるいは、SEO対策の提案が、外部のIT事業者から持ち込まれたとしましょう。
ところが企画書を見ると、検索順位を上げるのに数千万円もの費用がかかることになっています。そんなわけのわからないものにお金を使うくらいなら、テレビのスポットCMの量を増やしたほうがいいと、検討すらしなかったかもしれません。
それを、20代の社員をデジタル事業の責任者にして、彼が意思決定に参加できるような組織に変えるのです。このように、デジタル化とその活用に関しては、それがよくわかっている若者に権限を移譲していくのが、最も賢明なやり方だといっていいと思います。
もちろん、20代や30代の社長なら、どんな業種であれ、今後ITは避けられない経営課題になりますから、教室に通ってデジタルの基礎を勉強し、簡単なプログラムくらい自分で書けるようにしておくくらいのことは、やっておいたほうがいいと思います。
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