猫をモチーフにしたイラストで人気を集めたイギリスの画家ルイス・ウェインの生涯を、ベネディクト・カンバーバッチ主演で描いた伝記映画。
イギリスの上流階級に生まれたルイスは早くに父を亡くし、一家を支えるためイラストレーターとして働くように。やがて妹の家庭教師エミリーと恋に落ちた彼は、周囲から身分違いと猛反対されながらも彼女と結婚。しかしエミリーは、末期ガンを宣告されてしまう。そんな中、ルイスは庭に迷い込んできた子猫にピーターと名づけ、エミリーのために子猫の絵を描き始める。
「ファースト・マン」のクレア・フォイが妻エミリーを演じ、「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマンがナレーションを担当。俳優・監督として活躍するウィル・シャープがメガホンをとり、「ある公爵夫人の生涯」のマイケル・オコナーが衣装を手がけた。(映画.comより)
<2023年1月3日 劇場鑑賞>
ルイス・ウェインのネコ画を知りませんでした。日本では、夏目漱石に影響を与えたネコ画として知られているのだそうですね。でも、この映画は、彼の人生を独特な視点で描いている作品であって、猫画がクローズアップされたり、詳しく映されたりすることはありません。映画が終わっても「結局、どういう絵を描いていたっけ」と思うくらいです。
バッチさん演じるルイスは、上流階級の家柄に生まれました。しかしながら、いくら生まれが良くても、当時の女性は就職するという観念がなく、上流階級の女性ほど、いい男を見つけてさっさと結婚することが良しとされていました。むしろ、そうでないといけなかったのです。女ばかりの家に生まれ、たった一人の男であったルイスは、父親が早死にした後は、家族を一人で養う義務を負い、たくさん稼ぐことを期待されます。しかし、このルイスと言う男、変人で、絵を描く才能はあったのでしょうが、ありとあらゆることに挑んでは失敗し、また挑む、それも「作曲にチャレンジする」とか、荒唐無稽なことばかりに挑むのです。そんなことで食えるはずはありません。家はどんどん貧乏に。賢いと思われる姉も、お金がないから怒ってばかりです。かわいそうに。彼女が今の女性のようにまともに働けたなら、きっと成功してたくさん稼いでいたに違いありません。
そんななかでも、やはり家柄がいいので妹たちに家庭教師もつけなければなりません。お金もないのですが、ともかく家庭教師を雇います。やって来たのがエミリーです。当時は、婚期を逃した身分の低い女性がなるとされていた家庭教師。エミリーも、実際ルイスよりも10歳くらい年上だったようです。でも、ルイスは彼女に恋をするのです。身分違いの恋はかなりのバッシングを受けますが、変人ルイスは意に介しません。エミリーとの結婚を強行してしまいます。
この映画の原題は「The Electrical Life of Louis Wain」。なんで” Electrical Life ”なのか、不思議に思っていたのですが、ルイスは、世の中の出来事はすべて電気に支配されていると固く信じていたようですね。何かが起きても、うまく電気が働いたからだ、とか。少し言動が理解しづらい人だったようで、私も何を言っているのかあんまり理解できませんでした。すべてこんな感じなので、絵がせっかく話題になっても、それで稼ぐことができないんです。姉、怒りっぱなし。それでも、妻とは仲良く暮らしていたのですが、妻は病気のため数年で亡くなってしまいます。気落ちしたルイス、その後はどんどん精神不安定に。でも、生前の彼女と一緒にかわいがった猫の絵を描くことで、なんとか妻との思い出の中で生きることができます。妻は生前「描き続けてね」と言ってました。彼が描かなくなったらおしまいだと、よくわかっていたのでしょう。ルイスのエキセントリックなネコ画は、かなり評判になるのですが、本人はそんなこと認識していなかったようです。
彼のネコ画はかなり変遷してゆきます。私のような素人は、ちょっと怖い感じがするのですが、最終的に、彼は精神病院に入院し、人生を終えるまでそこにいたようです。たった一人ですべてを背負わなければならなかった男と、才能があっても働くすべを持たなかった女たち。当時の上流社会のひずみが怖いと思いました。結局、ルイスの姉妹たちは、皆、未婚で生涯を終えたのだそうです。皆で仲良く最後まで暮らせたら、それはそれでアリだとは思いますが、当時の社会の偏見も怖いと思いました。
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