mixiユーザー(id:330483)

2022年12月14日13:15

16 view

『THE FIRST SLAM DUNK』再見

『THE FIRST SLAM DUNK』再見。
 
 
やはりしびれるほどの傑作。前回は、原作もアニメも知らない完全初見だったため、よく分からない部分やキャラの判別がつきにくい部分があったが、今回は映画で描かれていない部分なども勉強してきたため、前回の疑問点や誤解がだいぶ解消した。
ただ回想シーンにおいては、あまり丁寧な説明が無いショットも多いため、いまだにはっきりしていない部分もある。後半の回想で、宮城家で倒れた人物はリョータ?それとも父親? 話の流れからすれば父親なのだが、後ろ姿(髪型)はリョータそのもの。そういった細かい謎はまだ多い。
 
ただこの作品、当たり前と言えば当たり前だが、原作を知っているかどうか以上に、バスケットボールについてどれだけ詳しいかで、グンと楽しみ方が違うのではと思えてきた。
もちろん、昔アメフトのルールについて何も知らずに見た『ロンゲスト・ヤード』に魂が震えるほどの感動をしたのと同様、本作もバスケットについてあまり知らなくても十分に楽しめる。とは言え、正確なルールや試合運びの定石、各選手の役割について理解していたら、試合シーンの緊張感はさらに増したことだろう。私は中学高校時代の体育でやらされただけなので、ざっくりとは覚えているが、細かいルールなどは忘れていた。と言うか、恐ろしくスピードを要求されるくせに、ルールが馬鹿馬鹿しいほど細かくて、それが面倒くさいから嫌いだったことを、見ている内に思い出した。○秒ルールとか真剣にうざいわ(笑)。
見ていて特によく分からなかったのは、まず点数の入り方。麻雀じゃあるまいし、同じゴールでも入れ方によって点数が違うとか何なんだ。ゴールは常に1点というサッカーのシンプルさを見習え。あとは各選手の役割。学校の体育でやるレベルでは、あんな明確なポジション分けは無かったはず。ある程度メジャーなスポーツで、これほどルールが細かくて分かりにくいものは他に無いのでは。もう一度見られるなら、次は基本ルールの復習をしてから見るとしよう。
 
 
まあ、それはいい。今回見て、なぜ本作がこれほど映画として魅力的なのか、その秘密の一端が分かった。それは「時間感覚」だ。これほどまでに時間感覚がドラマチックに変容する映画はなかなかあるものではない。
分かりやすく言えば、劇中で数秒〜数十秒の時間に膨大な情報量が流れることで、通常の時間感覚が打ち砕かれるのだ。つまり普段は体験できない特異な時間の流れを体験できるということ。こういう映画は、そうそう無い。
アクションのクライマックスをスローモーションにするといった演出や、さまざまなは特に珍しくも無いが、そのほとんどは「時間が短すぎて何が起きたのか分からないのでスローにしている」というだけで、そこに含まれる情報量は、たとえば10秒のシーンならほぼ10秒分のものだ。
ところがこの映画は10秒のシーンに膨大な情報量が詰め込まれていて、それを観客にしっかりと体感させる。1人の選手だけでも異常にスピーディーな動きと思考で膨大な情報量があるのに、何人もの選手の動きと感情が動的に描き込まれることで、10秒の劇内時間に何十秒、何分もの情報量が凝縮される。その時間感覚の変容がもたらす快感!
これはやはりバスケットというスポーツならではだろう。野球でもボクシングでも徒競走でも、競技の性質上、こういう情報と時間の流れにはなりえない(強いて言えばサッカーやフットボールは近い)。また、それを実写で描く(=カメラで捉える)ことはまず不可能。アニメだからこそできる表現だ。
時間の変容と周りの空間に対する認知能力の拡大…その感覚は、行為としては真逆に位置する座禅で感じられる世界に似ている。このような感覚を映画の観賞という行為で得られることは滅多に無い。それをスポーツアニメという形式でやってのけたことが、本作の大きな魅力と言っていいだろう。
その点に着目すると、試合のシーンを軸にしながら、回想形式が入ってくる構成や、回想シーンの中でもかなり自由に時間を行き来することが、時間感覚の変容に一層拍車をかけていることが分かる。
 
と言うわけで、1回目では、ドラマ的な部分やアニメーションの動きに心を奪われた『THE FIRST SLAM DUNK』だが、2回見ると、「時間の映画」として際だった作品であることが分かった。映画の表現として本当に奥深く、刺激的だ。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年12月>
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

最近の日記

もっと見る