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2022年10月28日19:20

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【水墨画】映画『線は、僕を描く』

 
10月27日(木)、大和郡山にて鑑賞。204席のシアターに観客7人。
上映2時間前に席を予約した私が一番乗りだったから、不入りは予想していた。

指定席に座ると、あいにくシートがヘタっていたので、私は右隣の席に移った。
すると、上映開始直前にやってきた初老の男性が、私の右隣の席を買っていた。
劇場はスカスカなのに! なぜ他人と近い席を買う!? これが噂のトナラー?

驚いたし気味悪かったので、「私が離れます!」と慌てて2列後ろの席に移った。
すると、そのおじいも席を立ち、わざわざ「私の斜め前の席」に詰めてきた。
何度もチラチラ、私の方を振り向いてくる。何この人…気持ち悪い…。

でも、「列がひとつ違う」から手出しはしにくかろう。無視すると決めた。

そんなトラブルはあったが、本編が面白かったので、おじいの存在は忘れた。笑


公式 https://senboku-movie.jp
予告 https://youtu.be/ej7ybPRvq1A



横浜流星が演じる霜介の超ドアップで幕が開く。画面に映っているのは顔だけ。
据えたカメラは霜介の表情の微妙な変化を撮り続ける。彼は何かを見つめている。
対象は観客に分からない。彼がそれに心を掴まれ、揺さぶられているのは見える。
悲しみ・切なさ・やるせなさ・優しさ・後悔…複雑な感情が涙になり滲んでくる。

何秒くらいか忘れたが、長かった気がする。こんな大胆なカットは滅多に見ない。
観客を引き込み静かなカットを持たせた、横浜の繊細な演技力は素晴らしかった。

霜介が釘付けになっていたのは紅白の椿を描いた水墨画。優しい佇まいの作品だ。
(後に判明するが、土石流で自宅ごと流された、彼の優しい妹の名が「つばき」)

そんな彼に突然声をかける老人が。水墨画の大家・篠田湖山(三浦友和)だ。

…こんな調子で書くとキリがないので、続きはネタバレあらすじに預けよう。爆

 ネタバレあらすじ
 https://cinemarche.net/drama/senha-bokuwoegaku-ito/
 https://hm-hm.net/drama/線は、僕を描く



湖山の揮毫は見事だった。巨大な白紙に対峙し、下書きなしで一気に描き上げる。
途中で紙から離れて全体のバランスを見直さないのに、構図の均整は取れていた。
湖山の一番弟子・西濱湖峰(江口洋介)が代理で龍を描き上げた時も同様だった。
(最後に龍の黒目を入れるところを見て「ああ、これが画竜点睛だ」と思った)

大筆書道パフォーマンスはTVで何度か観たことがあるが、あれらは荒っぽい芸だ。
水墨画で湖山みたいなパフォーマンスができるのかな?と思い、調べてみた。


 小林東雲(本作の墨絵監修) 実演 https://youtu.be/7dUmw4BJ01g
 


やはり、実際は紙と距離を取って確認しながら、徐々に描き進めていくようだ。
それにしても、この動画はBGMが古臭くて、ちっとも気分が盛り上がらない。
この点、映画は見せ方がうまかったなと感心した。



ちなみに、「下絵を描かない」のは現代中国水墨画の特徴らしい。
 http://www.katsurano.com/saikatop.html

長谷川等伯の傑作『松林図屏風』は、なんと「下絵が国宝」だと知って驚いた。
 https://sui-boku.com/tohaku https://youtu.be/SsLYYj5-mkA
 

 国宝・長谷川等伯《松林図屏風》解説 https://youtu.be/d8SH4RdUT5Y
 長谷川等伯「松林図」から学ぶ"美"の真髄 https://youtu.be/xJhxakkuyW4


画材屋のQ&Aに「木炭は、水墨画の作画のために画仙紙に下絵を描くときに使う」
「練りゴムで簡単に消せる」とある。https://suibokugaya.ocnk.net/page/26

国際墨画会のブログでは「スケッチ→下絵→水墨画」の制作過程を紹介していた。
 https://sumi-e.or.jp/infomation/?p=10641




動画といえば、霜介が初めて湖山に教わった「春蘭」の手ほどき動画も見つけた。
 


湖山は黙って描いたが、この動画は親切だ。 https://youtu.be/xjjBvtTput4

けれど、なぜだろう。映画で見たときの方が「水墨画やってみたい…」と思った。


霜介は一心不乱に春蘭を描き続けていた。子供のように純粋な面差しで。
横浜は、この作品の撮影が始まる1年前から墨と筆を操る術を学んできたという。
 https://i-voce.jp/feed/1970551/

今年9月のTGCで、横浜と清原は、水墨画監修を担当した小林東雲(↑に動画あり)と
共に、映画の世界観さながらに水墨画を描く生パフォーマンスを披露した。
横浜が【竹】、清原が【梅】、東雲先生が【松】と全体を描いたとのこと。

 https://natalie.mu/eiga/news/492320 (作品の画像あり)

『線は、僕を描く』は言い得て妙。 絵や書のタッチには作者の内面が滲み出る。




今まで知らなかっただけで、水墨画関連の動画はたくさんあることに気づいた。

どれも分かりやすくて面白い。特に、和雑貨屋つらら庵さんの解説は神だ。

 「墨のすり方」 https://youtu.be/JXfQJsIC92M
 「線の描き方」 https://youtu.be/wCXEqcQF-p8


湖山先生のように何も教えず、際限なく「やり直し(微笑)」させる指導法では
Z世代がついてくる訳ない。「原液はゲルくらい濃く」とか指示しなきゃ。笑



最後に、映画を観た人たちが褒めているエンドロールの美しさについて。

クレジットの両側に水墨画の花々が湧き上がるように次々と描かれていく演出だ。

とてもロマンチックで素敵な趣向。デジタル処理と古典技法の融合が巧みだった。

ただ、こういう趣向って昔からCMで時々あったよね、と私は思った。
何のCM?と考えると思い出せないが、いろんな作品を見てきたように記憶する。




https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5399103


水墨画が好き・水墨画を描くところを見たい人(つまり私w)には超お勧めの作品。
「こうやって描くのか!」「こんな道具を使ってるんだ!」「1本の筆に3種類の濃度を含ませているとは!」「適正濃度の墨は濃い!」と発見だらけ。興奮した。

特に、スリリングな揮毫会のシーンは必見。畳何枚分もあるサイズの和紙と対峙し、全身全霊、一気呵成に意味深い世界を表現する。画家というよりアスリート、表現という観点では筆と一体化したダンサーのようでもある。プロ作家を演じた三浦友和、江口洋介、清原果耶は相当なトレーニングを積んだと思う。主演の横浜流星も繊細な演技と体の使い方が良かった。

展示作品もさまざまなテイストがあり素晴らしかった。
特に、最初の優しい椿(千瑛作)と最後のモードな椿(霜介作)は好対照で良かった。

四季賞審査委員役の富田靖子は貫禄たっぷり、存在感があった。

この作品は「水墨画の世界を紹介する」ことがメインで、物語は「見せ場へと誘うための書き割り」に過ぎないと私は思う。1930年代のミュージカル映画と同じだから、「見て楽しむ」のがお約束。内容に突っ込み出したらキリがない。笑



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Filmarks レビュー https://filmarks.com/movies/102351
映画.com レビュー https://eiga.com/movie/96862/


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