9月7日、シネリーブル梅田にて鑑賞。観客は20人弱。
抱き合わせで観た『WILD STYLE』で睡眠を補い(笑)、じっくり鑑賞できた。
公式
https://swansong-movie.jp https://youtu.be/WdqCoYLQzcM
アメリカ版予告編はBGMが違って渋い。
https://youtu.be/heN0JtJu4pE
昔から息子に頼んである。「私の死化粧はプロに頼んでほしい」と。
20年前、病院から引き取ってきた母は、実にお粗末な死化粧をされていた。
その死顔は情けない顔つきが露呈していた。(映画でもリタの死顔は情けなかった)
母は、数年間の闘病生活を近所に隠し通したほど、プライドが高い女だった。
こんな有様を弔問客に見られたら死んでも死に切れないだろうと思った私は、
咄嗟にメイク道具をかき集め、死顔にフルメイクを施し、髪もマスカラで染めた。
父は「こんな時に何しとるんや!」と怒ったが、無視して作業を続けた。
僧侶が来て開口一番「綺麗な仏様ですね」と仰った瞬間、父の機嫌は直った。笑
綺麗な戒名をつけて頂き、顔周りを花で埋められた棺の母を父は記念撮影していた。
私はあのときに「女は死んでも見た目が大事!」と痛感した。
以下、ネタバレを気にせず書いていく。(日が経って詳細を忘れてしまったが…)
グレーのジャージを着たパットは「不機嫌な不良老人」だった。背もたれの枕位置さえ自由にできない老人ホーム。彼はナプキン畳みと隠れタバコ(マルボロ)で退屈な日々の憂さを晴らすしかなかった。
ある日、街一番の名士リタの代理人弁護士がパットを訪ねてくる。リタはかつてパットの顧客かつ友人だったが、ずいぶん前に仲違いしたようだ。弁護士は「リタは『死化粧をパットに頼みたい』と遺言を残した。葬式までにやってほしい。報酬は2万5千ドル」と依頼するも、パットは即座に跳ねつけた。「もう引退した」「ボサボサ髪で葬ればいい」
強い言葉で弁護士を追い返したものの、パットは内心迷っていた。自分の腕は衰えていないか、認知症のタバコ友達で試してみた。山姥頭で車椅子に座っているだけの老女が、髪を結うと驚くほど美しくなった。(なのに粗相してしまう様子が哀れ)
できる、と確信したパットは、有り金をかき集めて老人ホームを飛び出す。
ヒッチハイクで街へ行こうとするパットを拾ってくれたのは年配女性の軽トラだった。
道すがら、パットは亡き恋人デヴィッドとの思い出話を彼女に語る。そして、恋人が眠る場所で車を降りると、2人の名が刻まれた墓石を抱えて号泣する。
その後、パットが立ち寄ったのはよろず屋。古い銘柄の女性向きタバコ(MORE)とスクラッチくじを政府小切手(生活保護支給)で買うが、プライドは示した。
「More」は峰不二子が愛飲するタバコ。パットの指輪は左小指に1つだけ。
次にパットが立ち寄ったのは、馴染みの化粧品店。今は黒人の美容院になっていた。
珍客に驚いた女たちは、率直で愛嬌があるパットを気に入り、親切にしてくれる。
日除けにもらったピンクの帽子を被り、洒落たポーズを決めて皆を笑わせるパット。
彼は店を出るなり要らない色の花飾りを捨てた。鋭敏な美意識が垣間見えた。
ピンクの帽子でポーズを決めた時、パットの指輪は2つだった。
長縄跳びで遊ぶ女児たちが、綺麗な帽子をかぶったパットを仲間に引き入れる。
楽しそうに縄を飛ぶパットは、老人ホームにいた時とは別人のように明るかった。
それから、パットはかつて住んでいた家を訪ねた。土地は更地になっており、今は若い夫婦が所有していた。「ここに住んでいたの」「家を潰す時、何か残っていなかった?」と若夫婦に尋ねると、古い帽子が一個だけあった、と差し出される。「恋人が死んだ時、遺言を残していなかったの。それで、財産は全て彼の甥に取られてしまった」と肩を落とすパット。同情した若奥さんは、パットにランチを持たせてくれた。
パットはリタの弁護士に会い、依頼を引き受けるから材料費を前借りしたいと頼む。
弁護士からせしめた20ドルをすぐにワインとチップで豪快に使い切るパット。笑
材料はスーパーで万引きしたが、古風なスプレーだけは手に入らなかった。
上顧客たちを根こそぎ奪ったかつての弟子、ディーディーの店にパットは乗り込んだ。
欲しいヘアスプレーはこの店にしかないと教わったため、渋々来た。顔を見るのも嫌だから、スプレーを盗って逃げようとしたところにディーディーが登場。「おやまあ…スポーティーな格好で」と落ちぶれた姿を小馬鹿にされ、万引き現場を押さえられても、「リタの死化粧を依頼されたから、これが必要なの」と一歩も引かないパット。
口喧嘩の末、「今どきは環境に悪いスプレーを使わないの。いいわ。それはあげる」と言われ、ムカつきながらも得る物は得るパットはしたたかだ。
帽子のかぶりこなし方がとても粋。すっかり自分のファッションにしている。
パットは街のブティックに入った。商品を物色していると、店員が声をかけてきた。
「あなたは私をブロンドにしたわ」
「まさかと思ったけど指輪を見て確信した。誰が街の名物男を忘れるものですか」
このシーン、大好き!!
https://youtu.be/5EZ0sOLRB4c
この時、パットの両手はほぼ満艦飾になっていることに注目。笑
目をつけていたスカーフを素早く首に巻くパットの抜け目なさが笑える。
パーカの胸につけていた緑系の花飾り(元はピンク帽子の付属品)を黒い帽子に付け替え、スーツとリンクコーデにしたのもお見事。
ただ、足元だけが残念…というのは、ラストへの重要伏線になっている。
身なりを整えたパットは、古巣のゲイバー「ザ・ユニバーサル・フルーツ・アンド・ナッツ・カンパニー」(本作のモデルであるパトリック・ピッツェンバーガーが踊っていた実在の店)に立ち寄った。若い兄ちゃんが「ここはもうすぐ閉店なのよ」と教える。「今はSNSで出会いがあるから、こういう店はもう流行らなくて」
パットはリタの家にやってきた。孫息子ダスティンと対面し、死化粧を請け負うと伝えたが、リタの家で幻影を見るとパニックになり、突然逃げ出してしまう。
メイク道具が入ったリュックもタクシーの窓から投げ捨てるほど混乱していた。
パットは、ゲイ仲間のユーニスがいつも網を張っていた公衆便所を訪れる。
「パット、お前まだ生きていたのか!笑」「悪いことは全部お前に教わったよ。笑」
軽口を叩き合いながら旧交を温める2人。並んでベンチに座り、養子と遊ぶゲイカップルを眺めて「自分たちの時代には考えられなかったなぁ」としみじみする。
が、これらもパットの幻想で、ユーニスは1994年に死んでいたと分かる、
この前後から、パットの体調は思わしくなさそうで、鼻血が出たりしていた。
パットはゲイバーに舞い戻った。通夜が始まる19時までにヘアメイクを仕上げねばならない。分かってはいるが、どうしても行く気になれなかった。楽屋へ行くと、金髪の黒人ダンサーが困っていた。彼の髪をセットしてやり、かつてリタが贈ったシャンデリア(天井から外されて楽屋にあった)を自分の頭に被せ、パットはステージに出る。
彼はジャケットの袖をカット、優雅なブラウスの袖を見せるリメイクをしていた。
往年の輝きを取り戻した次の瞬間、頭のシャンデリアがスパークしてパットは倒れた。
気づいた時には病院のベッドだった。外はもう昼。
パットは車椅子に乗り、病院を抜け出して、葬儀会場の教会へ悠々と向かった。
教会の入口で、パットはディーディーと鉢合わせ。すっぽかした彼の代わりに呼ばれていた彼女は「ひどい有様で、どうにもできないわ」と捨て台詞を残して去った。
パットは棺に安置されたリタと対面した。げっそり削げた、みすぼらしい死顔。
すると、生前のリタが幻影となって現れた。「あの時は、本当にごめんなさい…」
パットと親友だったにもかかわらず、リタは、デイヴィッドの葬儀に来なかった。
それが2人が疎遠になる決定的な原因だったのだ。
「彼の死因がエイズだと聞いて、怖気付いてしまったのよ」と、真摯に謝るリタ。
長年のわだかまりが溶けたパットは「任せて」と、リタのヘアメイクを始めた。
いったいどうなるんかいな?と思ったら、髪は見事なプラチナブロンドに染まり、高々と結い上げられた。落ち窪んだ眼窩にはグレーとシルバーでゴージャスなメイクが施され、頬はふっくら薔薇色に。見違えるようなファビュラス・マダムに仕上がった!
『トップガン マーヴェリック』でも「飛行機の性能より、最後はパイロットの腕だ」という台詞があったけど、やっぱりパットは超一流なんだ!と胸のすく思いがした。
一世一代の仕事(SWAN SONG)を満足げに眺めたパットは、愛用の鋏をリタの足元に納めようとして、ふと、パールで飾られた美しいサンダルに目を留めた。
リタの孫ダスティンがやってきて、パットを労い、ソファへと誘う。
「ずっとあなたと話したかった。僕は15歳の時、祖母にゲイだと打ち明けたんです。
すると祖母は、『私の友達もゲイよ』と言って、あなたの話をしてくれました。
その夜から、僕の人生は変わったんです」
ダスティンの告白を聞くパットの指から、火のついたタバコがこぼれ落ちたーー。
教会から運び出されるストレッチャー。
横たわったパットの足は、パールのサンダルをちゃっかり履いていた。
それに気がつき、なんとも言えない泣き笑いの表情を浮かべるダスティン。
『マイ・フレンド・フォーエバー』のラストシーンを思い出した。
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正確には★4.5くらい。自らの行く末を考える参考になった。
エリザベス女王のように生涯現役を貫ける人生は最高の幸せ。
冒頭シーンは辛い。主人公のパットはむさい身なりで、常に不機嫌だった。
抑圧されたイライラをナプキン畳みとタバコで発散する他ない生活。介護士からは子供扱いされる。元気なうちは老人ホームになんか入るもんじゃないわと思い知らされた。
ヒッチハイクと徒歩で故郷の町に戻り、出会う女たちから物心両面のサポートを得て、自由奔放でおしゃれな自分を取り戻していくパット。華やかな身なりと満艦飾の指輪が整い、古巣のゲイバーで踊ると、かつて「サンダスキーのリベラーチェ」と呼ばれた名物男は復活した。自分らしい外見でいることって、やっぱり大事。
亡き親友リタの死化粧を一度は請け負ったものの、迷いで心が揺れ動き、あの世とこの世の行き来もあったりして、最後までハラハラ。たった2、3日の話だけど、不良老人のハチャメチャ大冒険は楽しくて、やがてしみじみした。
もうすぐ死ぬんなら、思い切りやりたい放題に生きて、何が悪い。笑
主人公のパットは、トッド・スティーブンス監督が若い頃に憧れていた実在の人物がモデル。彼はヘアメイクアーティストであり、ショーパブの名物パフォーマーだった。(ただし、本作は彼の伝記映画ではない)
これは監督の故郷(オハイオの田舎町)と、そこに生きたクィア(性的マイノリティー)たちを愛おしく描いた物語だ。エンドロールでパトリック・ピッツェンバーガー(1943-2012)ご本人の写真が出る。デヴィッド・ボウイみたいな美男だった。
パットを演じたウド・キアーもスティーブンス監督も本物のゲイで、物語に誠実さと真実味と愛を感じさせた。 最後にオマケ映像があるので、客電が点くまで席を立たないように。
本作は音楽映画としてもよくできている。楽曲はシーンとリンクしていた。音楽担当は監督の実弟、センスが良いと思った。サントラを探したが見つからなくて残念。
hayamiさんの日記 2022年08月26日
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tamaさんの日記 2022年09月01日
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ケスさんの日記 2022年10月08日
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「ゲイのメイクアップアーティスト」「死化粧」つながりの映画
『ダイ・ビューティフル』(2017年8月に劇場鑑賞)
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映画.com レビュー
https://eiga.com/movie/95832/
Filmarks レビュー
https://filmarks.com/movies/98518
インタビュー:クィアの先輩にリスペクトを
「スワンソング」トッド・スティーブンス監督
https://hitocinema.mainichi.jp/article/10c3wilkhtn
https://the-new-tokyo.com/swangsong-interview/
ウド・キアー主演! 映画『スワンソング』は、
人生、そしてかつてのゲイ・カルチャーに対する“白鳥の歌”だ
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220825-swansong-movie
あの世への優雅なダンス;『スワンソング』の心地よい風に吹かれて
https://komodon-z.net/2022/05/31/swan01/
【INDEX】映画/舞台 関連日記(2)2019〜
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979079540&owner_id=1833905
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