姫君よりぼくの方が

プリンちゃんの熱は下がってきたようだ。

昨夕、プリンちゃんが新居に帰ったあと、
隣りの幼稚園から大合唱が聞こえてきた。

♪キャンプだホイ　キャンプだホイ　キャンプだホイホイホイ！

ぼくは思わず窓を閉めた。

プリンちゃんが、
ここのところいっつも歌ってたんだよね。
すごくうれしそうに。

お泊まり会のこの日のために歌う歌。
多分もう二度とうたわれることのない歌。

歌えなかったプリンちゃん。
胸が締め付けられるようだ。

今日はこっちに泊まらなくて正解だったな。
気丈にふるまってはいるけれど、
あの弾けるような合唱をひとり聞くのは辛すぎるだろう。

晩ご飯のあと、
ベランダの向こうの園舎を見ると、
いつもはもう灯りも人影もないのに、
昨夜は煌々と明るくて、
はしゃいだ声が漏れ聞こえてきた。



「ねられるかな？」
って、何度も心配してたね。

ゆっくりおやすみ、
君の人生はまだ始まったばかりだよ。