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2022年07月06日19:30

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【映画】『PLAN 75』

 
7月6日、大和郡山の一番小さなシアター(95席)で鑑賞。
高齢の2人連れが多かったが、女性1人客もそこそこいた。
「7/7終映」告知とサービスデーのW効果か、観客はなんと30人超え!

そのおかげ? 今見たら『PLAN75』は7月中旬まで上映予定に延長されていた。


公式 https://happinet-phantom.com/plan75/



劇中、倍賞千恵子が「りんごの木の下で…」と歌うシーンが2度出てくる。
ああ懐かしい、上海バンスキングだ。吉田日出子のまあるい歌声が耳に蘇った。
クレジットで串田和美の名を見て(どこに出ていた?)関係あるのかしらと思った。
それにしても、倍賞千恵子の声は今もなお美しいなぁ。(劇中でも褒められていた)



「死を選ぶ権利」を優しく「支援する制度」か。 ずいぶん耳障りの良い話だこと。
でも、そのシステムには「人間の血」が通っていない。実体は老人の大量処分だ。

『楢山節考』や『蕨野行(わらびのこう)』で描かれた残酷で厳しい掟の方が、
よっぽど人間らしい苦悩や痛みを伴っていたわ。私はそう感じた。


スマートな「PLAN75」の手口は、システマチックで洗練されている。
ターゲットは、裕福でない、75歳以上の独居老人。
「気が変わったらいつでも中止できますよ」と心理的ハードルを下げる一方、
小遣い10万円を与え、優しい電話サポート(1回15分)で誘導して
老人が「死ぬのを止めたい」と言い出しにくくする。

深く悩む暇を与えず「後のことは全部やっときますから。行ってらっしゃい」と
楽しい海外旅行にでも送り出すかのような調子で、面倒な死後処理を請け負う。

「合葬の方が寂しくなくて良いという方もいらっしゃいます」などと誘導するが、
遺灰は廃棄物処理業者に回されて終わり。(墓を建てたら弔う手間がかかるから)
目ぼしい遺品は遺品整理担当の作業員がちょろまかす。

死人に口無し、全ては「自己責任」だ。

老人と立場が近い私は、「安楽死を望むよう騙される」ことには憤りを感じるが、
「社会のお荷物になる命が多すぎる」という叫びには、正直反論の言葉が出ない。
どちらか言えば自分も「お荷物側」だと感じ、萎縮してしまうから…。


冒頭のシーンは凄まじかった。施設で老人たちを皆殺しにした末、自殺する若者。
「自分の命と引き換えに、この問題を社会全体で考えてほしい」と書かれた遺書。
「同様の事件が全国で相次いでいる」と報じるラジオ。
知的障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた大量殺傷事件が脳裏をよぎる。

このディストピアは、我々が今まさに生きる日常と地続きだ。


78歳の主人公ミチは、高台の団地で一人暮らし。ある日突然解雇された。
次の仕事は見つからない。そのせいで団地に居られないようだった。
子や孫がいる仲間は安泰だが、夫に先立たれて単身の仲間は一軒家で孤独死していた。

バスが廃線になったのか、歩いて道を登るから家に着くと息切れがひどい。
だが、引越したくても、保証人がいない高齢単身者は家賃2年分の敷金が必要だ。
生活保護用の賃貸ならあると営業マンに勧められたが、人に迷惑はかけたくない!
そんな思いが湧き「もう少し頑張ってみます」と、交通整理の夜勤で働く。
高齢女性にはキツイ仕事。夜のベンチで休んでいるとヒロムに汁物を振る舞われた。
いや、彼女は「施し」と感じたかも。彼女は手の中の腕をまじまじと見つめていた。

こうして、生真面目な昭和人間のミチは「PLAN75」に申し込んだ。
日常と地続きの地獄は、今現在もあちこちで口を開けている。


映画のラストで、ミチは生きようと思い直し、息を切らせて団地まで戻ってきた。
だが、既にPLAN75の手配で解約された後だったら? 家財も処分されていたら?
生活保護を受けるしかないのだろうか。そして絶望の末、逆戻りか。


劇中、ミチがしわだらけの老婆ではなく、若々しく輝いたシーンが印象に残った。
それは、サポートデスクの瑤子とボーリング場で遊び、ストライクを出した時。
周囲にいた見知らぬ若者たちも、次々と笑顔でミチにハイタッチを求めてきた。
あの瞬間、彼女の命は輝いていた。肯定的な感情に触れて生命力を得たようだった。


結局、人間が生きるのに大事なものって、豊かな心の触れ合いじゃないだろうか。



https://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=5343425



凄惨な冒頭シーンを除けば、怖いほど淡々と穏やかな物語。
あまりに静かなので、前半は睡魔に襲われてしまったほど。

少子超高齢化社会も、「命の価値を問う」大量殺人事件も、孤独死の頻発も、高齢者住宅難民問題も、重苦しい現実だ。この映画は、そんな日常と地続きのディストピアを描きながら、最後に淡い希望を提示していた。

78歳の主人公ミチを演じたのは倍賞千恵子。リカちゃん人形のようだった「寅さんの妹さくら」が、こんなに老いたとは…時の流れが残酷すぎて絶句した。そして、人々が優しく支え合った寅さんの時代と違い、一見スマートでも人々が心を通わせることのない孤独社会の寂しさ怖さをジワジワ感じた。こうなってくると「社会のお荷物」をシステマティックに処理しよう、という発想が自然に生まれるんですな。

私はミチの気持ちがよく分かった。頑張ってみたが、社会に自分の居場所はもうないと分かった。生活保護とか受けて迷惑かけるくらいなら、そっと人生を退場した方が良いのではないか。真面目だからこそ、PLAN75に自ら申し込んだ。

けれど、土壇場で、死にゆく男(申請担当ヒロムの叔父)を目の当たりにした瞬間、本能が「生きたい!」と叫んだ。息を切らしながら団地の丘まで登って眺めた夕日は、雲の間から暖かなオレンジ色の光を投げかけていた。

「りんごの木の下で 明日また会いましょう…」切れ切れに口ずさむ懐かしの歌。

ミチに情が湧き(死ぬのを止めてほしい)と願った電話サポートの子。
遺体を直接火葬場に持ち込み、叔父を人間として弔おうとしたヒロム。
遺体の奪取を阻止すべき立場でありながらヒロムに手を貸したマリア。

若者たちの心に「人間らしい情」の火が灯った。かすかな希望の火だ。




hayamiさんの感想日記  2022年06月17日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982572756&owner_id=2399973

ケスさんの感想日記  2022年07月10日
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1982747143&owner_id=12923117


「75歳以上は生死を選べる」映画『PLAN 75』が描く未来
 早川千絵監督インタビュー
 https://friday.kodansha.co.jp/article/249246


早川千絵監督が語る『PLAN 75』
理不尽さに対する若い人たちの気づきこそ希望と感動につながる
 https://otocoto.jp/interview/ikenobe182/


 
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