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2022年07月10日09:28

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『PLAN 75』感想

〜夫と死別してひとりで慎ましく暮らす、角谷ミチは78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇される。住む場所をも失いそうになった彼女は<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。また、フィリピンから単身来日した介護職のマリアは幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の<プラン75>関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送る。果たして、<プラン75>に翻弄される人々が最後に見出した答えとは〜<公式HPより>

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カンヌ国際映画祭で注目された作品ゆえ、絶対観ようと思っていました。
今作は、是枝裕和監督製作総指揮のオムニバス映画『十年 Ten Years Japan』(2018)の一編(短編)だった『PLAN75』からキャストを一新し、物語を再構築したもので、早川千絵監督の長編デビュー作。

冒頭は衝撃的。高齢者が住む施設が襲撃されたようだ。
モノが散乱して、車椅子がひっくり返っている。
そこに国会で決議された’プラン75’の施行が始まるというニュース音声。

ある日、ミチが仕事仲間たちと健康診断に出向くと、テレビから’プラン75’のCMが。
1人の男性がチャンネルを変えようとするが変えられず、電源もなかなか消えない。
このあたり、じわじわ不気味な雰囲気が漂ってきて、上手い。
「こういうところに来るのは肩身が狭いね、いつまでも長生きしたいみたいで」

一緒に働いていた1人が倒れ、ミチは余波を受け、高齢を理由に仕事を解雇される。

家の立ち退き。新しい住まいはなかなか見つからず。仕事も見つからず。

やっと見つかった仕事は夜間の交通警備。高齢者には厳しすぎる。

「生活保護は?」「いえ、自分でなんとかします」

フィリピンに夫と娘を残し、日本で介護士として働くマリア。
実は、娘が重い心臓の病気にかかっていて、多額の手術費用が必要。
仲間に寄付を求めますが、もっと割のいい仕事があるという話を耳にして、’プラン75’の職場を紹介されます。

市役所の’プラン75’の申請窓口で働くヒロム。時に嫌がらせを受けつつも、仕事は仕事。
でも自分の叔父が申請することとなり・・・抱えていた葛藤が大きくなっていきます。

ある時、炊き出しをしながらの勧誘活動をしていたヒロム。
疲れ果てていたミチに、温かな食べ物を差し出します。
ヒロムはおそらく、その時は、勧誘としてではなく、人として、それを差し出したはず。
でも、ミチは・・・’プラン75’を申請することを決意します。

やがてミチに’プラン75'コールセンターの瑤子から電話がきます。
’その日’までの心のケアをしてくれるのです。

仕事をしている瑤子の背後でオペレーターの面接が行わていて、その業務内容の説明が↓
「お年寄りは寂しいのです。会話がしたいのです。(中略)でも、納得してもらえるようにしてください。意見が変わることがないように、皆さんが上手く誘導してあげなきゃいけない」

いろんな自分の話を聞いてくれる瑤子に、丁寧にお礼を言い続けるミチ。
「ありがとう。ありがとう」
そんな瑤子にミチはひとつだけお願いをします。ある場所に行くのに付き合ってほしいと。
外で会うことは禁止されていましたが、瑤子はミチの人柄に触れ、出向くことに。
そこは、ボウリング場でした。

その頃ヒロムは叔父を連れて’プラン75’の施設に向かっていました。

※予告編
https://youtu.be/lqHXV52C9gI

たいしたことじゃないんですが、マリアが乗っていた自転車が、後ろにチャイルドシートがついているママチャリで、こんな細かなところまで目が行き届いていることに感心しました。
(娘とは一緒にいてあげられてないけれど、心はいつも一緒なんだよみたいな)

倍賞千恵子さんが素晴らしかった。凛とした存在感。
あとオペレーター役だった河合優実さんって『由宇子の天秤』のあの子ですよね。
いい雰囲気出してたし、上手かったな。

自分で自分の死を選べるって、一瞬、聞こえがいい気もしますが、この作品が描いているのは「長く生きてもらってはマズイ」世の中。
その業務に携わっている若者たちも、いずれは自分がその立場になってゆく。
死体処理の仕事は外国からきたマリアが担っている。
日本が抱える問題をあれこれ浮き彫りにしてて、上手いぞ。

早川監督は「そんな世界は来るわけないだろう」と「もしかして将来あり得るかもしれない」の中間を目指し、微妙な塩梅で、成功したと思います。
やや物足りなさはありましたが、デビュー作で、これだけしっかりと作られていたのは評価されるべき。3.5☆


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