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2021年11月07日01:46

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新宮・熊野市紀行９　瑞泉寺　／　本廣寺

　10月８日金曜日は清閑寺に参拝後、その南隣にある浄土宗神光山瑞泉寺を訪れました。
　https://www.google.com/maps/@33.7294374,135.9845972,19z

　瑞泉寺は寺伝によると、平清盛の嫡孫でありながら敵前逃亡し、寿永３(1184)年に那智沖で入水した従三位右近衛権中将平維盛(ﾀｲﾗﾉｺﾚﾓﾘ)の家来が主君の菩提を弔うため熊野三山に詣で、この地に草庵を作って修行した事が始まりとされています。

　その後、衰微していましたが、慶長13(1608)年に江戸増上寺の三誉上人が熊野三山を参詣した際に立ち寄り、ここに堂宇を建て瑞泉寺と名付けました。大寺(ｵｵﾃﾞﾗ)の別名でも呼ばれています。

　瑞泉寺板碑〔新宮市指定史跡〕には「開山心蓮社三誉上人大和尚」と刻まれています。

　大寺の梵鐘〔新宮市指定有形民俗文化財〕は高さ約1.2ｍ・重さ600㎏で、貞享２(1685)年に鋳造され、毎日昼夜12回撞(ﾂ)かれて城下に時刻を知らせましたが、音色が良なかったため、宝永２(1705)年に改鋳されています。

　その後、昭和30(1955)年に至るまで時報に用いられ人々に親しまれて来ました。

　続いて熊野速玉大社境外末社の渡御前(ﾜﾀﾘｺﾞｾﾞﾝ)社(祭神；神武天皇)へ赴きました。
　https://www.google.com/maps/@33.7278681,135.9839817,19z

　当地は紀元前662年に神日本磐余彦命(ｶﾑﾔﾏﾄｲﾜﾚﾋｺﾉﾐｺﾄ；神武天皇)が東征の際に上陸して頓宮(ﾄﾝｸﾞｳ)を設けた場所だとされています。

　境内は吉野熊野国立公園エリア内です。

　次は日蓮宗恵雲山本廣寺(ｴｳﾝｻﾞﾝﾎﾝｺｳｼﾞ)です。
　https://www.google.com/maps/@33.7278681,135.9839817,19z

　ここは新宮周防守屋敷跡〔新宮市指定史跡〕です。新宮周防守行栄(ｼﾝｸﾞｳｽｵｳﾉｶﾐﾕｷﾋﾃﾞ)は、南北朝時代から熊野別当に代わって勢力を持った熊野七上鋼(ｸﾏﾉｼﾁｼﾞｮｳｺｳ)と呼ばれた土豪の一人で、七上鋼最大の有力者でしたが、天正19(1591)年に堀内氏善(ﾎﾘｳﾁｳｼﾞﾖｼ)に逆らって滅ぼされました。新宮氏の名跡は氏善の六男である行朝が継承しています。そして、館跡には慶長元(1596)年に日等上人開山の日蓮宗妙覚寺派法輪山法華寺が創建されました。
　屋敷跡は発掘調査が行われていないため、詳細は不明ですが、江戸時代前期制作の「新宮古図」に法華寺が四周に水を引いた堀を備えた姿で描かれており、典型的な中世城館であった事が判ります。その堀は、現在でも道路の下に石積が残り、水路として利用されています。

　延宝６(1678)年、第３代新宮城主水野重上(ﾐｽﾞﾉｼｹﾞﾀｶ)が法華寺を両親の菩提寺と定め惠雲山本廣寺と改めました。父の第２代城主水野重良(ｼｹﾞﾖｼ)の法号本廣院を寺号に、母の法号惠雲院を山号とした訳です。また、所属本山も京都妙覚寺から身延山久遠寺(ﾐﾉﾌﾞｻﾝｸｵﾝｼﾞ)へ変更されました。

　水野家墓所は別に設けられていますが、当寺には水野家歴代の位牌が納められています。

　境内には書写妙法蓮華経印塔(ｼｮｼｬﾐｮｳﾎｳﾚﾝｹﾞｷｮｳｲﾝﾄｳ)〔和歌山県指定史跡〕があります。

　これは、新宮城主水野家家臣川上六太夫の次男で、江戸千家の流祖である川上不白(ｶﾜｶﾐﾌﾊｸ；1719～1807)が一石に付き一文字法華経を写経して納めた物です。不白は老中田沼意次(ﾀﾇﾏｵｷﾂｸﾞ)・薩摩藩主島津重豪(ｼﾏﾂﾞｼｹﾞﾋﾃﾞ)・長州藩主毛利重就(ﾓｳﾘｼｹﾞﾀｶ)等を弟子として一世を風靡した茶人でしたが、生家が本廣寺を菩提寺としていたため、晩年帰郷した際に主君水野忠昭・師千宗左(ｾﾝﾉｿｳｻ)・親を偲んで供養塔を設けたのです。