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2021年10月02日20:43

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9月の。

9月に観たのは『アンチグラビティ』『ミッション:8ミニッツ』『カメラを止めるな!』『ポップスター』の4本。

●『アンチグラビティ』
昏睡状態に陥ったヒトが赴く『大勢の記憶がパッチワークされた繋がりも重力の方向もグチャグチャな世界』に放り出された主人公。同様な人々が寄り集まって生きる廃墟じみた工場で暮らし始めた主人公。コミューンのリーダーは彼に期待を掛けて居て……。
冷蔵庫の中とか紙の裏とか見えて居ないトコロは何もない虚無で、開けたりめくったりするとジジジと生成されてゆくVRのような世界。こう云う夢見たコトあるわ。街の人々も景色も崩壊し傾き穴だらけ、様々な世界の断片が細々と繋がり合ってニューロンネットワークのようになった、脈絡も重力の方向もバラバラな、エッシャーとダリを混ぜ合わせたような世界。この世界観がまず『いい』。個人的に好物。
その世界で展開する追っかけっこやバトルは少し『インセプション』を思い出したりもして。いい意味でロシア映画ぽくないけど硬質で冷え切って居て張り詰めた空気はやぱロシアで、その異質さもよい。
この世界に来たヒトは現実世界の記憶をなくす。なので識別のため此処での呼び名を各自が決める。そして特殊能力に目覚めるヒトも居る。マップ作成、身体機能増強、ヒーリング能力、探知能力……。でバケモノから逃げ回りつつ物資を集め生命を繋ぐ。あー。ゲェムだねこれ。NPCも居るしね。
彼らを追い回し殺す黒い半液体のような流動的なバケモノ『リーパー』が実は脳死状態で機械にムリヤリ生かされて居るヒトの壊れて仕舞った精神、て云う設定もまぁゲェムぽくはあるのだけど、コレは少しモノ悲しさも感じ。殺したいのではなく、他者に縋りついて居るだけなのかも知れないとも思えて。
んで主人公が目覚めた能力は建築家らしい『建築物や構造物を創造する』力。それはコミューンのリーダー、ヤンが待ち望んで居た力だった。彼はその力でバケモノの来ない新天地を創りコミューンの皆で移住しようとするがまぁ其処にはもういっこどんでん返しがあってラストへの流れに繋がって行く。
様々な人間の様々な記憶から生成された雑多な品物を組み合わせて訓練ロボとか作る発明家ノームが何か印象に残る。ちょと役に立ったしねあのロボ。あとファントム。粗暴で自己中な男だけどまぁ、可哀想なヤツだったな。最後はバケモノになっても一瞬自我を取り戻し助けて呉れたしね。呉れたんだよね?
ラスト。社会と妥協してやりたいコトを歪めて諦めてようやく生きて行ける現実と違い、自分の思うままにどんな建築物でも建てられる『あの世界』への誘惑を断ち切れては居ないと云うコトなのかな。教祖様の云って居たように。コレまたハリウッドにはあまりない手触りだったな。割かし面白かったよ。

●『ミッション:8ミニッツ』
生存者ゼロの列車爆破テロ。犠牲者の脳とシンクロするコトで量子的に再構成された『死の寸前の8分間』に何度も何度も潜り、テロリストの正体を探る任務に就く軍人。更なるテロを防ぐため、記憶の混乱に襲われつつ犯人に迫ってゆくが……。的な。
タイムトラベルではなく、死者の脳内情報を元にプログラム上でアクセスした量子的揺らぎの中の並行世界。何かをすればプログラム内の出来事は変化するが現実には何の影響もない。既に起きて仕舞ったコトは変えられない。だけど犠牲者ショーンとして何度もダイブするうち、スティーヴンスはショーンの同行者であるクリスティーナを、そして乗客全員を何とかして救いたいと思うようになってゆく。
現実では彼は暗いチャンバーに閉じ込められて居て脱出不能、記憶はアフガンでのヘリ操縦任務中からいきなり此処へ飛んでおり、あなたは此処に2箇月居ると云われるもその記憶もなく、我が身に何が起きて此処に来たのかも判らない。まぁこの辺でふっと悪い予感は働くよね。そしてその予感は当たる。
プログラム内の世界は単なるショーンの記憶の再現ではなく、彼の認識を超えて現実同様に広がっており、云わば8分限定で再構成された過去。前回と異なる何かをすればその都度展開は変わるがその改変は現実へは持ち越せず、あくまで現実は確定済。『救いたい』と合わせるとこの辺がめっさ切なく。
そのプログラムの中でミッションである『犯人を探る』、願望である『乗客を救う道を探る』に加え、消えて居る記憶である『自分に何が起きたのか』も探ってゆくスティーヴンス。そして突き付けられる現実。彼は死を望むが、『救いたい』思いが彼の精神を支え、そして物語のラストまでを牽引する。
うん。割と面白かったですよ。若干ご都合主義ではあるけどハッピィエンドに漕ぎつけたコトもまた文句はない。望まぬすれ違いが生じたままだった父親とも話せたしね。並行世界の父親だけど繋がって居ると信じたい。ただグッドウィンだけはコレ、貧乏くじを引き続けるコトにならねえか?てのは少し気になる。非情になり切れない善人なのでね彼女。ラストで受け取ったメールは救いかそれとも呪縛なのか。
列車内で形振り構わず不審者を探し廻る主人公。ぶっちゃけブッチギリでコイツが一番の不審者だよなぁ。て思って居たら「不審者を見なかったか?」「あなたです」て車掌に返されてちょと笑った。
あー『月に囚われた男』の監督さんだったのね。なるほどねって感じだ。アレも結構好きだったよ。

●『カメラを止めるな!』
いわくつきの廃工場でゾンビ映画の撮影をする一行。役者に『リアル』を要求するあまりに煮詰まった監督が都市伝説で語られる儀式を実行し、実際にゾンビが出現してメンバーを次々と襲う。阿鼻叫喚の中、嬉々としてカメラを廻し続ける監督だが……。
前半は何を見せられて居るのかこの茶番は……何?と不安になったけども、全編通して観るとショウマストゴーオンだねコレ。後半のミステリの解答編ぽい再構成、なかなか楽しめましたよ意外にも。つっちゃ失礼か。でも。少し『陽気なギャングが地球を回す』を思い出したりなんかしたな。少しだけね。
なぁなぁ監督の夫。演じると我を忘れて暴走する元女優の妻。そして監督志望なれど一切の妥協が出来ない困った娘。この布陣はまぁ、ステロタイプで戯画的ではあるけれどキャラ造形としてまぁよく出来ては居る。映画の中の監督はこの娘の挙動をベースに立ち上げたのか、それとも監督の『素』なのか。
で。トラブル続きの中、『カメラを止めずにワンカットで撮り続けるゾンビ映画』て云う狂気の企画を実行する現場は次第にスラプスティックコメディの様相を呈してゆく。この辺もっともっと追い込みが出来たかもなぁ。もう一声。何とか。とも思うけどまぁ、しゃあないかね。流れを追い切っただけでも。
そんでもラストのバカバカしい組体操の絵面で不覚にも少し感動みたいなモノすら覚えたのは不思議。まぁストイックに演技道を追求してるっぽい俳優、表情はいいけど甘えっ気があるアイドル、酒癖の悪いおっさん俳優、お腹が弱くてちょとネチネチした感じの俳優。などなどなど曲者揃いのギクシャクした現場が最後に『映画の完成』に向けて一体になった、のがあの組体操だったのだな。その感動か。
そして父の台本に貼ってあった写真が元で、娘の力で其処に辿り着けた、辺りの流れはまぁ手堅いなと。その写真が其処に貼られるに至った流れも含め。親子の絆を再確認した感じで映画は絞められて。
まぁ。思ったよりは面白かったかな。飽くまで『思ったよりは』がつくのだけどもね。久々に観た邦画なので少し甘くなって居る面もないではないような気もする。けど。うん、だれずにラストまで引っ張ってゆくだけのパワァはあったと思うよ。それ以上のパワァは、まぁ、ない……かな。其処は惜しい。
あーそう云えばこの映画、権利関係でゴタゴタして居たのは記憶にありますしそれについても思うコトがないでもないのだけど、でも此処ではそれは脇に除けときます。映画の内容には関係がないのでね。

●『ポップスター』
同級生による銃乱射事件を切っ掛けに歌手としての人生を歩み出したセレステ。スターダムにのし上がるもスキャンダルを喰らい、傷つき傷つけつつポップスターとして立ち続ける彼女だが、最初の事件及び彼女のステージを想起させる銃撃事件が起きる……。
被害者追悼式典でのしっとりとした歌から一転、ポップスに転身するセレステ。「事件のコトを話すのは嫌。だからポップスが好き。みんな重く考えないし」て云う彼女のコトバは本心なのだろう。いつまでも事件の被害者として見られ続け、それ以外に見て呉れないのはまぁ、多分だけど誰だってイヤだし。
ショーと歌のシーンはもっと短くてもよかったんではないかなぁ。全体的な印象がインタビュー入りのMVみたいだった。そうしたかったのかもだけど。それよりもっと彼女の身に起きたコト、交通事故を起こしてとか、それにより彼女と周辺に起きた変化、そう云うモノローグで済ませて居た部分をしっかり描いて呉れてればよかったのかな。前半の彼女と後半の彼女の連続性が見えないっつうか、別人だった。
その後半の彼女、成功して少し年齢が行ってからのセレステはハッキリ云って業界に染まった情緒不安定ですれっからしのクソ女にしかみえないけどまぁ、必死にしがみついてるってコトなのかな。人生に。彼女にも制御不能な感情に振り回されながら。不思議と不快感はないわね。まぁあんなのが目の前に、増してや身内に居たらまた違うだろうけど。どっちみちリアリティはあったな。あーこう云うヒト居るよねきっと的な。それをキッチリ真摯に演じ切っては居る。うん……これが肝なのだろうね。この映画は。
自業自得的な面もあるけどそれでもボロボロになりながらもステージに立ち続け、ファンにとってのイコンであり続ける決意。それはとても重く。劇中では失言として扱われるけど銃撃犯に向けた「私を信仰しなさい。私には30発の銃弾よりたくさんのヒット曲がある」てヒトコトは何かとても印象に残る。
献身的な姉と控えめな娘。客観的に見ればまぁ彼女の人生の被害者だよね。彼女にはイロイロやらかされたしかなり傷ついて居ると思うのだけど、ラストの客席から彼女を見つめる表情を見るに何とかついてきて呉れそうでまぁよかった、のかな。これからもイロイロありそうだけどもそれもまた選択。多分。
彼女が繰り返し見ると語る「約束に遅れて出口のないトンネルを猛スピードで飛ばす。曲がるたびに年齢も格好もバラバラの生気のない私が倒れて居るが気にしない。トンネルの先は判らない。いつも辿り着く前に目を覚ます。私を知るヒトが居ない場所へ向かってる。ただそれが怖い」て云う夢が暗示的。

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月間賞は、あー、『アンチグラビティ』『ミッション:8ミニッツ』……『アンチグラビティ』かなぁ。今日の気分で。
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