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2021年08月05日20:45

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7月の。

7月に観たのは『キュアード』『ミッドサマー』『ミックマック』『バトル・インフェルノ』の4本。

●『キュアード』
人をゾンビ化させる新種のウィルスが蔓延。治療法が見つかり、復活した人々の社会復帰が進む。ゾンビとしてヒトを傷つけ殺した記憶は本人の中にシッカリ残って居て、フラッシュバックに苦しむ回復者たち。そんな彼らに社会から向けられる敵意と警戒と排斥。そんなん。
ゾンビ映画は数あれど治療法が見つかり解決した『アトの』話は珍しいかも。この映画を観て仕舞うと、ハッピィエンドに漕ぎつけた数少ないゾンビ映画の行く末もまた思いやられる。平坦ではないよね。
事態は沈静化したと引き上げを始める国連軍。回復者を危険視する人々は国連軍の撤退に危機感を抱き、その危機感は回復者への恐れと忌避を加速させる。この辺の社会情勢もイヤな感じにリアルで。
義姉の家に引き取られるセナン。実の父親にバケモノと罵倒され見捨てられるコナー。セナンはゾンビ化したトキに兄を殺して仕舞って居て、それを義姉には云えないで居る。一方コナーは母親を殺して仕舞って居て、それを父親も知って居る。この違いによりセナンは受け入れられ、コナーは断絶を味わう。
この辺は切ないけど仕方ない。人間だからね、病気だったからと割り切れない部分はどうしたって残る。お互いにね。肉体の病は癒えても精神の瑕は容易には塞がらない。回復した彼らをまだバケモノ扱いし忌避する社会。それに押し潰されて身を寄せ合い、パブリックエネミーへの道を選んで行く彼ら。
患者の25パーは治療不可。治らない患者の安楽死が進むにつれ、回復者たちは患者の方にシンパシーを抱いてゆく。回復し人間に戻ったハズなのに迫害され、排斥され、結局『ゾンビ』としてしか扱われない回復者たちにとって、安楽死させられる患者たちは自分たちの先行き、自分たちの運命なのだね。
そして自分の抱える患者を『治療不可』として取り上げられた医師はコナーら過激派と手を組み、患者を安楽死から救おうとする。この思いも非常によく判る。結局その思いを利用されて仕舞うのだけど。
この映画で描かれて居るのはゾンビと云う架空の現象だけど、この現象を取り巻く物語の方は、これは現代社会でも形を変えて起きて居るコト。人種や民族や文化であれ、感染の有無であれ、ヒトは異質を排斥する。そうして一度起きて仕舞った分断は、容易に塞がるコトはない。二度と元には戻らないのかも知れない、けど。安易なハッピィエンドに頼らず、それで居て幽かな希望を残す後味は割と好み。

●『ミッドサマー』
妹が両親を道連れに自殺したばかりのダニーは、友人の出身地で行われる夏至祭を見に行く彼氏たちと共に、スウェーデンの田舎のコミューンを訪れる。明るく歓迎ムードで迎え入れられた一行であったが、其処には独自の土着的な文化と風習と信仰があり……的な。
彼らが訪れたのは自然豊かな白夜の村。皆白っぽい服でにこやかにさざめくめっさフレンドリィなコミューン。『アルカディア』を思い出したな。欧米にはああ云うカルトぽいコミューンが多いのかな?
其処で起きるアレコレも観る前はもっと超自然的なナニカかな?と思ってたけど人間だったね。徹頭徹尾人間の所業。まぁ、予想とは違ったけどまぁそれはそれでよし。月並なオコトバではあるけど生きた人間が一番怖いしね。そして生きた人間が理想の名の下に迷いなくポジティヴに行う行為が一番怖い。
ダニー。パニック障害持ち?抗不安薬を服用し、彼氏の友人からはめんどくさい女呼ばわりされ、彼氏本人も持て余し気味。でもコレは彼氏のクリスチャンが悪いと云うよりイマイチ合わないのだろうね。確かにクリスチャン、友人の論文テーマに横から割り込んだり、あまり節度ある感じではないけれども。
コミューン『ホルガ』で行われるアレコレ。どうも北欧の古い宗教や伝承に根差して居るらしく、その辺に造詣が深ければより頷けるのかな。まぁ知らなくても鑑賞に問題はない、つうか主人公たちと共に驚いたり引いたりするのがまぁ正解なのだと思っておきます。気になるヒトは調べればいろいろ判るよ。
個人的には意図的に作られた障害者=聖者により永遠に書き綴られてゆくコミューンの聖なる書『ルビ・ラダー』が気になった。ジョシュじゃないけどじっくり見てみたい気がする。見たくない気もする。
明るく白く飛んだ画面の中、赤や青や黄色のビビッドな色彩が美しく、美しいが故に怖い映画。ホラーと云えばたいがい『暗い』からね。此処まで光に溢れた闇はあまり他所では見ない気がする。しかも儀式が進むにつれ、つまり映画が進むにつれ徐々に色彩が増してゆく。徐々に『狂って』行くのだよね。
ダニーのラストの表情。コレは彼女の解放の物語なのだね。家族を一気に失った悲嘆、妹による無理心中を止められなかった悔恨、そして今イチ寄り添って呉れない恋人への執着。そう云った妄執から彼女が解放され、新たな家族を得るまでの物語。まぁ、それはまたゆくゆく新たな束縛となるのかもだけど。

●『ミックマック』
子供の頃に地雷が元で家庭を失い、今また頭に銃弾を撃ち込まれ人生を壊されたバジルは、ゴミで築いた城に暮らすホームレスたちに受け入れられる。父を殺した地雷と自分の頭に残る銃弾。偶然に各々の製造会社を見つけた彼は『家族たち』と共に復讐を企てる。
ジュネらしいセピア色の世界。特に彼らの根城の内部が何とも好み。洞窟のような、ガラクタのような、玩具箱のような、機械式時計の内部のような夢空間。居場所のない者たちが身を寄せ合う『家』。
バジルと愉快な仲間たちは手作りの策略で悪の社長たちを嵌めて行く。『アメリ』をちょとだけ思い出すけどこっちのが少しだけビター、でも仲間が居るから楽しいし大丈夫。そんな感じ?道具は全て廃品利用。たまに上手く行かなかったり失敗したりもするが「廃品だから」を合言葉に明るく乗り越えて。
バジル。頭に残る弾丸の影響でトキドキ変な妄想スイッチが入り、叩くと元に戻る。壊れ掛けたTVの如き男。基本的に善人。食べるに窮し、歌う芸人の裏で自分が歌ってるような振りをして稼いだ小銭を、やぱ気が咎めて持ち去れず、何も気づいて居ない芸人に全額渡して去るとかね。元来悪いコトが出来ないヒト。人生の仇である社長の生命を救うために全てを捨てて飛び込んで行く辺りはもうバカが付くほどお人好し。だから彼の復讐は重いし、それで居てコミカルで、最終的には救われるのだよね。そう思う。
彼だけじゃなく皆基本的に善人。そんで考え方が割とシンプルなメルヒェンの住人。バジルの入院中に仕事を奪った形になったローラも必要以上に済まながらず、アッケラカンと追い掛けて来て、そんで彼に撃ち込まれた銃弾のヒントを呉れたりする。だから2人の社長とそれを囲む『悪』が際立つのだね。
この2人の社長も1人は大雑把で粗暴、もう一人は几帳面で陰湿といい対比になって居たな。エビの喰い方ひとつでそれを示すのも面白い。社屋が向かい合い、商売敵でもあり、お互いを快く思って居ないと云う下地もあり、バジルたちの策に面白いように嵌っていく。オチの付け方はまぁ現代的でもあり。
ジュネ映画の常連、くしゃおじさんドミニク・ピノンも健在。流石にお爺さんになって来たけど。このヒト見ると昔の仲間、吉原きーちゃんを思い出す。今回は元人間大砲のギネスホルダー。いい存在感。
主人公を受け入れる『家族』の設定が、昔書いたはいいが舞台化までは出来て居ない戯曲の設定にちょとだけ似て居てね。ジュネは好きな監督さんなので少し嬉しかった。とても愛らしい映画でしたよ。

●『バトル・インフェルノ』
役者と特殊効果を使ったインチキ悪魔祓いをネット配信して儲けてるエセ神父の番組に本物の悪魔が降臨し、スタジオのスタッフたちを人質&見せしめの血祭要員にエセ神父マックスに迫る。「視聴者にお前の嘘を告白し罪を償うか、殉教するか選べ」と。
トワイライトゾーンにありそうな話。こんなエセ神父にぽんぽんお手軽に退治される捏造をされたんじゃ悪魔としちゃ面白くないよね。て辺りで『ランス・マグルーとの対決』?アレを何となく思い出す。
彼らの動画は創作としては本格的。正直このクオリティなら本物偽物どうでもいい面白けりゃそれで、てフォローするヒトは多いよね。信じるヒトは信じるヒトでそんな自分のキモチすらどっかしらエンタメ化。ネットてそう云うモノだし、そんな時代の悪魔譚として見ると割と上手く出来て居るような気が。
クズ人間のエセ神父マックス君。親友の恋人なんてアッサリ見捨てて逃亡を図るかと思ったらまぁ其処は真摯で真剣に彼女を助けようとして居て。その親友君ドリューとの関係は深く長く、誠実に親友であった地味なドリューを軽く扱いがちだったマックスがその関係を見直してゆく終盤の流れは割と好み。
フェイクの神父になったのだって信仰に関わる重大な瑕疵があったから。幼い頃の体罰教師は今も彼の心に爪痕を残し。悪魔との対話はそんなマックスの人生に存在した歪みを次々と白日の下に晒し、自ら告白し懺悔させるコトで浄化してゆく。どんどん虚飾が剥がれシンプルになってゆくマックスの魂。
レーンに取り憑いた悪魔てばそんな感じで意外と親切。次々ヒントを呉れたり、ヤク中の音響さんが死んだアト画面に向かって「クスリはやるな。子供たち」て忠告したり何か割といいヤツ?悪魔て善悪両面あるからそう云うアレなの?主人公の更生が目的だったり?とか思ったがそんなコトはなかったぜ。
こんなC級ぽさ絶頂のまぁある意味捻りのないド直球なタイトル、しかもアルバトロス配給てコトで『そう云う』映画だろうなと思ったらあにはからんや、予想よりはしっかり創られて居て面白かった。『予想よりは』ね。はは。コメディ方向に逃げず堂々と真っ向からホラー、しかも極限状況で友情と愛情が試されると云う王道展開は好感は持てる。まぁ怖いかどうかと問われればゴニョゴニョだけどコレは日本人に悪魔が馴染み薄いのもあんのかもね。あとアモンで「デビルマンかよ!」て突っ込んだヒト多そう。

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月間賞は、うーん、『キュアード』と『ミックマック』で迷うけどまぁ『ミックマック』かな。
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