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2021年08月03日14:43

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プロDD・M 〜その205

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「動くな!」
「残念だが、もうあんたの言葉は俺には届かねぇよ」
「.......!」
「この鬼ころしは飲んだものの理性を失わせる代わりに、その者の潜在能力を最大まで引き出してくれる」
 神酒・鬼ころしを飲んだヨシケーは、マキゲの呪言に対する耐性を得ていた。
「く、くるな」
「安心しな。並みの人間なら一滴で意識がなくなるかもしれねぇがな。それに、たとえ理性を失ったとしても、俺は女は斬らねぇよ」
 そういうと、ヨシケーはマキゲをなるべく傷つけないように、刃のない方で打った。
「安心しな、峰打ちだ」
「.......」
「本来なら、こんな手荒な真似はしたくなかったんだがな。さすがは十六闘士、簡単にはいかなかったぜ」


「ふん、こんなところに隠し階段があったか」
 カリスマは、次々と隠してある通路を看破しながら、スズハラへ向けて進んでいた。
「むっ...」
 その途中で、1人の女を発見した。
「く、くるな」
「女か。そういえば、女神下ろしにはサブがいるとか言ってたな。てことは、こいつがモチュか」
 カリスマは自分に刃を向けてくる女に対し、かわいいものだと思った。
「仮にも十六闘士がこの程度とは。いや、僕が強すぎるのか」
「な、なにを!」
 と言う間に、カリスマはモチュを切り捨てた。
「ああっ!!」
「そういや、どこかにやたら騎士道を振りかざす愚か者がいたが、僕は女を斬るのを躊躇ったことなどない」
 カリスマは殺した女の魂を空席となっていたピアスに封じ込めると、また先を目指した。


「サイリウム三刀流......なんて荒々しいサイリウム捌きなの」
「といいつつも、このサイリウムの動きについてくるとはね!」
「私はお姉さまに誓った!ここで終わるわけにはいかない!」
「へへ、楽しくなってきたぜ」
 ユキの拳闘とマチネのサイリウム、いまだ勝負はつかなかった。
 それどころか、2人の戦いはさらに激しさを増していった。
「俺の武器はサイリウムだけじゃないぜ!着火」
「私も拳だけじゃない!氷牙!」
 死力を尽くしたその先に待っているのは、マチネの命のタイムアップであった。
「どうやら、そろそろお迎えがきちまったみたいだ。次の技で決めさせてもらう」
「.......」
 ユキは頷いた。
 時間切れで勝とうなどと思っていなかった。
 この技をかわせば、受けきれば、そんな考えを捨て、ただ正面の相手を見据え、拳を構える。
「その心、受け止める。そして、私は打ち勝つ」
「最後の相手が、あんたでよかったぜ...」
「「いざ!」」


「首領。マチネはそろそろ力尽きる頃です。どうも術による洗脳が解けているようですが」
「モミジを前にして、仕留め損ねることなどありえない。マチネの命、最後に檸檬の為、燃やし尽くしてもらいましょう」
 トアピは、表情を変えず、なにかを唱え始めた。
「おお......素晴らしいです」
 ユウチャンはその魔力の質に感動すら覚えていた。
「呪法・僻心!!!!」
 トアピから発せられた呪いの魔力が、遠く離れたマチネまで飛ぶ。
 それはマチネの事情など考慮していなかった。


 2人は互いの全てをかけて踏み込んだ。
 その時だった。
「う、う、あああああああ!!」
「マチネ!!?」
「.......」
 明らかに威力が上がっていた。
 その攻撃を受け、ユキは吹っ飛ばされた。
「が、がはっ」
「ゆ、ユキ、逃げろ......。俺はもう正気を保てねぇ.....。楽しかったがどうやらここまでだ.....」
「マチネ!くっ!」
 勝負への横槍があったことは明白だ。だが、対処する方法がない。
 1人で逃げおおせることは可能だろう。それではお姉さまが!とユキは考えていた。
 そして、ユキの頭のなかに、モミジの言葉が甦る。

 あの日、まだ自分が未熟だった頃、モミジお姉様と任務に向かった。
 そこでドジを踏んじまって、私達は追い詰められていた。
「ちくしょー!!あいつら!ブッ殺す!ブッ殺してやる!」
 怒りに任せている私を見て、お姉様は言った。
「おい、ユキ、さっきからうるさいわよ。ブッ殺す、ブッ殺すってよ。どういうつもり?そういう言葉は私達の世界にはないの...そんな弱虫が使う言葉はね」
「だ、だって!お姉様!」
「ブッ殺す......そんな言葉は使う必要がないのよ。なぜなら私や私達の仲間はその言葉を頭の中に思い浮かべた時には!実際に相手を殺っちまってもうすでに終わってるからだッ!だから、使った事がねェ────ッ」
 そう言うと、モミジお姉様は一瞬で建物ごと敵を吹き飛ばした。
 そして、敵のリーダーを捕まえると、私を見てこう言った。
「ブッ殺すと、心の中で思ったならッ!その時すでに行動は終わっているんだッ!!」
 そう、すでに敵の頭は吹っ飛んでいた。
 あれから私はお姉様に強く憧れるようになった。
 あの時、私の肩を掴んで言ってくれた尊い言葉.......。
「『成長しろ』!ユキ!『成長』しなきゃあ、私たちは「栄光」をつかめない!」

 泣いている場合じゃないわ。
 今までいっぱい助けてくれたモミジお姉さま......。
 このままじゃモミジお姉さまが安心して眠れない......。
 しかし、どうやってこんな禍々しいオーラに立ち向かえばいいの!?

 だが、ユキのそんな思いと裏腹に、マチネは待ってはくれなかった。
 僻心により、圧倒的な呪いの力を纏ったマチネは、ユキを一撃で葬り去るような攻撃を放とうとしていた。
 その時だった。
 突如、ユキの身体に、大量のエネルギーが流れ込んできた。
 ユキは咄嗟にモミジの方を振り返った。
「栄光はあなたに.......ある.......わ.......やれ.......やるのよ......ユキ........私は.......あなたを見守って.......いるわ........」
「お姉さまあああああああああああああああああああ!!!!」
 ユキは涙を拭くと、目の前の敵をしっかりと見据えた。
「わかったよ、モミジお姉さま!!お姉さまの覚悟が!「言葉」でなく「心」で理解できた!」
 マチネは禍々しいオーラを纏ったまま、物凄いスピードで突っ込んでくる!
 しかし、ユキは一歩も引かなかった。
「必ずやるって決めた時には
「直線」だッ!今の私は何が何でも「直線」で突っ切るのよッ!」
「がああああああああああ!!」
 ユキは直線で、マチネを捉えた。
 そして、そこに拳を合わせた。
「セイッ!!」
「!!!!!」
「ブッ殺すって思った時は...。お姉さまッ!すでに行動は終わっているんだね」
 マチネの身体は砕け、僻心の影響か、そのまま大気に溶けて消えた。
 ユキは、最後に、ありがとう、という声が聞こえた気がした。
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