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2021年06月23日13:04

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【本】ローレンス・ブロック編『短編回廊 アートから生まれた17の物語』ハーパー・コリンズ・ジャパン刊

皆様、お今日は。ローレンス・ブロック編によるアート作品からインスピレーションを受けた17編の短編小説集『短編回廊』ハーパー・コリンズ・ジャパン刊を読了致しました。その感想です。


作家ローレンス・ブロックは頭を悩ませていた――エドワード・ホッパーの絵から紡いだアンソロジー『短編画廊』の第2弾を計画しているのだが、いったい今度は誰の絵をモチーフにするべきか。思い悩んだ末、ブロックはある考えにたどり着く。何もひとりの画家でなくていい。今度は作家たちに、好きに名画を選んでもらおう。かくして、ジェフリー・ディーヴァーはラスコー洞窟壁画を。S・J・ローザンは葛飾北斎を。リー・チャイルドはルノワール、ジョイス・キャロル・オーツはバルテュス……といった具合に、今回も個性豊かなアートから物語が生まれ、新たなる〈芸術×文学〉の短編集が完成する。ここに文豪ギャラリー第2弾が幕を開けた――。


○収録作品
「安全のためのルール」ジル・D・ブロック/田口俊樹 訳
「ピエール、ルシアン、そしてわたし」リー・チャイルド/小林宏明 訳
「扇を持つ娘」ニコラス・クリストファー/芹澤 恵 訳
「第三のパネル」マイクル・コナリー/古沢嘉通 訳
「意味深い発見」ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子 訳
「理髪師チャーリー」ジョー・R・ランズデール/鎌田三平 訳
「ジョージア・オキーフの花のあと」ゲイル・レヴィン/田口俊樹 訳
「アンプルダン」ウォーレン・ムーア/芹澤 恵 訳

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「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」デイヴィッド・マレル/浅倉久志 訳
「美しい日々」ジョイス・キャロル・オーツ/芹澤 恵 訳
「真実は井戸よりいでて人類を恥じ入らせる」トマス・プラック/田口俊樹 訳
「グレートウェーブ」S・J・ローザン/直良和美 訳
「考える人たち」クリスティン・K・ラッシュ/田口俊樹 訳
「ガス燈」ジョナサン・サントロファー/芹澤 恵 訳
「陽だまりの中の血」ジャスティン・スコット/田口俊樹 訳
「ビッグタウン」サラ・ワインマン/芹澤 恵 訳
「ダヴィデを探して」ローレンス・ブロック/田口俊樹 訳

物凄い乱暴な分け方ですが、デイヴィド・マレルの『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』以降は全て傑作・秀作・佳作かの何れかに属する優れものでして、前半の作品はニコラス・クリストファーの『扇を持つ娘』、ジョー・R・ランズデールの『理髪師チャーリー』敢えて入れるならばジェフリー・ディーヴァーの『意味深い発見』位が「買い」ですが、後半のジョナサン・サントロファーの『ガス燈』、デイヴィッド・マレルの『オレンジは苦悩、ブルーは狂気』そして、ロダンの彫刻を扱ったクリスティン・K・ラッシュの『考える人たち』は。45年の歳月を鮮やかに捌いていますし、ミケランジェロの『ダビデ像』からインスピレーションを受けたトリを飾るローレンス・ブロックの『ダヴィデを探して』は、この枚数でこのオチを付けるとはお見事な一編でして本当に堪能致しました。

最初はローレンス・ブロックさまは、ラファエル・ソイヤーの『オフィス・ガール』から着想を得て新作を書こうとしたのですが、どうしても書けずに悩んでいたところ『アンプルダン』の作者であるウォーレン・ムーアさまから過去に書いていた素晴らしい作品『ダヴィデを探して』を指摘されて、編集者も大丈夫とお墨付きを入れたので本編に入れたとの事。御陰様でこの作品と出逢う事が出来ました。ありがとう!
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