※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
俺達は一斉にオルカーの残骸に飛び乗った。
それをそりのようにして、勢いをつけて斜面を滑る。
待ち受けるはナギヒコ。
「ナギヒコ一刀流に伝わる宝剣。凪彦流残岩剣。この世に斬れぬものなし」
「うおおおおおおおおおお!!」
「斬る…………!!」
俺達に退路はない。防御を固める?いや、違うね。
「六花流氷結術・水蒸」
リザルトが唱えると、付近が白く視界をふさいでいった。
「目くらましとは……小賢しい!!」
これでこちらの居場所はわかるまい。
「甘いっちゃ。マルス」
「………!?」
「心眼。感じるっちゃ。そこにいる。強い生命エネルギーを……!!」
ナギヒコは刀を振るったのだろう。だが、それが俺達に当たることはなかった。
なぜなら……。
「な、なんや、ユキさん、わしのこと好きなんか?」
「……」
ユキは無言で、モンダを蹴り飛ばした。
そこに、ナギヒコの刀が襲い掛かる。
「ぷげろっぱー!」
モンダの首が落ちる音が聞こえた。
そして、俺達はナギヒコの横を突破したのだった。
「不覚………。斬る価値すらないものを斬ってしまった。修業が足りぬな……」
反省するナギヒコを置いて、俺達のそりはどんどん加速していく。
「待って!マルス、あそこ出っ張りが!」
ユキが叫んだ。あ、あ、ああああああああ!
「うわあああああああああああああああああ!!」
俺達はオルカーの残骸ごと空へと放り出された。
「ついにたどり着いた。ヒロマル……」
トアピは皇帝の居城を見ていた。想像より幾らか寂れて見えた。あそこに、スズハラ、いや、ヒロマルがいるのだろう。自然と拳に力が入っていた。
「アッキー殿の南下が遅れている様子、いかがいたしますか」
「これ以上は待てない。ショウが戻り次第、全軍で出る」
ユウチャンの問に、トアピは力強く答えた。
その言葉にユウチャンも、はっきりと頷く。
「首領!戻りました!」
「ご苦労」
帝都内の偵察から戻ってきたショウが、トアピに声をかけると、彼女の表情が変わった。
「皆の者!いくぞおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
「首領トアピ…前に見た時はまだまだ子供だと思っていたけれど…。この短期間でここまで檸檬地方をまとめあげるとは。一体彼女を突き動かすものは何なの…」
「モミジ様、迎撃の準備が整いました」
「ありがとう」
「はっ!」
伝令の兵を見送ると、モミジは、皇帝の間へと向かった。
「どうしたでおじゃるか」
「ヒロマル殿、陛下は何処へ」
「今、お休みになっているでおじゃる」
「……この決戦時に、陛下の姿が見えないのでは!」
「モミジよ…麻呂は陛下の代理、麻呂の言葉はいわば陛下のお言葉であるぞよ」
「くっ…これ以上は話をしても仕方がないようね」
「ほほほ。わかればよろしい」
「では通させてもらう!」
「な、なにをするでおじゃる!乱心したか!モミジ!」
モミジが奥の間へ入ろうとすると、そこに横槍が入った。
「邪魔をするのですか?ダイ騎士団長」
「今は内輪で争っている時ではない。その話は戦いが終わった後でよかろう」
「………」
「わかってくれ、モミジ」
「ダイ殿がそういうなら、ここは一旦引きましょう。では行ってまいります」
モミジは踵を返すと、戦場へと向かった。
「アッキー、続々と帝都に猛者が集結しているが、俺らはまだ行かなくていいのか?」
「ふ、ふふふふふ。たまたまだ。たまたま、行軍が遅れているというだけなんだよ、ソバシ。そこのところ、忘れないようにしてくれないとね」
「お、おう……」
今、前回の呪い大戦以来、最大の戦争が前哨戦を終え、本戦が始まろうとしていた。
最後に立っていられるのは、誰なのか、どの勢力なのか。
そして、マルスの運命は…………!
第7部 四天王 VS 四天王 完
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