※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「奴らはもう行ったか」
アネンゴはオルカーを追って走っていた。
「この残骸は……まだ生命エネルギーを感じる。ハシゾウ…か?」
すると、近くの残骸が集まりだし、再びハシゾウだったものを作り出した。
「ウグオオオオオオオオオオオオオ!」
「死にたくとも死ねない永遠にこの世にしがみつく屍…DD細胞の権化か」
「ギャアアアアアアアアオオオオオオ!!」
無数の触手がアネンゴに襲いかかった。
しかし、アネンゴは避けもしなかった。
触手がアネンゴの身体に絡みつき、その動きを封じる。そして、それを引き裂かんとばかりに引っ張った。
だが、アネンゴは不動であった。
「アアアアア!?ウゴ……カナイ?」
「見るに堪えんな」
「ガアアアアアアアアアアアアア!!」
「フゥン!!!!」
アネンゴが四肢に力を込めると、触手は千切れた。
「芯なき者が、このアネンゴにかすり傷一つつけること叶わぬ」
「ギ?」
「死ねぬものすら殺す力、とくと味わうがよい」
そのままアネンゴはハシゾウに向けて真っすぐ拳を突き出した。
大気が割れ、大地を揺るがすそのパンチは、そのままハシゾウの存在そのものを消し去った。
「ア、アアアア、ア?アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
断末魔の叫び。
アネンゴは表情一つ変えず、ハシゾウを葬った。
「哀れな男よ」
帝都での決戦が始まろうとしていた。だが、いまだ静観する者もいた。
「ライチ。そろそろ始まるわよ」
「ああ…」
メグタンの呼びかけにも、ライチは微妙な反応を見せた。
実はライチは、帝国がなくなったことに目的を見失っていた。
復讐の対象がおらず、そして、かつて父の仲間だったスズハラが元首となっているという。
ただ混乱するばかりの日々だった。
「これから私たちはどうするの?」
「ああ…」
しかし、ライチは気のない返事を続けた。それに業を煮やしたのか、メグタンが思い切り腕を振りかぶった。
ぺしっ!
「……!」
「しっかりしな!ライチ!あんたがそんなんじゃ、あんたを信じてついてきた女達はどうなるのよ!皆、帰る場所もない。あの子達にはあんたしかいないのよ!」
「…そうだったね」
「あんたは王の器よ。帝国を築くべきはあんた、あんたなのよ!」
「僕が…王……。ふっ、目が覚めたよ。よし!ライチパーティーはこれよりスズハラ帝国を目指す!みんなついてきてくれ!」
運転するリザルトが何かを発見した。
「次の関所を越えれば、スズハラ帝国の領内に入るわ」
「関所が機能してればいいんだがな」
「檸檬連合はもう突破した後かしら」
「いや、もっと凶悪なのが俺達を待ち伏せてるぜ」
そして、俺もまたあるものを発見していた。
「なんてひどい…全部破壊されてる?」
リザルトがその惨状に驚きの声をあげた。
それもそのはずだ。生きているものは誰一人いなかった。
全て一撃のもとに絶命している……。こんな芸当が出来るのは、相当な使い手だ。
そして、この傷跡、全て拳一つでやってのけた。そんな奴、ただ一人しかいない。
「アネンゴ………」
「遅かったな、待ちくたびれたぜ」
こいつ、オルカーより早く……。回り込みやがったのか、なんて脚力だ。
「なぜ俺達の前に立ちはだかる」
「……お前らを神聖スズハラ帝国に入れたくない連中がいるということだ」
「お前は誰かの思惑で動くような女ではないはずだ」
「………言葉は不要。死ね」
その時、オルカーからモンダが飛び出した。
「アネンゴー!助けに来てくれたんかー!」
「おい、待て!」
俺の制止も聞かず、モンダはアネンゴへ向けて走り出した。
俺達は、アネンゴの威圧が強すぎてその場から動けずにいた。そうこうしているうちに、モンダはアネンゴのもとにたどり着いていた。
「助かったわ〜、アネンゴ、あいつら突然わしを拉致して、大変やったんや〜」
「どけ」
「ふんげっぷ!!」
アネンゴのパンチはモンダの首を吹っ飛ばした。転がるモンダの死体を見ても誰一人声を出せなかった。
その時だった。コウヘインゴが突然攻撃を仕掛けた。
「海月流忍術・刺!」
「フン」
「行け!!マルス!!必ず後で追いつく!」
コウヘインゴは振り返らずに叫んだ。
「コウヘインゴ!!」
「俺は大丈夫だ!リザルト、みんなを頼んだぞ!」
リザルトは頷くと、オルカーを走らせた。
「行かせると思っているのか」
アネンゴがオルカーに向けて動き出そうとした時、その頬に傷が入った。
気づけば、コウヘインゴがどこからか取り出した刀をアネンゴに向けていた。
「貴様ァ……」
「へっ、俺を無視して行ってもらっちゃ困るんでね」
「いいだろう、まずはお前を殺し、すぐにオルカーの連中も皆殺しにしてやる」
「やれるもんならな。さぁ、決着をつけようぜ、アネンゴ」
「なぁ、ツボンゴ?俺達も帝都いかね?そしたら目立つかもよ」
「コジンゴ……思うんですが、私達行っても目的というか、特に大義ないじゃないですか」
「だけどなぁ」
「埋もれますよ?」
「でも、このままじゃさぁ」
「下手すりゃそこで死んでゲームオーバーですよ。たいした活躍も出来ず」
「うわぁ……不遇」
「とりあえず、今はこのラーメンを食べましょう」
「あ、あっちにもうまい店あるんだよ、後で行こうぜー」
こうしてツボンゴとコジンゴはラーメン食べ歩きをするのであった。
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