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2021年04月29日18:13

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坂口恭平『徘徊タクシー』

主人公は、自分の祖母の散歩に付き添ってみて、
いたづらに徘徊しているのではなく、
目的地を持って歩いているのだと気付く。

歩き回るために歩き回っているのではなく、
行きたい所が有るのだ。
ただ、ちょいと地図が正確ではないわけではある。

目的地が有るのなら、そこへ連れて行ってあげれば本人は満足する。
目的地まで行ければ、納得して帰途に就くのだ。

最初に行った時にはおぶってあげたのでたいへんだった。
だから、次には車に乗せて連れて行ってあげた。

そこで思い付く。
「徘徊タクシー」というものをやったらどうか。

そこで主人公は、現代日本社会の中できちんと営業しようとする。
タクシー営業の認可を取ろうとするのだ。
ガキの思い付きじゃない。
仕事として成立すると考えてやっているのだ。

介護職の人の中にも、はなから受け入れない声と
興味を持ってくれる人とがいた。

頭から相手にしない中では、母親の言葉がキツイ。
「あんたは子どもの頃からできもしないことを突然思い付きで言うから」
ってなことを言う。
おそらく、そういうことが幾度も有って、
親として事態を収めるために駆け回ったり他人に頭を下げたりしてきた末の
言い方なのだろう。
けれど、こういう接し方が本人の脳みその混乱を増長させているとも思う。

主人公には恋人がいる。
この人は受容的な態度であり、主人公の心を落ち着かせてくれる。



主人公は誇大妄想のような症状が有るという設定だろうか。
躁病か。双極性障害か。



心に病を持つ我が子を、親は心配したり、心配のあまり抱え込んだり、
あるいは世間体が悪いと恥じたりすることも有る。
どれも、それこそが病気の一端を担っているように私には思える。

しかし、うまく収入が得られなかったりすると、
多くの場合、親元を頼ることになる

けれどそこには親がいる。
病の改善のためには切り離したほうが良いはずの、親がいる。
難しいところだと思う。



奥付を見て気付いたが、
この作者の他の本を私は読んでいた。
ただ、それは小説ではなかった。
この人が小説も書くということを知らなかった。

『TOKYO0円ハウス0円生活』は、
東京という都市のあちこちで、お金をかけずに住まいを作り
そこで生活している人たちを取材した本だ。

ホームレスとはなんと雑な言葉だろうと思う。
ホームレスにも家が有り、家族が有る。
生活が有り、娯楽が有る。
知恵や技術や情報が有る。
生まれてから死ぬまでの時間が有る。

人にとって、食う寝る所に住む所は重要な問題だ。
『0円ハウス』と『徘徊タクシー』は
テーマも形態も異なる作品だが、通じるものが有ると感じた。

同じ人が書いてんだから当たり前っちゃ当たり前か。
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