過去に戻って何ができるか

ラノベ、転生物の王道と言えば、中世ファンタジー世界に現代人が行って、現代の知識や常識で世界を変えていく、成功を収める、というもので、まあ、マーク・トウェインの「アーサー王宮廷のヤンキー」だとか（最近「ヤンキー」と言うとやんちゃな若者のことと思われそうなので念のため説明しておくと、正しくは「コネティカット・ヤンキー」で開拓時代の北部アメリカに住んでいた白人もしくはその子孫のことです）、新しくはないだろうと言えないこともありませんけれど、そういう物語が新鮮に感じるというのは、ひょっとすると「閉塞感ばかりの現代だって、本当にそんなに悪いものじゃない」と思いたい人が増えているからかもしれません。

私自身が、「昔が良かったはずがない」と割と普段から言っているので、そういう視点自体は悪くないと思うものの、現代をあまり美化するのもどうかと思わないでもありません。まあ、物語は物語なので、実際に似たような状況（現代でも古臭い常識を振りかざす頭の固い人々は山のようにいますので）に出会って、物語のように振舞ってみても「常識が近いはずの現代でもうまくいかないのか」と思い知らされることも多いでしょうし、だからこそ、それがうまくいく（しかも、ハードルの高いはずの中世的世界で）のが受け入れられると考えることもできます。

現代は過去よりはずっとマシになっているものの、完全には程遠いし、それほど満足できるとは言えません。もちろん、それは、「今」をベースに考えてハードルが上がっているせいもあるでしょうし、実際に部分的に見たら過去のほうが良かったように見えることもたくさんあります。そういう意味では、過去だってそこまでひどいものではなかったでしょうし、未来にあまりに期待しても裏切られることでしょう。それでも、せっかくならよりよい未来を見たいし、それには、よりよい未来ができるように自分の行動を考えないといけないな、と思うわけです。