※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
カリスマが、旧ノコッチ領を狙う一方で、ノコッチ達も、旧領復活を目指し、動いていた。
その陣頭指揮をとっていたのが、ノコッチ軍の参謀格であるニシであった。
「お前ら、皆、ノコッチ様のお世話になったはずだ!」
「へい!」
「このままショーヘーに、ノコッチ様の領地をめちゃくちゃにされていいのか!」
「ダメです!」
「皆、あいつを許せるか!」
「許せません!」
「立ち上がれるか!」
「おおおおおお!」
「よし!」
ニシは満足そうな笑みを浮かべ、ノコッチのいる個室へと戻っていった。
実は、ニシはノコッチの正式な家臣というわけではない。
彼は元は商人であった。その稼いだ金で小さな領地を手に入れた。
だが、新人の領地運営には、強力な後ろ盾が必要だった。
「皆、凄まじい士気の高さだな。さすがはニシ」
ノコッチが、ニシを労う。
「いや、これだけではまだ足りませんよ。全ての鍵は、カリスマが握っております」
「カリスマ君か、ふむ。あの小僧に何か出来るものかね」
「ノコッチ様、奴を侮ってはなりませんぞ。あの男は、苛烈な同担拒否なのです」
「ドータンキョヒ?なんだそれは?」
「我々の言葉では、推し被り排他といいますが、奴は元々国外からの流れ者でして…。向こうの国の言葉ですね」
ノコッチは、わかったのかわからなかったのか、とりあえず頷いて見せている。
それを見て、ニシは話を続ける。
「同担拒否であるが故に、他社を喰らい続けるモンスター…奴には共存などと言う生ぬるい考えはありません。必ずいずれ全てを滅ぼしに来るでしょう」
「そんな危ない奴をどうしようと言うのだ」
「簡単です、以前のように組めば良いのです」
「何?」
「奴は全てを滅ぼす死神、奴の後には草一本残りません。ならば、その荒れ地を手中に収めるのがノコッチ様かと」
ノコッチは全てを理解した。カリスマを踊らせるだけ踊らせてから、最終的に狩る。実にスマートな計画だ。
小物の動きになど、いちいち動じない。ノコッチの度量がなせる技だった。
「それはそうと……」
ニシは、すっと用意していた箱をテーブル上に取り出した。
ノコッチは、中身が何かを知らないかのように振る舞っている。
「ノコッチ様が大好きなお菓子をお持ちしました」
「ほぅ…菓子とな。一体何の菓子かのぅ」
ノコッチがとぼけるのを見て、ニシは下を向いたまま、フン、と一瞬真顔になる。
しかし、また顔を上げると、笑顔で、その箱を差し出した。
ノコッチは蓋を開けると、菓子を取り出した。
その菓子を全て取り出し、底を外すと、そこには大量の金が積まれていた。
「ノコッチ様の大好きな山吹色のお菓子にございます」
ニシがにやりと笑うと、ノコッチもそれに続く。
「ニシ…お主も悪よのぅ…」
「ノコッチ様こそ…」
「はーはっは!」
「では…」
パンパン、とニシが手を叩くと、女達が部屋へと入ってきた。
「おお、ニシ、これは…」
「出陣前にノコッチ様にリフレッシュしていただこうと思って、ご用意いたしました」
女達は、口々にパパ〜と言って、ノコッチに迫っている。
「くるしゅうない、くるしゅうないぞ」
その様子を見て、ニシは笑顔で部屋を後にした。
「ニシ様…」
家来の1人が駆け寄ってくるのを見て、ニシは指令を飛ばす。
「ノコッチ様がお楽しみの間に、全ての戦闘準備を整えておけ!」
「御意!」
そして、歩き出したニシは、付け加えた。
「あ、領収書はもらっておけよ」
「マルス!マルス!しっかりしろおおおお!!」
「うっ…ここは…スミオ?」
「良かったぜ!意識が戻ったようだな!」
どうやら俺はスミオに助けられたらしい。
「メガハイボール砲で奴らを蹴散らして、なんとか助けられたぜ!ショーヘーにも傷を負わせたんだが、スズハラが駆けつけて、すぐに回復させちまった。あの2人を引き離さないことには埒があかねぇぜ」
わかる…わかっているんだが…2人が離れないんだ…。
いったいどうすれば…。
「しかし、あんな所に築城可能なのか?すぐに見つかって、敵を呼んじまうぜ?」
「想像以上に、敵は強かった。ティーケーディーの他にも、もしかしたら、強敵が雇われている可能性はある…」
「とりあえず、戻ったら、作戦会議だな!」
「ああ」
カリスマ様になんと報告すれば良いのか…悩ましい…。
「ライチさんですか、にゃー」
「どうやってここまで来た?外にはメグタンもいたはずだが」
「僕にとって、潜入はさほど難しいことではありませんので、にゃー」
「…ターロックの飼い猫が何の用だ?」
「やだなぁ…僕はあんなのに飼われたつもりはありませんよ、にゃー」
とぼけた男だ…見かけと裏腹に、とんでもない邪気を感じるぜ…。
「こんな所まで何をしに来た?まさか挨拶しに来ただけというわけでもあるまい」
「あー、ターロックのやつが、あなたを危険視してて、消してこいと言われたんですよ、にゃー」
僕は、素早く武器を取り、構えた。この男、まるで殺気がなかった。
「待って待って、僕はライチさんと敵対したいわけじゃないです、にゃー」
「……話を聞こうか」
「あなた方には一度、国外へ退去してほしいんですよ、にゃー」
コーは、底が知れぬ男だった。
彼の提案を呑み、我々は、鮫地方へと向かった。
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