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2020年12月27日20:55

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【演劇】2020年の演劇5本

当然のことながら、今年は母数が小さいので10本ではなく5本の選出。例年通り順位はつけず、見た順番。


野田秀樹演出『赤鬼』Aチーム 7/28
FUKAIPRODUCE羽衣『スモール アニマル キッス キッス』 8/30
青年団リンク やしゃご『ののじにさすってごらん』10/26+10/31
iaku『The last night recipe』11/1
平原演劇祭 #鋸山演劇「夜郎別記」他 12/20
 
 
観賞回数は40回。やしゃごの『ののじにさすってごらん』を2回見ているので、タイトル数で言うと39本。コロナ禍で劇場が閉まる前の1〜3月に19本。4月に野外劇1本。残りの20本(19タイトル)が、ようやく公演が再開された7〜12月という内訳。状況を考えれば、これでもかなり見た方だろう。
他にオンライン演劇を何本か見ているが、私はほとんどのオンライン演劇は受けつけないということが分かったのみ。
 
 
FUKAIPRODUCE羽衣とiakuは、小劇場系ではほぼツートップと言っていい大好きな劇団なので、順当に入選。特にFUKAIPRODUCE羽衣は、逆境を逆手に取って、驚くほど完成度の高い作品を作りだしていた。
私は野田秀樹は基本的に苦手なのだが、この『赤鬼』は例外的と言っていいほど素直に受け入れられた作品。戯曲も演出も見事なものだった。
やしゃごは青年団リンクの中でもずば抜けた成長を見せている。人間心理の綾を丁寧に描いていく様は、iakuの横山拓也に一脈通じる部分もある。本作はとりわけ感動的で、これによってやしゃごは私の中のレギュラー劇団に昇格した。

どの劇団もコロナ禍での上演には細心の注意を払っていたが、とりわけ『赤鬼』と『スモール アニマル キッス キッス』の方法論は印象的だった。『赤鬼』は、舞台と客席をアクリル板で完全に分け、本番が始まるとアクリルがほぼ完全に透明化して存在を全く感じさせないという魔法のような技術を駆使。『スモール アニマル キッス キッス』は、妙ージカルでありながら、飛沫防止のため口パクという手段を採用。普通ならマイナスにしかならないはずだが、見事な音響設計で、何も知らずに見ていれば口パクだと気づかないほどに自然。しかも実際に歌っていたらまず不可能であろう激しい振り付けをほどこし、口パクだからこそ可能になった表現をしたたかに追究する。そして終盤のあるシーンでは生声を使い、それが感動的な意味を帯びるという見事さだった。
 
 
だが私にとって2020年を代表する演劇と言えば、「3密がダメなら屋外でやればいいじゃないの」by マリー・アントワネットとばかりに、1年で計9回(私はその内7回に参加)もの野外劇を上演してみせた、高野竜主催の平原演劇祭以外にない。
どの上演も「場」が大きな力を持っていたと言うか、役者と観客がその「場」に存在すること自体が演劇行為になっていた。中でも先日の鋸山演劇は、現場へたどり着くまでのありえない苦労と現場の壮絶な風景、そしてテキストの美しさと役者の憑依的演技が渾然一体となり、類例を見ない観劇体験となった。石切場跡で演じられた「夜郎別記」は生涯記憶に残ることだろう。
 
もはや待ったなしの状況で、どの劇団も感染防止に最善の注意を払いながら上演を再開しつつある。新作戯曲の内容も、人とのつながりが分断されがちな現状を自然に取り入れたものが増えてきて好感が持てる。あと1〜2年は続きそうなコロナ禍を経て、演劇界はどう変わっていくのだろうか。


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