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2020年12月19日09:29

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連載小説第3弾 淋しい生き物たち − 誰か私の小説を読んでください 第35話

【連続ブログ小説 第18話】

「それってどういうことなのかしら? 中学校のアルバムに彼女が載っていなかったことについてはあなたが忘れていただけで転校していた可能性も考えられますわ。同級生が彼女のことを憶えていなかったことにも、もしかしたら何かの合理的な理由はつけられるのかもしれません。でも小学校のアルバムにまで写真がないなんて、それにはどんな説明も思いつきませんわね。本当に不思議だこと」
「そうなんですよ。私は正直自分の頭を疑いました。いや、今でも疑ったままですね。もしかしたら、彼女との初恋の思い出も何もかも、私が勝手につくりだした妄想(もうそう)だったんじゃないかって。お嬢さんももしかしたらそんなふうに思っておられません?」
「わたくしはそんなことは思わなくてよ。不可思議なことはあっても、あなたのお話をそのまま信じていますわ」
           フォト

 もう私にたぐるべき糸は残されていなかった。こうなったら本気で探偵社に頼ってみようかとも思った。ことは自分の頭が、歳のせいでずいぶん衰えたとは言え、正常に機能しているのかどうかという問題にまで発展していたのだ。けれども、それはしなかった。現実的にそんなお金のゆとりはなかったし、もうここまでの展開を振り返れば、安くはないであろう料金を支払って依頼したところで、その調査報告書も「残念ながら」で始まるとしか思えなかったからだ。もうここまで。ここで断念するしかないか・・・・。
 あぁ!
 ひとつ忘れていた。私自身が1年7組の学級写真を持っているじゃないか! もう写真がデジタル画像にとってかわられて久しい。私の教員現役時代でさえ終盤は、学校専属の写真屋がデジタルカメラで学校行事を撮影していた。特に卒業アルバム用個人写真は「撮影した写真がOKかどうかその場で確認できますし、いい表情が撮れるまで何度でも撮り直しできるんでホント楽になりました」と言っていた。もちろん、遠い昔にそんな話はない。学級写真はモノクロのフィルムカメラで撮られていたのだが。

★作中に登場する人物団体等は実在のものと一切関係ありません。
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