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2020年12月11日08:16

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連載小説第3弾 淋しい生き物たち − 誰か私の小説を読んでください 第27話

【連続ブログ小説 第14話】

 誰もかれもが彼女のことを憶えていない。そんなあり得ない話に発展してくると、ぼんやり気になっていただけのことが猛烈に気になり始めた。どうでもよかったことがどうでもよくなくなっていた。頭の隅にこびりついていただけの事柄が、頭のメインストリートを闊歩(かっぽ)するようになった。
 4人の女性からさらに輪を拡げた連絡先にも電話なりメールなりSNSで連絡をとってみた。拡がった輪は3人だけだったが、その3人の中には初恋の人の「大親友」だった人も含まれていた。束の間(つかのま)ぼくに恋心を抱き、ラブレターをくれた人だ。そんな事情でぼくの恋した人は親友のために身を引こうとしたくらいだった。他の誰が忘れていようと、あの人が彼女のことを忘れているはずはない。
           フォト
 けれども、その人も含めた3人からの答えもまるで同じシーンのリプレイのように変わらなかった。
「その名前には全然記憶がない」
 まさか、あれだけ彼女と親しかったあの人まで。よく彼女と3人で話をしたではないか、一緒に神社のお祭りにも行ったではないか、ぼくはその人の記憶をなんとか呼び覚まそうと躍起になったけれど、その人の記憶が蘇(よみがえ)ることはなかった。

「それは本当に不可思議と言うか、もうお手上げですわね」

 やはりその年格好からすれば時代錯誤としか言いようのないことを少女は言った。

★作中に登場する人物団体等は実在のものと一切関係ありません。
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