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2020年09月23日21:47

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プロDD・M 〜その26

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「ショーヘーくん、止まって!誰かいます!」
「敵かも知れない、無視して突っ切るぞ!」
「待ってください。傷ついた人を見捨てて行くなんて出来ません」
「いや、万が一にでも、俺はお前が傷つく方が心配だ」
「大丈夫です。それに思うんです。あの人が助けてくれたこの命、きっと誰かを救うためのものだって」
 俺は林檎地方での戦いを終え、敵に見つからぬよう、スズハラと2人、険しい崖下の森を抜けていた。
 人が通りそうもないところだったが、そこでスズハラが人を見つけてしまったのだ。
 優しいスズハラにはその人を見捨てることが出来なかったらしい。
 これは酷い怪我だ。放っておけば、数分ももたなかっただろう。
「う…うう…」
「大丈夫ですか?今、傷を治してあげますからね!」
「スズハラ、危険だぞ!相手が何者かも確かめずに!」
「大丈夫です。いざとなったら、守ってくれますよね」
「あったりまえだろ!」
 俺は照れて顔をそらした。
「動かないでくださいね…。女神の慈愛」
「あ…ああ…」
 倒れていた男のうめき声が聞こえる。安心しろや。スズハラの回復術は世界一だ。俺が保証する。
「大変です…傷は治っても、やはりショックから立ち直れないみたい…よしよし…もう大丈夫だからね…」
 スズハラが膝に乗せた頭をゆっくり撫でると、男は安らか表情になった。
「あなたの名前を聞かせてくれる?」
「お、俺は…マルス…」
「そう、マルスって言うのね。もう大丈夫、大丈夫だから」
 マルスは名を名乗ると気を失った。
「ショーヘーくん、この人を私達の国まで運びましょう」
「しょうがねぇな、ここにいられない理由がありそうだ」
 俺達は、マルスを運んで、懐かしき神聖ターロック帝国へと向かった。


 かつて世界を四分する戦いがあった。
 4人の女神が降臨し、それぞれ自身を信奉する人間を率いて戦った。
 それは長引き、海は荒れ、大地は枯れた。
 戦いに疲れた女神たちは、自身の国を作り、友好条約を結んだ。
 しかし、本当の戦いは終わっていなかった。
 彼女たちは、信者を増やし、再び世界の支配を目指すその日まで、眠りについただけだった。
 そして、今、4人の内、1人リンゴを司る神が目覚めた。
 世界は再び混乱の時代へと突き進もうとしていた。


「偉大なる我が帝国。その偉大なる戦士ライチ、そして、リザルト。その功績を称える!そして、その名誉ある死に、黙祷!」
 ターロック陛下の声が、城の前の広場に響き渡る。集まった人達は、皆、涙を浮かべながら、かの人を想って祈りを捧げている。
 中心には、2人の大きな写真が飾られ、共に散った多くの兵達の名前が刻まれた石も置かれていた。
「勇敢に戦った2人の戦士は、きっと我らが女神のもとへ召されたことだろう」
 そう言うと、陛下は振り返り、城へと戻っていった。
 僕の母さんは、涙を流していた。けれども、他の人達みたいに、泣いていたのではなく、その表情には憎しみが宿っていた。
「坊や。あれがあなたの父さんの仇よ…。あなたのお父さんはね、あの男にはめられたの…」
「陛下が…?どうして…?」
「お父さんはね、改革をしようとしていたの、まだ小さくてわからないかもしれないけど、父さんは本当に魅力的で、カリスマ性あふれる人だった」
「僕、お父さんに会いたい!」
「いい子ね、坊や…。大きくなったら、きっと…」
 その日の夜、母さんはいなくなった。誰かが広場での話を聞いて、密告というのをしたらしい。僕はこの日の事を生涯忘れないだろう。
 僕の生きる意味が生まれたこの日を……。


 3年後……。
 父の友人だという人に引き取られた僕は逞しい男に成長していた。
「ショーヘーおじさん、スズハラおばさん、マルスおじさん、僕行ってくるよ」
「ああ、あと、スズハラお姉さんな。出かける前に殺されるぞ?」
 ショーヘーおじさん達の元で鍛えられた僕は、父の仇を討つため、帝都へと旅だった。
 2人は十六闘士という身分だったのだけれど、その地位を捨て、今は田舎でのんびり暮らしている。
 マルスおじさんは、林檎地方という所で拾ってきた行き倒れらしいんだけど、怪我のショックで記憶が曖昧らしく、召使いとしてこの屋敷に住んでいる。
 マルスおじさんも、元は軍人だったらしく、僕はたくさん鍛えられた。
「じゃあ、行ってくる!」
「坊ちゃん、お達者で!」
 マルスおじさんが手を振っている。おじさん達に会うのも、もしかしたら最後になるかもしれない。
 僕は、この手で、必ずターロックを討つ。その為に、血の滲むような努力をしてきたんだ。

「行ったな」
「ええ。あの子、父親にそっくりね」
「ああ、世界中に散らばったライチチルドレン。その中でも、あの子が最も父の血を色濃く受け継いでいる」
「ライチジュニア…元気に生きてちょうだいね」
 2人はライチジュニアを育てるため、退役し、田舎に暮らしているのだった。
 だが、俺は知っている。この2人が、ライチジュニアの目的に全く気づいていないということを。
「それからマルス」
「はい」
「お前、もう記憶もだいぶん戻ってきたのだろう」
「ええ、おかげさまで」
「じゃあ、そろそろ行くべき場所へ行きな。お前はこんな所に止まるべき人間じゃない」
「……このご恩は忘れませんよ。それから、スズハラさんなら、もう出かけましたよ」
「って、おい!マジかよ!俺も行く!」
 俺は自分のルーツを探す。アネンゴに囚われている時に見た夢。フロッグ。
 奴を追って、俺はこの呪いの島に来た。
 いったいこの先、どんな試練が待ち受けているのか知れないが、絶対に全てを取り戻してみせる。なぜなら、俺はプロDDなのだから!!

 第二部 神聖ターロック帝国

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