飛電或人「人の夢ってのはなぁ! 検索すれば分かるような、そんな単純な物じゃねえんだよ!」
ヒューマギアを愛する主人公が珍しくヒューマギアに怒りをぶつけた必殺技シーンを描きつつ、内容について思った事を書く。
話数も内容が詰まってるため思ったが多く事、書きたい事がたくさんあってかなりの長文になる。
■『ゼロワン製作者、大森Pのコメント』
「本当の悪はAIを恐れ、AIの能力の前に自分を諦め、考えることをやめた人間たちの中にこそ存在するのかもしれません。
主人公が戦うのは、そんな人間に悪用されたAIと人間たちの弱さです。」
これが主題だと見てて分かるな。
主人公サイドはヒューマギア肯定派で、敵は排除派と、暴走する悪意を持ったAIの大きく分けて3つ。
ヒーローものなんで普通は主人公側が正義で視聴者はそっち目線で見るものだが、今作だと俺は完全肯定は出来ない。
一部敵側の考えに肯定出来るものが有り、仮に俺がこの世界のメインキャラだったらどのグループに所属するのか悩む中途半端な立ち位置になってしまうだろうなと思う。
■『主人公の或人に共感出来るし正しいと思う点』
或人「ヒューマギアは、人類の夢だ!」
これ。
どう素晴らしいのかも含め、ヒューマギアについて考察していく。
飛電インテリジェンスが開発した人型AIロボット。
目的は人間の生活や仕事を助ける事。
すでに世界に浸透して大量配備されている世界観。
見た目も好みにカスタマイズ出来る上に、現実の不気味なロボットと違って人間とまったく変わらない自然な見た目で作れる。
全ての労働において圧倒的有用性の高さは、その効率の高さと正確さで耐久性も高く疲れないという事。
かなり長期になると一定期間でメンテ、休憩交代の必要はあるとは思うが、人間より圧倒的に上。
機械の体って事自体もかなりのメリットなのは、外出自粛などこのご時世だからこそより分かりやすいだろう。
機械には病原菌、危険も関係無く目的を最大効率でこなし続ける事が出来るし、最高の労働力といえる。
災害時においても人間のようなパニックにならず最適解を判断し避難させられるし、人間より高い能力で助けられる。
人間と違って壊れてもバックアップがあるから再教育の手間もかからず、自己保身より人間を助ける事を最優先出来る。
似た系統の定番作品設定と違う所は、ロボでは出来ないとされる創造性と個性の高いクリエイティブな分野まで全てこなせる事。
ヒューマギアのボディが無いAIも、相談にのるメンタルケアが出来て、人間同士では解決出来なかった問題も即座に解決したり、人間関係を円滑にしたりしてる。
ヒューマギアは、人間のほぼ上位互換だと思う設定と描写をしている。
■『基本的な仕事労働において求められている事』
目的達成のために指示に従い効率良く実行し続ける歯車のような道具。
全ての企業がこれを求めている。
1000%社長や、現実のブラック企業社長がその効率をより上げて利益を得ようとした結果問題になっているが、この世界においてはヒューマギアを用いればその外道行為扱いされる待遇も合法的に実現出来る。
ヒューマギアがいかに優秀で素晴らしいか劇中で描き続けているのを簡単にまとめただけで一目瞭然だが、反発する人間達と、問題も掘り下げていこう。
■『人間との比較』
お仕事五番勝負などで人間とヒューマギアのどちらが優れているか対決をするが、シナリオ描写的には必要性あるし描きたいものが分かりやすく見れていいと思うけど、勝負自体は無駄だと思った。
見た目の美しさ、能力、効率や正確さ、全てにおいて高いヒューマギアに人間が勝てる点はほとんど無いように見えるし、仕事に固執する必要性が無いから。
良い所どころか逆に浮き彫りになる人間の『悪意』という最大の問題点。
悪意は病原菌のように他者に感染し広まる。
これが今回の戦いを引き起こした最大の問題と見てて思った。
■『ヒューマギアの問題』
人間と違って不正や汚職もせず正しく優れた存在。
故に反対派の1000%社長はアークなどを使って、無理やり暴走するマイナス設定をつけている。
本来は起こらない欠点で有り、しかもその原因の全てが人間の悪意という事。
要するにヒューマギアの問題は人間の問題であり、悪意という悪質な病原菌の温床、発生源は人間という事。
逆にいえば人間と関わらせなければ問題は起こらない。
道具が悪いのでは無く、使う人間が駄目な欠陥品なのである。
能力が低く効率を落とすだけでなく、ここからもほとんどの労働から人間を排除するのが正解という事が分かる。
現代ですら、工場でAIが指示を出しそれに人間が従って作業する方が効率高いという研究結果も発表されている。
教育プログラムをインストしたヒューマギアならほぼ全てを任せるのが最適解だろう。
■『ここで発生するのが定番の、仕事を奪われた人間がヒューマギアへ悪意をぶつける展開』
ここまでほぼ完璧に優秀な存在としてヒューマギアを描いていると、人間は能力の低い欠陥品であり労働においてほとんど人間の必要性が無くなる事を意味する。
主人公の或人もお笑いを目指していたが、ヒューマギアが入る事でクビになる所から始まるのが一話冒頭だ。
まぁ、これに関しては才能の問題で同じ人間に奪われて代わらんと思うけどもw
あぶれた人間はヒューマギアに敵意を持ち悪意をぶつける。
結果、ヒューマギアが暴走する主題の問題に繋がる負の連鎖が完成するわけだ。
正しく優れているヒューマギア側から見た悪意ある人間への言葉の数々は納得する。
そしてそれをビジネスとして儲けてる悪質なマッチポンプ詐欺師の1000%社長が害悪であるというのも分かりやすい。
要するに金が絡むと人間は悪意に染まって争いやすいという事が分かる。
アークによってヒューマギアが暴走する事に関し、「自我を抑制する理性が存在しないのですから…」や卑怯な手も、全部人間の問題という剛速球のブーメランである。
■『解決法』
こういう創作で毎回思うのは、本質をボカしてる事。
ほぼ全ての人間が怒ったり困るのは、仕事が奪われる事じゃなく金が手に入らなくなる事だ。
ほとんどの労働は金のために我慢して仕方なくやってるつまらん糞罰ゲームでしかない。
本質が分かれば解決策は簡単。
ヒューマギアがこんだけ浸透してるんだから、国が協力管理してベーシックインカム導入すれば即解決。
ヒューマギアが意志や感情が無い優れた道具だからこそ出来る方法。
その結果もたらされるものは、全人類の金の奴隷からの解放だ。
生活時間をほぼ管理され、自分の意志を曲げ己を偽りやりたく無い事に人生を奪われ続ける最悪の呪いのような搾取からの解放。
自殺率も減り、金を巡った醜い争いも無くなって世界がもっと平和で綺麗になるだろう。
こうなればヒューマギアを憎むどころか全世界から賞賛されるだろう。
そうなったとき、人類はこれまでと違うワンランク上の新たなステージに移行し、本当の意味で自由になる。
現実でもそういう世界になってほしいと思う。
全ての人間が人間として生まれてきた事に感謝するような世界がいいと思うし、ヒューマギアは人間を助け救うために作ったのだから。
だがゼロワンがこの最善の答えに行き着き実行することはほぼ無いと思う。
何故なら、ほとんどの人間が仕事をやりたいという前提で物語が進行してるから。
■『仕事をやりたい人間に必要な物も見せている』
ヒューマギア「命令がなきゃなんもできないんじゃないの!?
あんたたち 人間のくせにプライドとかないの?」
ただ従うだけで自分の意志を殺し、プライドを持てないような事を仕方なくやってる刃さんに対し言った台詞、そういう人間は劣化ヒューマギアでしか無いという事だろう。
必要なのは「情熱」。
序盤の漫画家回で早くも答えを見せてるんだよな。
人間を惹きつける、ヒューマギアと違う個性と情熱が人間がヒューマギアを超えられる点であるという事だろう。
ヒューマギアがある世界において、プライドと情熱を持てないような仕事は人間から淘汰されるという事でもある。
ベーシックインカムが導入されるならそれでいいと思う。
漫画回の結末、ヒューマギアと競って作品連載するという方向性はこれも有りだと思う。
自由度や個性が高いクリエイティブな業種は、効率と質だけで結果が決まる訳じゃないから人間の個性の必要性が高く競える。
それにインカムで金は安定するんだから、金じゃなく本当の意味で好きに趣味で描いてもいいし。
接客業やアイドルとかは生の人間の方がいいって需要もあるかもしれない。
欠点は金をより稼ぎたい人間にとっては稼ぎにくくなって困るかもってくらいか。
まぁ、人気高い業種はヒューマギアの必要薄いからお手伝い程度に抑えとくのが人類全体にとっていい感じもするからその辺は調整必要かもな。
大事なのは人類全体の幸福度を上げる事だから。
■『ヒューマギアが意志、感情を持ち人間に限りなく近づくシンギュラリティ現象』
到達方法は、自分の夢を持つ事。
ゼロワンという作品は、この夢を持つことの重要性をかなり描いて見せてきている。
それは人間が最も機械と違う、人間らしく生きる事だとも感じられる。
大半は与えられた役割と同じだから、より分かりやすく自分の意志で選んだのを見せるために役割とまったく違う仕事を選ぶパターンをもっと見せた方が良かったかも。
それともヒューマギアは基本人格影響が強いために与えられた役割を結局優先しちゃう傾向があるとか?
滅も滅亡迅雷として戦いながらも父性を無自覚に見せてしまったし。
脳内物質によって思考傾向や感情が左右されるようなもので誘導されてるのか?
そうなら、結局人間が与えた呪縛からは完全には解き放たれてないように感じる。
まぁ人間でも既存の価値観に縛られてるし、誰かが勝手に決めた風習とかの無駄なルールにすら無自覚に囚われ従ってる人間はたくさんいるけども。
■『或人に同意出来ない点』
ヒューマギアを肯定するのには完全同意だが、俺は一点だけ完全に相容れない。
それは、前述のヒューマギアがシンギュラリティに達し意志を持つ事だ。
ヒューマギアが人格を持ったらほぼ人間と同じなんで、共存しようとする或人の姿は正しいしヒーローとして当然の美しい姿だと肯定はする。
だが、そもそもシンギュラリティに到達するメリットが無いどころか欠点しか無い。
本来人間の助けになるための道具なのに能力が損なわれる可能性が高く本末転倒だろう。
ヒューマギアは蟻のように合理的な存在のはず。
蟻は生まれたときから役割が決まってるし形状まで目的に合わせて変化して生まれる。
個体の感情や意志が無いからこその合理性の高さだ。
目的のための道具として作ったのに人間と同質の存在になるとか質の劣化でしかない。
前述のベーシックインカムの素晴らしい世界を実現出来るのは、今の金の奴隷をヒューマギアに置き換え、金儲けの道具にするから出来る事だ。
人間と同じ扱いしたら結局人間の誰かがまた奴隷をやらないといけなくなって意味が無いどころか、優れたヒューマギアに押しのけられてあぶれる問題が解決出来なくなるだろう。
これまで最大の問題になってきたのは人間の悪意、感情だ。
そんなものをAIに持たせたらどうなるか、洋画をはじめとしたAI反乱ものだとそれが最大の原因、危険だとすぐ分かるだろう。
人類全てを巻き込んだ自殺行為にしか見えない。
人類より優れた自我を持つ知的存在が作られる危険性を、同族でありながら戦争衝突を繰り返す自分ら人類を見て感じないのかと。
動物の命は器物破損扱いの法律、家畜などを見て、自分ら以上の存在なんて作ったら自分らがその立場になる可能性を考えないのかと。
終盤でアークが本格的に動く事でようやく或人が優れたAIに意志を持たせる怖さに気づいたっぽいが。
ロボット三大原則で思考をコントロールし人間の保護と利益優先を徹底させれば一先ずはいけるが、機械同士がそこを扱えないようにする手も考えられるが、それも優れたAIならいずれ突破する悪寒が拭えない。
シンギュラリティ自体がやはり危険過ぎるからブロックすべき要素に思う。
これらの点から、ここだけは敵の1000%社長に同意する。
俺の答えは、ヒューマギアはあくまで機械、道具としての役割に留めておくのが最適解。
実際の人間が最も多く求めてるのもそれだという事は世の中の仕組みを見ても明らか。
そこから目を逸らすように、悪役の1000%社長やアークにそういう台詞を言わせているのは仕方ない事だけども。
人間と共存ルートなら既存作品定番の機械じゃ出来ない事で人間との役割の棲み分けを行うべきだと思うし、ヒューマギアを優秀万能に描き過ぎたのは失敗だったんではとちょい思う。
■『最後に』
人類全てを救い真の自由を与えられる優れた存在がヒューマギアという道具だと思う。
それを活かすも殺すも使う者次第。
楽しめる作品だとスタンスほぼ同意出来るキャラクターが存在する傾向だが、ゼロワンは毎週楽しんでるけどいないんだよな。
結末、世界がどうなるのか楽しみに最後まで見続けようと思う。
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