2014年7月17日に、ウクライナ東部のドネツク州上空でマレーシア航空機が墜落しました。さまざまな情報を総合すると、同地域を支配する親ロシア派武装集団が地対空ミサイルで撃墜したものと思われます。この親ロシア派に対し積極的な工作を行っているGRUとみられます。これを黙認してきたプーチン政権の責任は重いです。
また同時に、対話ではなく親ロシア派の支配地域に空爆を行うなど、内戦をエスカレートさせたウクライナ政府の責任も重いと思います。ウクライナ政権は、自国の領域を実効支配できておらず、首相の辞任すら収拾できないなど、破綻国家の様相を呈していました。
重要なのは、この事件によって、アメリカが対ロシア批判を強め、米ロ関係が決定的に悪化したことです。ここにつけこんで、最大限に利用するのが「イスラム国」です。米ロがにらみ合い、中東で身動きが取れないなかで、支配地域の拡大を図るのです。
すでに「イスラム国」が、イラク最大のダムを制圧し、シリア国境に近い北部の町や油田を新たに支配下に置いたことが伝わっています。またCIAのような情報機関も対ロシア要員を増員しています。人員は限られていますから、その分、中東が手薄になるのは避けられないのです。
中東とウクライナに共通しているのは、ともにエネルギー問題が深くかかわっている点です。とくにヨーロッパにしてみれば、ロシアから天然ガスを輸入するパイプラインがウクライナを通ります。エネルギーの危機管理上、これは非常に困るので、何とかしなければいけないでしょう。
だから今、アゼルバイジャンからウクライナを迂回してトルコを通る南側のルートをつくっていて、その完成を急いでいます。また、シュールガス革命でアメリカが中東から天然ガスをあまり買わなくなってしまったため、中東がヨーロッパに天然ガスを安く売ろうという動きがあります。
そこで、ヨーロッパとしては、天然ガスの入手ルートを多様化しながら、ウクライナ問題に伴うエネルギー危機に対拠しようとしている最中です。しかし、対策はまだ十分ではありません。カタールが石油のスポット売りをやり始め、ロシアも通常ならやらない天然ガス供給の長期契約の値引きをしました。
そもそもウクライナ紛争の発端は、2014年2月、ウクライナ反政府勢力が大統領府を占拠して、親ロシア派だったヤヌコビッチが大統領を解任したことです。その時のもっとも深刻な対立は、ウクライナがEUに加盟するかどうかをめぐるものでした。
ウクライナ西部では親欧米派が優勢で、EU加盟を推進していたのに対し、東部に基盤を置くヤヌコビッチ大統領が調印準備を凍結してしまったのです。親ロシア政権が倒されると、ロシアのプーチン大統領は露骨にウクライナへの干渉を始めました。
とりわけクリミア半島に対して「ロシア人の安全を守るため」と称して、ロシア軍の特殊部隊を派遣しました。ロシア軍に守られながらクリミア半島の「クリミア自治共和国」は、住民投票を実施し、ロシアへの編入を決めたのです。
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