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2020年02月18日19:57

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フルトヴェングラーかカラヤンか?

政治思想史学者の丸山真男氏はフルトヴェングラーの訃報を聞いたとき、
「僕がヨーロッパに行きたい理由の90%が失われた」と嘆いた。

彼はヨーロッパに行き、フルトヴェングラー/ベルリンフィルによるベートーヴェンの交響曲の実演を聴く事が夢だったそうだ。

それなら僕がタイムスリップして戦時下のドイツに行ってやろう、と取り出したのが、この2つのCDボックス。
この中にはフルトヴェングラーとカラヤンがそれぞれベルリンフィルを振った2つのベートーヴェン交響曲第7番の録音がある。

カラヤンの方は1041年7月の録音。

1941年7月と言えば、ドイツが枢軸国とパートナーを率いてソ連侵攻を開始した頃(バルバロッサ作戦)、ナチスドイツの頂点の頃といっていいだろう。

カラヤンの演奏はフルトヴェングラーの楽器:ベルリンフィルにトスカニーニのテンポと奏法を吹き込んだような演奏で、重厚さの中に適度なテンポと歯切れよさがあり、明るい未来を感じさせるような演奏だ。

カラヤンとフルトヴェングラーの演奏スタイルには共通した特徴がある。

それはいずれも、楽譜通りの演奏をして曲本来の良さをかもし出す、と言った風な横着な?手法では無く、曲を完全に消化して自分の鋳型に流し込む、独自の音楽を作り上げ、かつ則を超えずオーセンティックな雰囲気をかもし出す点にある。

しかし、ここでのカラヤンは自分の、鋳型に流し込む、までには至っておらず、むしろベルリンフィルの合奏力と破壊力の凄さに驚嘆し、いつの日かこのオーケストラを自分のものにしたい、思ったことだろう。

フルトヴェングラーの録音は1943年3月の録音。

この時期はドイツが2回のソ連侵攻に失敗し、枢軸国パートナーがドイツから離れ始め、劣勢が明らかになり始めた頃で、ナチス首脳部には暗雲が立ち込めていたに違いないが、民衆にまで知らされていたかはどうか定かではない。

このフルトヴェングラーの演奏の凄さはどうだろう。
まさにベートーヴェン演奏の頂点とも言うべき堂々たる演奏で、演奏が楽曲を凌駕している、と表現してもよい程の演奏だ。
この時点ではフルトヴェングラーの演奏が明らかにカラヤンの演奏を上回っている。

しかしフルトヴェングラーの演奏は、もう追加するものが何も無い上限リミットの演奏であるのに対して、カラヤンの演奏は未来を感じさせる柔軟性と発展性を持っている。

フルトヴェングラーはこのことに気付き、カラヤンを恐れたのかも知れない。





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