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2020年01月01日00:07

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ドイツ第三帝國軍人シリーズ47　Bernhard Jope空軍中佐

　ベルンハルト=ヨーペは、第一次世界大戦勃発直前の1914年５月10日にドイツ第二帝國に属するザクセン王国のライプツィヒ市で生まれました。
　ヨーペはダンツィヒ自由市工業高等専門学校卒業後、空を飛ぶ事に憧れてルフトハンザ航空入社を目指し、ドイツ運輸飛行士学校(Deutsche Verkehrsfliegerschule)に進みましたが、ほぼ操縦訓練を完了した1934年４月に海軍航空隊に入隊、1935年１月に陸軍航空隊へ移籍して、ドイツ空軍が正式に発足した同年４月１日に航空士官学校へ入学しました。
　ヨーペは1937年４月１日、22歳で空軍少尉に任官し、第253爆撃航空団第２飛行隊へ配属されました。1938年６月１日には中尉へ昇進、1939年１月までコンドル軍団に属して内戦中のスペインへ派遣され、フランコ軍の支援に当たりました。
　帰国後は1939年７月１日に第76爆撃航空団へ配属され、双発爆撃機Do17の操縦士となって、同年９月１日の開戦を迎える事となったのです。

　第76爆撃航空団はポーランド戦では第４航空軍に属して北方軍集団の支援に当たり、ヨーペ中尉は９月27日に第二級鉄十字章を受章しています。
　続いて1940年５～６月のフランス戦では第３航空軍に属してマジノ線攻撃に従事、フランス降伏後の同年６月、ヨーペ中尉は第40爆撃航空団第Ⅰ飛行隊第２飛行中隊長へ転属します。
　同航空団は、1939年11月からFw200コンドルを用いて北海のイギリス艦隊への攻撃を行っていた部隊でしたが、フランス大西洋岸に進出して、イギリス向け商船を狙う任務を担う事となったのです。Fw200はルフトハンザ社が運用していた四発旅客機でしたが、長距離偵察機が不足していたドイツ空軍によって長距離哨戒爆撃機に改造され、胴体下面に大型のゴンドラを設けて250kg爆弾５発を搭載した他、ゴンドラの前後に機銃を装備、また両翼の外側エンジンナセルの外側に懸架装置を取付けて爆弾または増槽を懸架する事も可能でした。

　ドイツ空軍には四発大型機の操縦が出来るパイロットが殆どいなかったため、Fw200の操縦は徴用されたルフトハンザのパイロットが行う事になりましたが、元々ルフトハンザ入社を目指して大型機操縦の訓練を受けていたヨーペ中尉はFw200を操縦出来る数少ない正規空軍軍人であり、しかも海軍航空隊にいて洋上飛行も難なく熟(ｺﾅ)せたため重宝され、多くの哨戒任務をこなした功績で９月12日に第一級鉄十字章を受章しています。
　そして、ヨーペ中尉操縦のFw200は10月26日にカナダの大型兵員輸送船エンプレス=オヴ=ブリテン号(42348 t)を発見し、２発の250 kg爆弾を命中させて損害を与える事に成功したのです。同船はその後、同月28日にハンス=イェニッシュ中尉が艦長を務める潜水艦U-32によって撃沈されました。即ち、Fw200は船団を発見すると、自ら攻撃を行うだけでなく、Uボートを呼び寄せる戦術を採用していたため、連合軍からはScourge of the Atlantic(大西洋の疫病神)と忌み嫌われていました。
　この功績でヨーペ中尉は12月30日に騎士十字章を受章して、1941年２月１日に大尉へ昇進、第II飛行隊長となりました。

　その後もヨーペ大尉はFw200を駆ってイギリス周辺での哨戒任務に従事し、1942年２月５日にはドイツ十字章金章を受章して第Ｉ飛行隊長に転じましたが、1941年夏頃からは輸送船団がカタパルト装備のCAMシップや護衛空母の戦闘機で守られはじめ、対戦闘機防御が貧弱だったFw200には被害が続出する様になりました。また元々が民間旅客機であったために、機体構造が戦闘時の厳しい操縦に耐え切れず機体が破壊されて墜落したり、着陸時に胴体が折れてしまうといった事故も多発していたのです。
　そこで、第40爆撃航空団には新鋭機のHe177グライフが装備される事となりました。この機は「四発重爆でも急降下爆撃を可能にせよ」との総統やゲーリング国家元帥の無理難題に応じて開発された物で、二つのエンジンで一つのプロペラを回し、表面的には双発機に見える特殊な構造を持っていました。

　ヨーペ大尉はHe177の試験運用を繰り返しましたが、複雑な機体構造のため故障が多く、エンジンの供給不足から機体数も揃わなかった事から充分な成果は挙げられませんでした。
　ヨーペ大尉はは1943年２月20日に航空省勤務に転じた後、同年６月12日に第100爆撃航空団第IV飛行隊長に就任しました。当時、第100爆撃航空団はドーヴァー海峡に配備されていた第Ｉ飛行隊を除いて本国で再編中でした。

　そして、７月28日、ヨーペ大尉は同航空団第III飛行隊長に転じ、第II飛行隊と共に地中海戦域へ派遣されて、第２航空軍司令官ヴォルフラム=フォン=リヒトホーフェン男爵元帥の麾下に入りました。
　第100爆撃航空団第II・第III飛行隊は双発爆撃機Do217から成る部隊でしたが、ここには最新鋭兵器の滑空誘導弾フリッツX《http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1860188233&owner_id=250900》が配備されていたのです。

　さて、1973年夏のイタリアは激動の時代を迎えていました。７月10日にドワイト=アイゼンハウアー米陸軍中将麾下の米英軍がシチリア島に上陸、７月25日にはベニト=ムッソリーニ首相が国王ヴィットーリーオ=エマヌエーレ３世によって解任・逮捕され、ピエトロ=バドリオ陸軍元帥が首相に就任します。
　９月３日には米英軍がイタリア本土南端に上陸し、同日、バドリオ政権は秘密裏に米英軍と休戦協定を調印、それが８日に公表されたのです。
　８日午前、イタリア北西部のラスペチア軍港を本拠としていたイタリア本国艦隊司令長官カルロ＝ベルガミーニ大将は、ローマの海軍軍令部次長サンソネッチ大将から連合国側の指示を電話で伝えられます。その内容は、翌朝全艦隊を率いて出港、コルシカ島・サルデーニャ島西方を南下して英国領マルタ島に向かい、連合軍に降伏するようにとのものでした。
　ところが同日午後になってベルガミーニ大将は、海軍大臣兼海軍軍令部総長ラファエレ=ド=クールテン大将からの電話で、国王・バドリオ首相等がドイツ軍の攻撃を避けてサルデーニャ島北東岸のマダレーニャ島へ遷る事となったので、全艦隊を率いてそちらへ向かうように命じられます。但し、連合軍の許可はこれから取り付けるとの事でした。
　こうして９日0300時、ベルガミーニ大将は基準排水量41650ｔの最新鋭戦艦ローマを旗艦とするヴィットリオ=ヴェネト級戦艦３隻・軽巡４隻・駆逐艦８隻のイタリア本国艦隊を率いてラスペチア軍港を出港、途中で軽巡３隻・水雷艇１隻から成る第８戦隊とも合流して、コルシカ島西方を一路南下しました。夜明けと共に英軍偵察機も艦隊上空に飛来して艦隊の監視に当たり始めました。
　同日午後、ベルガミーニ大将はマダレーニャ島へ向かうために東へ変針します。ところが、混乱する情況の中、連合軍側にはイタリア本国艦隊が行き先をマルタ島からマダレーニャ島に変更した連絡が届いておらず、英軍司令部はイタリア艦隊が裏切った可能性大と見て殺気立ち、イタリア艦隊攻撃準備を始める騒ぎとなりました。
　一方、ドイツ南方総軍総司令官兼Ｃ軍集団司令官アルベルト=ケッセルリンク空軍元帥はイタリア本国艦隊の脱出を知って激怒、リヒトホーフェン男爵元帥にイタリア艦隊殲滅を命じます。そこで、リヒトホーフェン男爵はフリッツＸが真価を発揮する好機と考えて第100爆撃航空団第３飛行隊に出撃を命じたのです。

　こうして1400時、第III飛行隊長ヨーペ大尉は、フリッツＸを装備した12機のDo217爆撃機を率いて南仏マルセイユ近郊のイストル飛行場から出撃、イタリア艦隊を追いましたが、なかなか発見する事が出来ませんでした。
　こうした状況下の同日1530時頃、ベルガミーニ大将は海軍軍令部から「サルデーニャ島はドイツ軍に占領されつつあるため、国王陛下・首相はマダレーニャ島への脱出を断念、南イタリアのブリンディシへ遷る事となった。従って、本国艦隊は一番最初の予定通りマルタ島へ向かえ」との無線連絡を受け、1535時頃、慌てて本国艦隊に西方への変針を命じました。偵察機からその報告を受けた英軍司令部は安心して、イタリア艦隊攻撃を中止します。
　ところが1540時頃、イタリア艦隊がサルデーニャ島北部のアシナラ島近くへ達した時、ヨーペ大尉麾下の第III飛行隊が襲来したのです。艦隊上空に到達したのは９機でした。これに対し、イタリア艦隊は英軍機が出迎えに来てくれたものと勘違いして対空戦闘を行ないませんでした。
　かくしてヨーペ大尉は全く妨害を受けないまま艦隊２番艦の戦艦イタリア(旧名リットリオ)へフリッツＸを放ち、前部主砲の右舷側へ命中させましたが、イタリアは上部構造物を大破されながらも速力を維持していました。
　続いて1545時頃、艦隊先頭の戦艦ローマへ放たれたフリッツＸが後部マスト右舷の90mm対空砲基部に命中、162mmの防御甲板を貫通して艦底で爆発したため、ローマは右舷主機械が壊滅して速力が10ノットに落ちてしまいました。

　さらに1550時頃、別のフリッツＸがローマの２番主砲塔と艦橋の間の左甲板に命中して艦体下方で炸裂、大火災が発生します。ローマは左舷主機械も殺られて完全に停止状態に陥りました。
　ローマ艦長アドーネ=デル=チーマ大佐は直ちに消火作業と前部弾薬庫への注水を命じますが、主機関が全壊して停電してしまっていたため作業は全く進捗せず、1612時に前部弾薬庫に火が回ったため艦は大爆発、ローマの巨大な艦体は断裂し轟沈してしまったのです。ベルガミーニ大将・デル=チーマ大佐以下1350名の乗組員が戦死する大惨事でした。
　ベルガミーニ大将の戦死で指揮権を継承した第７戦隊(旗艦軽巡ディ=サヴォイア)司令官ロメオ=オリヴァー少将は軽巡レゴロと駆逐艦３隻を現場に残し、ローマの生存者を救助させましたが、救出された596名は全て大火傷を負っていました。
　オリヴァー少将は深手を負った戦艦イタリアを含む残存艦艇を率いて南下し、翌10日朝、戦艦ウォースパイト・ヴァリアントを主幹とする英国艦隊と合流、11日にマルタ島に辿り着きました。
　一方、ヨーペ大尉等はフリッツＸの命中後、連合軍艦載機の襲来を恐れて直ちに引き返したため、ローマの轟沈を確認しておらず、イタリア降伏の混乱の中でローマ沈没のニュースはマスコミでも報道されなかったため、ドイツ側では大戦果を知らないままでした。寧ろ、９機から放たれたフリッツＸは３発しか命中しておらず、着弾誤差0.1％とのカタログデータとは程遠い結果だったため、フリッツＸの有効性が疑問視されていた程です。
　同じ９月９日、連合軍はイタリア本土サレルノ湾上陸を強行するアヴァランシュ作戦を発動しますが、ドイツ第２航空軍第100爆撃航空団第II・第III飛行隊は上陸支援任務に当たっていた連合軍艦船へもフリッツＸによる攻撃を行ないます。母機にはDo217の外、Do17やHe111も用いられました。
　これらの功績により、９月10日にヨーペ大尉は少佐に昇進して第100爆撃航空団司令に就任しますが、翌９月11日にも自ら出撃して基準排水量9700ｔのブルックリン級米軽巡サヴァンナと数隻の駆逐艦・輸送船に直撃弾を与えています。但し、いずれも撃沈には至りませんでした。

　なお、第100爆撃航空団では空対艦ミサイルHs293《http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1902935337&owner_id=250900》の運用も行っており、サヴァンナに命中したのはHs293の方だとする説が有力です。

　続いて９月13日には、ヨーペ少佐は基準排水量8712ｔのセイロン級英軽巡ウガンダにもフリッツＸを命中させて大破させましたが撃沈には至りませんでした。

　この段階では、連合軍はフリッツＸの存在を充分認識していませんでした。ローマ轟沈の様子は英軍偵察機やイタリア軍将兵から報告されていましたが、理解不能な部分が多かったため情報解析は後回しにされており、サレルノ湾では被害が大きくなかったため、通常爆弾によるものだと誤解されていたのです。
　しかし、９月16日午後にはヨーペ少佐麾下の第100爆撃航空団のフリッツＸ搭載Do217爆撃機３機がFw190戦闘爆撃機12機と共にサレルノ湾へ出撃、イギリスのクイーンエリザベス級戦艦ウォースパイト(基準排水量33410ｔ)を攻撃した結果、連合軍は驚異的な新兵器が登場した事を思い知らされる事となりました。

　1425時、Fw190が陽動のために急降下爆撃を行なって対空砲火を引き付けている隙にDo217はフリッツＸを発射、ヨーペ少佐機はウォースパイトの煙突の真後ろのボート甲板に命中させました。このフリッツＸは左舷格納庫・後部居住甲板・第４ボイラー室等を突き抜けて、二重底の予備給水タンクで爆発、外板の底に６×２ｍ以上の大穴を空けましたが、タンクの水で爆風が減殺されたため戦死者９人・負傷者14人を出したに留まりました。
　続いて２番機の放ったフリッツＸが右舷第５ボイラー室の２ｍ横、バルジの下端の深さの部分で爆発、艦底の内外の鉄板に皺が寄り、バルジの被覆に穴が開いて歪みました。さらに３発目は海に落ちて右舷後部横への至近弾となりました。
　この結果、ウォースパイトの第２～第６ボイラー室は水浸しとなり、残った第１ボイラーも1500時に海水が混じって蒸気が全て停止、機関室も浸水を始めました。ウォースパイトは操艦不能となって円を描いて漂流し始め、機雷原の方に流されて行きましたが、ディーゼル発電機は動いており、操舵装置も何とか修復したため辛うじて機雷原に突っ込むのを回避、1700時から２隻のタグボートに曳航されて、時速僅か２ノットの超低速で現場からの離脱を図りました。
　17日1015時、さらに２隻のタグボートが曳航に加わり、時速は６ノットに上昇、潮流の早いメッシーナ海峡で曳航線が全て千切れて漂流してしまう一幕もありましたが、ドイツ空軍の再攻撃が無かったため、19日0800時に漸くマルタ島に到着、応急修理の後、ジブラルタルのドックに入りました。
　こうして、ドイツ軍の新兵器の威力に驚愕した連合軍は情報収集を急ぎますが、９月27日にバーナード=モンゴメリー陸軍大将麾下の英第８軍がタリア王国南部アドリア海沿岸のシポントのフリッツＸ試験場を占領した結果、連合軍は漸くローマやウォースパイトを襲った大型爆弾が恐るべきハイテク兵器たる滑空誘導弾だった事を知ったのです。

　その後も第100爆撃航空団は地中海域で活動を続けましたが、連合軍に制空権を握られた状況下では活躍の余地は少なくなって行きました。
　そうした中、1944年３月24日にヨーペ少佐は、それまでの戦功を嘉されて、ヒトラー総統から直々に柏葉騎士十字章を授与されました。

　同年８月20日、第100爆撃航空団は解体されてヨーペ少佐はオランダ・ベルギーに駐屯する第30爆撃航空団司令に転じました。

　続いて11月１日には西部戦線洋上哨戒を任務とする第９航空軍団参謀へ移動となり、1945年１月１日には中佐へ昇進して終戦までその任にありました。

　ヨーペ中佐は戦後は連合軍に抑留されて滑空誘導弾や空対艦ミサイルについての尋問を受けた後、ルフトハンザドイツ航空のパイロットとなりました。即ち、少年時代の夢を叶えたのです。1995年7月31日にヨーペはヘッセン州のケーニヒシュタイン=イム=タウヌスで死去しました。享年81。

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