フランクフルト〜ドレスデン〜マイセン〜ワイマールまで来た私たちはそこで北上することになる。Gマップでは真北へ153Km, 車で1時間46分の旅という表示が出た。前の日ゲーテハウスが休館で朝の開館時間に入って、ゲーテの後半生暮らした館を時間かけてじっくり見たあとで、まだ余韻が残っていた。廻りの景色も長閑な田園風景で、多くを語らず穏やかな時間が流れていたように思い出される。
行先はクヴェードリンブルク、ドイツ語の表記はQuedlingburgで、日本語表記のクヴェには違和感があるが、地図表記もそうなっているので致し方ない。どうしてその町へ行くことにしたかというと、田舎町に一泊したいという単純な動機であった。ドレスデン、ライプチヒ、ベルリンは結構大きな都会だし、ワイマールも小国と言えど首都を務めた地方都市だ。南独のロマンティック街道上にあるような小さな町で、きれいな町を、40少々あるドイツの世界遺産から探すと、その町に遭遇したというわけだ。ハルツ地方の中世の名残を感じさせる木組みの町という触れ込みで、写真を見るとロマンティック街道と変わらないと思ったものだ。位置関係もワイマール、ライプチヒと等距離で旅程も簡単に組める。
ハルツと言うと、日本ではあまり馴染みはないが、ドイツの地図のど真ん中辺りに広がる低いなだらかな山地である。80年代に住んだ時は、そこに東西ドイツの国境があり、西側のゴスラ―という町が、あのSiemensの創始者の出身地で炭鉱なども見所というので出かけたことがある。ゲッチンゲンという大学町も近くに有る。確かに山に囲まれた地域だったが、まさかその向こうに木組みの町があるとは知る由もなかった。そして30年以上経った今年そこを訪れようとは夢想だにしなかった。
ロマンティック街道の町と違うのは、古いよれよれの見るからに旧いと感じる外壁や木組みが多く見られた点と、平地がほとんどの南独と比べ、町の周りに丘があって、諸侯の住む城山と街中の教会とは別の豪華な教会が並び建っていた点。正に絵になる景色がそこにはあった。
体制は異なってはいたものの、同じような古い町並みが東側にも残っているのには正直新鮮な驚きを感じた。それと中心を外れ、城山に向かう界隈は入り組んだ街路が多く、お洒落なカフェがたくさん店を構えていた。城山から戻ってきて、ふらっと立ち寄ったビール醸造所ではタンクから出来立てのビールも注いで飲める。更にイノシシや野ウサギの肉などを出すレストランも見られ、観光地として見所満載といった感じの地方の小さな町であった。ただ地理的には少々不利と思われ、日本のツアーに組み込まれるには相当時間を要すかもしれない。
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