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2019年11月17日16:44

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ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜

ケラ脚本&演出の『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』に行きました。
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これ、私、ナイロン100℃の公演だと勘違いしてまして(^_^;)。何故にKAATなんて遠くの劇場でやるの?本多劇場じゃダメなの?と思ったら、そもそもKAATがケラ氏にオファーしたプロデュース公演だったと言う。それを知ったのは、パンフレットを買った時でした(遅い!)。現在、KAATの芸術監督が、白井晃氏なんですね。それすら知らなかった…。白井氏が「ケラさんお芝居やって」とオファーしたら、「やるケド3年半後ね。それまでスケジュールびっちりだから!」と言われたそうな(^_^;)。で、今回が、その約束の3年半後。

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KAATに行ったのは初めてですが、会場がデカくて立派でちょっとビビる。

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私は、ぴあ貸切公演という回に行きました。ぴあが貸切で上演してくれる。まぁ、ぴあでチケット取れば誰でも観られるんですけど(私は、一応ぴあの会員ではある)。

今回の芝居は、「カフカの幻の4作目の長編小説が発見されたよ。それをケラが舞台化したよ。」というテイで行われる芝居。勿論それはケラ氏の創作で、カフカの幻の4作目の長編小説など見つかっていません。なので、カフカの小説部分もケラ氏が書いている。ある意味フェイクですな。

第1幕目は間延びしてる部分もあるかな?と思い、ちょっとウトウトした部分もあったのですが、第2幕に入ったら、俄然面白くなりました。カフカの小説世界、現代、カフカの生きた(実際カフカも出て来る)1924年の世界の境界線が曖昧になり、溶けあって行く。この見事さな!
これ、ケラ氏、自分で書いてて分からなくならないんでしょうか?「あれ、この人物は、本来どっちの人物だっけ?」ってならない?

ケラ氏の元々得意分野でもあるケドね。違う世界を融合させて、境界線を曖昧模糊とさせる手法は。

OP映像で、文字が空中に浮かんでるように見えたのだが、あれって、どうやってるんだろう?そして、階段を使った迷い道の表現はエッシャーの絵のようだった。ケラ氏も凄いが、舞台美術の人も凄い。あと、音楽が生バンドだったのも臨場感があり良かった。

あと、多部未華子ちゃんは演技達者なのは知ってたが、瀬戸康史氏の演技も良かった。ただのイケメン俳優だと思ってて、ごめん、瀬戸氏。

パンフレットを売っていたので購入した。ツイッターでケラ氏が言っていた通り、意味なく全ページ袋とじになっていた(笑)。図録の横にペーパーナイフがあり「ご自由にお切り下さい」状態だった。そんな物販見たコトねえ!(切って来たよ!でも、会場内では、時間なくて、あまり読めなかった)

※以下、ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜の感想を書きます。まだ、舞台は上演中なので、ザックリ書きますが、それでも、ネタバレ部分はあると思います。ですので、ネタバレNGの方は、ここから先は読まないで下さい。

では、ネタバレOKの方のみいらっしゃいまし〜。

ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
会場:KAAT 神奈川芸術劇場

出演:多部未華子(カーヤ/ドーラ) 瀬戸康史(ラバン/ガザ/編集者D/カフカ他) 音尾琢真(バルナバス大尉/ホフマン他) 大倉孝二(男2(ブロッホの友人)/社長他) 村川絵梨(乗客/アマーリア/レニ(列車の中の妊婦)/別の看護婦他) 犬山イヌコ(女1(ブロッホの妹フリーダ)/女3(ユーリエの母)/オルガ(レニの母)/看護婦他) 緒川たまき(乗客/編集者B/ピアンタ(食堂の女主人)/グレーテ他) 渡辺いっけい(男1(ブロッホ)/軍人他) 麻実れい(女2(フリーダとブロッホの祖母)/少女(ユーリエ)/マルベリ(ラバンとガザの母)/マグダレーナ他) 谷川正一朗(乗客男4(カバンを届けに来た男)/編集者A/乗客/司令官他) 武谷公雄(乗客/グラハム中尉他) 吉増裕士(乗客男3(ユーリエの父)/編集者C/太った退役軍人他) 菊池明明(乗客/インドラ他) 伊与勢我無(社長の秘書/門衛主任他) 王下貴司(墓にいる男/処刑人他) 菅彩美(少女(ユーリエ)他) 斉藤悠(救急隊員/若い兵士(トルソー中尉)/処刑人他) 仁科幸(タイピスト他) 鈴木光介(郵便配達)

冒頭、こんなシーンから始まる。電車内にいるカーヤとラバン。2人は恋人同士で、どうやら旅行に行くらしい。カーヤはラバンに自分が観た夢の話しをする。ラバンが、緑の独楽を観ているうちに、空高く飛んで行く夢…。ラバンは、その後、サンドウィッチを買ってくると言って電車を降りたまま行方不明になってしまった。電車内は妊婦が産気づき大混乱。そんな中、何故か、乗客は、カーヤしか知らない夢の話しを口ぐちにしだす。「そして、校長は言いました。『ああ、今後ラバンは出席名簿から削除しなければ』(これ、凄くカフカっぽい場面)」 

…実はこの話は、カフカの幻の原稿ノート。少女時代、カフカから手紙を貰っていたユーリエ…御年100歳近い老婆が持っていたのだ。ユーリエの孫のブロッホは出版社に電話。どうしても金が必要な彼は、出版して金が欲しかったのだが、なんと、勝手に彼の友人が、その交渉をしていた。
カフカのコトを知らないブロッホは、カフカ入門を読もうと思うも、彼が読んだ本は『正しい道の迷い方』。彼はこれ以降、色々な場面で色々迷うコトになる。

ブロッホは出版社に話しをつけに行くも、そこにはチグハグな会話ばかりする人達が。しかも、彼が読んだ、道の迷い方の本は、読むと違う道どころか、違う場所に行き、時には違う時代にさえ行ってしまうモノだと…。

一方小説のカーヤは、ラバンの実家に行くも、けんもほろろに扱われる。しかも、軍の上官から、「ラバンの死」を知らせる手紙を貰う。そもそも2人は旅行など行っていなかったと。戸惑うカーヤ。「軍には手紙を検閲する係りがいる」と知ったカーヤ。彼の死が信じられないカーヤは、バルナバス大尉らと、戦場に行き、戦死者名簿を調べてもらうコトにする。

その後カーヤが持ってる鞄と、ブロッホが持っていた鞄、もう1つの鞄が入りまじり、またも、不条理な事態になる。

この2つの世界が徐々に重なって行き、途中、現実の1924年も登場し、カフカとブロッホは出会うコトとなる。

前半は、まださほど物語は混じらず、小説世界、現実世界と分かれており、話しもさほど抑揚なく進むのだが。第2幕の小説、現実、1924年の現実と混じって行く辺りから俄然面白くなった。
道の迷い方の本を読んだブロッホ&友人は、道どころか時代を間違え1924年へ。そして、自分達も小説世界に入り、小説世界に干渉してしまう。
迷う場面が階段を使っていてエッシャーの絵のようで凄く面白い。奈落も上手く使っていた。

出版社の場面も面白い。カフカが大嫌いなカフカ研究家。「だって、人形を探してる少女に、自分が人形になりすまして手紙を書くんですよ?気持ち悪いじゃないですか。」(確かに(^_^;))このカフカが人形になりすまして少女に手紙を書いたのは実際あったエピソード。上手いなと思ったのは、この世界で、その少女はユーリエなのだが、ユーリエはカフカの家に行き、人形からの手紙と同じ筆跡だったので人形が書いた物と思い、彼の創作ノートを持ち出してしまった…という点。

カーヤの戦場でのシーンでは、ハーゲンベック師団長夫人のマグダレーナが美しく、怖く、冷徹で得体が知れなくて良かった。どうやらマグダレーナは美しい女性を深く眠らせ人形のようにして遊ぶのが好きらしいのだが。ここにも人形が出て来るので、人形がキーになってるのかな?とも思う。

そして、見つからない人形をブロッホの友人が1924年で見つけて、ユーリエに渡したから、さあ大変。これでは、カフカは少女と出会わない。なんとか少女と出会わそうとする2人だが、不法侵入者として疑われ、ブロッホの友人はユーリエ宅で撃ち殺される。
でも、現代の現実世界では普通に帰って来ていたので、これは小説の場面であるコトが、後にカフカの創作ノートが変化していたコトで分かる。ブロッホ「ああ!小説に俺たちが出て来てしまってる!オマエ、撃ち殺されてるコトになってるぜ!」
この全然ろくなコトをしないブロッホの友人を、大倉孝二氏が上手く演じていた。

鞄が入れ替わった時の「どうしよう!創作ノートと、簡単カフカ入門をカフカ本人が読むことになる。」に笑ってしまった。カフカ本人がカフカ入門を読んだら、どう思ったろう?(結果、鞄は、カフカの元へは行かなかった)

サナトリウムに入院するカフカ。カフカと恋人ドーラが、創作ノートのルバンとカーヤであるコトも判明する。
カフカの死の場面とカーヤのいる小説も交錯する。カフカの写真を見せられ、やつれたルバンだと思ったカーヤはサナトリウムに行くも、そこで死んでいたのは全くの別人(^_^;)。
小説世界では、嫌な奴だったルバンの双子の弟ガザが、サナトリウムでは凄く優しい青年になっていたのも不思議だった。あれは、どういうコトなのだろう?ブロッホが小説世界に介入し、物語が変わったからなのかな?

小説、現在、カフカのいた1924年の世界が境界線なく溶けて行く状態が面白く、第2幕は本当に好きだった。なので、個人的には、第1幕がもう少し抑揚があると良かったかな?とは思う。でも、ひょっとすると、ケラ氏は、この対比が欲しかったのかも。

観ているうちに、実は、この物語全部が、ユーリエおばあちゃんが観てる夢…妄想なのではないか?という気もしてきた。ユーリエおばあちゃんは言う「私は魔法が使えるのよ。」と。本当に魔法使いなのかも。1924年の世界で死んだはずのブロッホの友人を「私が魔法で出したんだもの。」と言っていたが、これ、本当にそうなのかも知れないとも思った。

カフカの小説部分も、確かにカフカっぽくて、ケラ氏スゲエなと思ったし、この交錯して行く舞台脚本をどうやって書いてるんだろう?とも思った。
現実場面は、ちょっとナンセンスコメディっぽかったから、又、ナンセンスコメディも観たいなとも思ったり。
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